職務による採用、家庭と両立させる女性管理職たち

2月17日の毎日新聞、「毎日経済人賞」黒田麻衣子・東横イン社長のインタビューから。「管理職、中間管理職、職員の区分、2」の続きにもなります。ホテルの支配人の多くは女性で、しかも途中採用とのこと。

・・・最初からリーダーをやりたいと手を挙げた方に任せたいと考えているからです。重視しているのはホテル経験ではなく、リーダー経験です。専業主婦であっても、子供のころに班長や生徒会、部活のキャプテンをやっていた人や、PTAの役員の経験がある人を採用しており、「女性にここまで重要な仕事を任せてくれる会社はない」とよく言われます。
ホテルは24時間365日開いているので、支配人たちは自分で時間をコントロールしており、仕事の途中で一回帰って夕飯の準備をするなど家庭と仕事との両立ができている人が多いです・・・

ウエッブサイト「BAR CAMPANELLA」にも、次のような話が載っています。「ホテルの支配人は97%が女性
・・・高柳:ところで、東横インは女性が活躍する企業として有名ですね。各地のホテル支配人のほとんどが女性です。今、女性の活躍が大きな流れとなっていますが、一方でなかなか思うように広げられない企業が多いという実態もある。どうすれば、女性が活躍できる会社になれるのでしょうか?
黒田:「女性役員を何%にします、女性管理職を何人にします」と宣言する企業が増えていますね。でも、女性の誰もがリーダーになりたいというわけじゃない。東横インでは、自らが「リーダーをやりたい」という女性を支配人にしています。
高柳:経験を積ませて、その上で抜擢するのではないのですか?
黒田:最初から支配人として募集します。応募者は「私はリーダーやりたいです!」という人ばかりです。
高柳:やる気のある人にやってもらえばいいじゃん、ってことか。
黒田:そう。やる気のある人がやったほうが、絶対にいいサービスが提供できますものね。

高柳:ホテル経験者を採用するのですか?
黒田:ほとんどしません。支配人については、ホテル勤務の経験があるかどうかよりも、リーダーの経験があるかどうかのほうを重視して採用します。何でもいいんですよ、部活でも、PTAでも。人をまとめて何かを成し遂げた人なら、やる気さえあればきちんと仕事をできると思います。実際に、東横インにはさまざまな経歴を持った支配人がいますよ。
高柳:支配人というと、部下に仕事をやらせる人、権力者というイメージを持っている人もいるのではありませんか?
黒田:確かに、います。でも、そういう人は、結局辞めることになりますね。もちろん、人を使って成果を出すのがリーダーの仕事ではあります。ただ、支配人として採用しても、最初はすべての仕事を覚えるために、フロントも清掃も何でもやってもらう。
リーダーは自分の姿を見せることで、部下を引っ張らなければならないんです。そうしているうちに、自分が考えることを部下が進んでやってくれるようになる。そんな職場の雰囲気や環境をつくれる人がリーダーなんです。旅館の女将さんと同じなんですよ。女性は家庭でも子育てなどで、自分でやって見せて、教育するということに慣れている。だから、うちはホテルなのに女性の支配人が多いんです・・・

新たな階級区分、イギリス

マイク・サヴィジ著『7つの階級 英国階級調査報告』(2019年、東洋経済新報社)を紹介します。既に、いくつか新聞書評欄で取り上げられています。

階級(class)は、かつて社会を分析する際の主要な切り口でした。身分、資産、職業による人(家族)の区分です。
王侯貴族、聖職者、農民、商工業という身分があり、その職業と資産・収入が結びついていた時代は、階級がはっきり分かれていました。そして、変動も少なかったのです。
その後、商業の発展と産業革命で、事業主が台頭してきました。それらの変化も受けつつ、上流(伝統的金持ちなど)、中流(経営者や管理職)、下層(労働者)という階級は、数十年前までは意味をもっていました。各国の歴史によって、身分の差は違います。市民革命の程度によってもです。しかし、多かれ少なかれ、格差や階級はありました。
ところが、学歴と才覚で所得や地位を得ることができる次代になり、また他方で土地だけが主要な資産と収入の要素でなくなると、かつての階級区分は意味をもたなくなりました。

本書が提案した新しい指標は、経済資本、文化資本、社会関係資本です。最上層のエリートと、何も持たない最下層のプレカリアート(不安定な無産階級)の間に、幅広い中流層が存在します。著者らはこの中流を、これら3つの資本で5つに分類し、合わせて7階級にし分類しました。
1.エリート
2.確立した中流階級
3.技術系中流階級
4.新富裕労働者
5.伝統的労働者階級
6.新興サービス労働者
7.プレカリアート

経済資本(所得・貯蓄・住宅資産)、文化資本(学歴・趣味・教養)、社会関係資本(人脈)によって階級を定義するとは、斬新ですね。
それをどのように評価するか、人によってさまざまでしょう。私は、成功していると思います。
連載「公共を創る」で、個人の財産と社会の財産を分類する際に、私は、ここで取り上げられている文化資本と社会関係資本を用いました。社会学者が、人や家族を分類する指標としてこれらを使っていることに、意を強くしました。連載第30回で、この本を紹介しました。
この項続く

連載「公共を創る」第34回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第34回「社会的共通資本 低い共助意識と政治参加意識」が、発行されました。

前回に続き、日本の文化資本の弱点を列挙しました。
意外なことに、共助の精神も、諸外国に比べて低いのです。それも、極端にです。困っている見知らぬ人を手助けする、慈善団体に寄付する、ボランティア活動をするなどの調査です。
また、投票には行きますが、政治への関心も極端に低く、さらには政治にかかわりたくない人が多いのです。
次に、仕事への熱意も低いのです。会社人間が多いといわれていますが、実はそうではないのです。長時間働いていますが、積極的ではないのです。これは、拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』でも取り上げました。

日本人論には、不正確な話がたくさんあるようです。

移民の受け入れと日本文化の維持

2月14日の日経新聞経済教室、フランソワ・エラン、コレージュ・ド・フランス教授の「移民問題を考える(上) 「経済利益」偏重の政策 避けよ」に、次のような指摘があります。

・・・日本は明治時代や終戦後などの時期に、外国文化との衝突に伴う深刻なアイデンティティー(主体性)の危機を乗り越えてきた。そのたびに日本文化は生き残った。世界の人々が憧れる日本文化は、文学、伝統芸能、食事作法、技術革新などにより拡散している。日本を訪れる旅行者は、人間関係、居住空間、自然との共生、洗練された文字、文化遺産といった日本文化の魅力に圧倒される。

人口に占める移民割合が10%になったからといって日本文化が脅かされるようなことがあるのだろうか。日本人は、自身の文化は外国人の流入に対して脆弱だと思っているのだろうか・・・フランスで過激化した一部の集団による襲撃事件が発生しても、フランスの社会や文化は揺らぐどころか、かえって頑強になった。ここにパラドックスがある。

硬直的な社会は頑強でなく、閉じた社会は持続的でない。民族的な均一性を守ることは安心感をもたらすかもしれないが、それは長期的には維持できない神話だ。日本文化自体も様々な起源を持つ。日本文化とは、元のそうした多様性に投げ込んだ網の中身であり、あちこちで釣ってきた要素の組み合わせではない。
現在、偉大な国の文化は外国で輝き、音楽や料理は世界を駆け巡っている。人間も同様かもしれない・・・

銀座三越で、被災地応援販売会

東日本大震災被災地で、昨年10月の台風19号で被害にあった地域の事業者を支援するための販売会を、銀座三越9階銀座テラスで開催します。
台風19号被災地東北事業者応援マーケット」です。
2月23日(日曜日)、24日(祭日)10:00~18:00
出店団体は、次の通り。
・岩手県釜石市 かまいしDMC
・宮城県丸森町 一社)筆甫地区振興連絡協議会
・福島県国見町 株式会社陽と人

民間企業から復興庁に出向してくれている職員たちと先輩たちが、企画してくれたそうです。
ありがとうございます。