組織構成員の分類その2。能力差

組織構成員の分類その1。分野別、階級別、コース別」の続きです。
前回述べたのは、表に出ている「見える区分」です。これらの他に、「外から見えない区分」もあります。

D 同じ階級(例えば課長職)の中にも、できる課長・普通の課長・出来の悪い課長がいます。能力の差・業績の差です。
人事評価は、これをしています。良い表現がないので、「能力差」(ability)と呼んでおきましょう。2:6:2の法則は、これを指しています。人事担当者や管理職にとって、Aの分野別、Bの階級別、Cのコース別を前提として、Dの能力差を踏まえて誰をどこに配置するか、特に出来の良くない職員の配置が仕事です。あわせて、成績の低い職員に仕事をしてもらうことが、大きな悩みです。

本屋に並んでいる職場の解説をした書物には、AとBが書かれていてDが書かれていない、書かれていても「評価の仕組み」の解説にとどまっていることが多いです。
でも、きれい事だけでは、組織は動きません。『明るい公務員講座 管理職のオキテ』で、これについても説明しました。
また、Cについても、余り書かれていないでしょう。特に正規と非正規の差、同じような職務をしていても処遇に差があることについて書いたものは見かけませんね。

なお、このほかに、
E 非公式の役割分担があります。これは、社会学の教科書に出てきます。
この項続く

会津若松市、情報技術への取り組み

会津若松市の情報技術への取り組みが、注目されています。

NHKウエッブニュースビジネス特集7月8日「東京から200キロ 大手企業が続々集まるワケ
・・・「10年先に起きると予測されていたことが新型コロナの影響で一気に来た」
今月、福島県会津若松市に拠点を設けたセイコーエプソンの執行役員のことばです。三菱商事、ソフトバンク、コカ・コーラ ボトラーズジャパンなど、この1年余りでさまざまな業種の大手企業が会津若松に続々と進出。東京から約200キロ離れた会津若松の魅力はどこにあるのでしょうか・・・

7月20日の日経新聞オピニオン欄、原田 亮介・論説主幹 の「会津発の都市OS広がれ 急がれるデジタル行政」でも、会津若松市の取り組みが紹介されています。

多くの情報技術先端企業が、会津若松市に集まっています。集まることで、次のサービスが生まれるようです。なぜ、地方の12万人の都市で、進んだのか。それぞれの記事をお読みください。

内海健著『金閣を焼かなければならぬ 林養賢と三島由紀夫』

内海健著『金閣を焼かなければならぬ 林養賢と三島由紀夫』(2020年、河出書房新社)を紹介します。

産経新聞7月18日、文芸評論家・富岡幸一郎さんの書評「苦悩する魂の秘密に迫る」から。
・・・本書は、70年前に金閣に火を放った青年僧の生涯をたどり、著者専門の精神病理学の視座から、彼がなぜ金閣を焼くに至ったのかを追究する。
青年の生まれ故郷、禅僧の父、息子の犯行直後に自殺した母、彼自身の鹿苑寺金閣での修行の日々、犯行後の精神状態。鋭利な分析は推理小説のようにスリリングであるが、驚くべきは現実界の青年が、いつしか小説の主人公に深く交差し、作者・三島由紀夫の天才の病理へと結びついていくことである。
そこに現れるのは、人間の心の深淵であり苦悩する魂の秘密である。三島の衝撃的な自裁もくまなく解明される。精神科医による文学論などではない。著者自身の実存を賭して描かれた、類いまれなノンフィクションの傑作である・・・

ノンフィクションというと、事実に基づいた創作小説を指すようですが、この本はそのような分類より、精神科医による、金閣寺放火犯とそれを題材に小説を書いた三島由紀夫の精神分析といった方がわかりやすいでしょう。事実と二人の生い立ち、三島については彼の小説を手がかりに、二人の心を開けて見せます。推理小説に近いかもしれません。分裂病やナルシシズムなど、そのための基礎知識も得ることができます。私は、そのような感想を持ちました。

著者は、東大医学部卒の精神科医です。というか、私にとっては、高校の同級生です。いつもいただく本は難しいのですが、これは読むことができました。

マスメディアの役割 事実の検証

読売新聞は、7月17日18日と、「検証コロナ 次への備え」を載せていました。
・・・新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて判明してから、16日で半年となった。この間、日本が直面した感染症危機管理の教訓と課題を探る・・・「クルーズ船で何が起きていたのか」「医療の逼迫はなぜ起きたのか」。
・・・未知のウイルスの感染者が乗っていた大型客船が突然、日本にやって来た。想定外の事態で、国際的なルールもない。日本政府はどう対応したのか。どんな課題が見えてきたのか―・・・

よい企画ですね。日々の出来事(ニュース)の報道も大切ですが、このように振りかえって検証する。そこに、マスメディアの機能があります。日々の報道では、事実が次々と流され、流れ去っていきます。それは、一種の消費財です。それらの事実をつなぎ合わせて、どのような意味があったのか、何がよくて何が問題なのかを検証することが重要です。マスメディアというより、ジャーナリズムという方が良いのでしょう。インターネットニュースではできないことです。

コロナ関連では、20日の朝日新聞記者解説が、「際限なき借金大国 コロナで危機拍車、財源語られぬまま」を解説していました。この論点も重要です。国会などではあまり議論されていないようですが。
読売新聞は、19日の「あすへの考」で「自衛隊とは・・棚上げの70年」を解説していました。このような取り上げ方もよいですね。