地方と国との司法決着

3月4日の日経新聞オピニオン欄に、斉藤徹弥・編集委員が「地方と国、増える司法決着 地方分権一括法20年」を書いておられました。
・・・自治体と国を対等の関係とした地方分権一括法の施行から4月で20年。地方分権は停滞が否めないが、対等になったかどうかでみると成果と言える事象もある。法の運用や関与を巡って自治体が国と裁判で争う行政訴訟が増えてきたことだ・・・

詳しくは、記事を読んでいただくとして。指摘の通りです。かつては、法律的にも一部上下の関係が残っていましたし、意識の上でも上下の関係がありました。自治体に不満があっても、自治省をはじめとする各省が調整して、事を荒立てないようにしました。自治体も、訴訟に訴えるにしても、条件が厳しかったのです。

・・・政治的な利害調整を法廷で決着させる流れは「政治の司法化」と呼ばれる。政治主導の政策決定をめざした平成の統治機構改革は、冷戦崩壊で行き詰まった官による事前調整を見直し、司法による事後チェックへの移行を進めた。これが令和になって地方行政に現れてきたといえる・・・

次のような指摘もあります。
・・・政治の司法化が進むと、重要になるのが裁判所の信頼性である・・・専門家組織が裁判所を支える関係になることも大切だ。原発訴訟で判断が割れるのは原子力規制委員会の規制基準を妥当とみるか、不十分とするかによるところが大きい。安定した司法判断には、規制委が国民の信頼を高め、裁判所がその権威を認めやすくなる環境が必要になる。
ただ専門職のジョブ型雇用が主流の海外に比べ、日本は専門家組織が弱とされる。専門を重視する雇用形態が広がり、各分野で専門家組織の権威が高まれば、司法による事後チェックが安定し、政策決定でも専門的知見を重視することにつながるだろう・・・