池内紀さんの本の世界

朝日新聞ウエッブサイト「論座」に、松本裕喜さんの「「歩き」「読み」「書いた」人――池内紀さんの本の世界」(10月12日配信)が載っていました。読み応えがあります。読書家には、お勧めです。
私も池内さんの愛好家の一人です。もっとも、そんなにたくさん読んだわけではありませんが。このホームページでは、『消えた国 追われた人々―東プロシアの旅』や『ヒトラーの時代 ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか』を紹介しました。
ドイツを中心とした紀行文も、いろいろと読みました。先の2冊は内容の重い本ですが、紀行は寝ながら気楽に読める本です。先生の軽妙な文体と、最後にオチがある文章は、私は好きです。まだ、これから先に読もうと、いくつか本棚に取ってあります。

松本さんの記事に触発されて、『ゲーテさんこんばんは』と『カント先生の散歩』を買って読みました。出版されたときに、本屋で手に取ったのですが、興味がわかなくて、買いませんでした。
「池内さんは、「書きながら何度となく呟いた――こんなに楽しく、おかしな人が、どうして文豪ゲーテなどと、重々しいだけの人物にされてしまったのだろう?」(あとがき)という」「好奇心旺盛で、話好き、人間的魅力に富んだ人としてカントを描く。カントは東プロシアのケーニヒスベルクで生まれ、一生そこに住んだ。主著『純粋理性批判』はイギリス商人グリーンとの対話を通じて生まれたという。この貿易商の客間で、「思索が大好きな二人が、形而上的言葉をチェスの駒のように配置して知的ゲームに熱中した」。おおかたの哲学書はそのようにして生まれたと池内さんは指摘する」

ゲーテもカントも取っつきにくい人だと思っていましたが、その人間性がよくわかりました。ファウストは学生時代に読んだのですが、あらすじを追うのが精一杯でした。余裕ができたら、池内訳で挑戦しましょう。

コロナ下での冠婚葬祭

最近、知人の若手の2人がそれぞれ結婚し、1人が婚約しました。めでたいことです。
「結婚式に呼んでくれ。ご両親が喜ぶ挨拶をするから」と、押し売りしてありました。このコロナウイルス感染拡大で、結婚した2人は、新婚旅行も披露宴もなしで、新婚生活を始めました。旅行は、ハワイとヨーロッパを予定していたそうです。私の挨拶も、できません。
私からの助言は、「披露宴は後回し。旅行はひとまず国内に行って、海外は後回しにしたら。二人で旅行は、これから何度でも行ける」です。

他方で、お葬式もありました。参列者を限った、家族葬です。お世話になった方なので、参加したかったのですが。遠くから、ご冥福をお祈りしました。

幸せになる4つの心的心的因子

11月4日の日経新聞「やさしい経済学」、前野隆司・慶応義塾大学教授 の「幸せ中心社会への転換(5) 4つの心的要因が寄与」から。

・・・どのような心的要因が幸せに寄与するのかについては、1980年ごろから多くの研究が進んでいます。私たちは幸せの心的要因について、日本人1500人に87の質問をしました。その結果の分析から得られたのが幸せの4つの因子です。

1つ目は「やってみよう」とする「自己実現と成長の因子」です。やりがい、強み、成長などに関係します。その反対にあるやらされ感や、やる気がないといった人は幸福度が低い傾向があります。

2つ目は「つながりと感謝の因子」で、「ありがとう因子」といえます。感謝する人は幸せです。また、利他的で親切な人、多様な友人を持つ人は幸せです。逆に、孤独感は幸福度を下げます。つながりが醸成された社会・コミュニティーをつくることが重要です。

3つ目は「なんとかなる」と考える「前向きと楽観の因子」です。ポジティブかつ楽観的で、細かいことを気にしすぎない人は幸せです。リスクを取って不確実なことにチャレンジし、イノベーションを起こそうとするマインドもこの因子に関連しています。

最後は「独立と自分らしさの因子」です。人と自分を比べすぎる人は幸福度が低い傾向があります。「ありのままに」と考え、自分軸を持って我が道を行く人は幸せです。

これらの因子を満たしている人は幸せです。皆さんも4つの因子を満たして幸せに生きてください・・・

カリフォルニア州の住民投票、ウーバー運転手は個人事業主

昨日5日書いた「住民投票で決める労働者の身分」、投票結果が出たようです。11月6日付け朝日新聞「米ウーバー運転手は「個人事業主」 カリフォルニア州で住民投票」。詳しくは、記事をお読みください。

・・・米カリフォルニア州で3日行われた住民投票の結果、ウーバー・テクノロジーズなどのライドシェアサービスの運転手が、州の「待遇改善法」の適用対象外となり、個人事業主にとどまることになった。同法は、仕事をネットで請け負う「ギグ・エコノミー」の担い手保護の先進事例とみられていたが、これに反対する企業側の大キャンペーンが奏功し、「従業員化」は実現しない見通しだ。

同州では大統領選に合わせ、こうしたサービスの運転手を個人事業主にとどめることを求める住民投票が行われた。ウーバーや同業のリフトなどの企業が計2億ドル(約208億円)超を投じて大量の広告などを出し、賛成を訴えていた・・・

働きがい改革

11月2日の日経新聞「スマートワーク 新常態の対応、企業の競争力左右」に「求められる働きがい改革」という部分があります。
・・・労働生産性は通常、仕事で生み出される付加価値を労働投入量で割ることで測る。従来の働き方改革でフォーカスされてきたのはこの計算式の分母(労働投入量)をいかに小さくするかだった。日本は長時間労働を美徳とする企業文化があり、給与に占める残業代の比率も高い。このことが先進国で最低の生産性の原因と見なされ、残業時間の削減が働き方改革の「1丁目1番地」となった。
見かけの数字では改革は進捗している・・

・・・アフターコロナでは、生産性の計算式の分子である付加価値により目を向ける必要がありそうだ。経団連も今年1月にまとめた経営労働政策特別委員会(経労委)報告で、これまでの働き方改革が残業時間削減や休暇の取得促進に一定の成果を上げたと総括。その上で働き方改革の「フェーズ2」では付加価値の最大化が課題と指摘した。カギとして位置づけられたのが従業員の「エンゲージメント」の向上だ。
エンゲージメントは2000年代前半に欧州で確立した概念だ。日本では「働きがい」と訳されることが多い。自分の仕事に意義を感じ熱意を持って取り組む姿勢を指す。蘭ユトレヒト大学などがエンゲージメントを定量化する手法を開発するなど、生産性を測る新たな尺度として世界的な注目を集める。人事コンサルのリンクアンドモチベーションの調査では、エンゲージメントが高い企業の方が収益性が高い傾向にある。

日本は諸外国に比べてエンゲージメントの水準が低い。17年の米ギャラップの調査では、「自分の仕事に熱意を持っている」と答えた人の割合は6%と世界平均(15%)の半分だった。米国(33%)やシンガポール(23%)に遠く及ばない。
米国に本部を置く国際的な調査機関、グレート・プレイス・トゥ・ワーク(GPTW)が今年2月に発表した、世界60カ国の7千社を対象に実施した調査でも、日本企業の4割が働きがいは「低下傾向」にあると回答した。働きがいの底上げなくして生産性の向上はおぼつかない。
何が必要か。リクルートマネジメントソリューションズが2月に発表した全国約600人を対象にした調査がある。働きがいを高める制度として上げた人が多かったのは、「社内公募などで配置が実現する仕組み」(44.7%)や「自分の希望に応じて特定のスキルを学べる研修」(49.8%)。柔軟で自由度の高い人事制度が処方箋の一つといえそうだ。
だが現状、日本企業では職務内容に限定がない「メンバーシップ型雇用」が圧倒的な多数派。転勤や異動を拒否することはできず、キャリア形成はもっぱら会社任せだ。コロナを機に職務内容を細かく規定した欧米型の「ジョブ型雇用」を導入する企業も増えているが、働き手の主体的なキャリア形成を後押しする仕組み作りが不可欠だ・・・

このホームページや、拙著「明るい公務員講座 管理職のオキテ」で取り上げている課題です。