11月1日の日経新聞経済教室は、松元崇・元内閣府事務次官の「全世代型社会保障改革に向けて 若者の働き方支える視点を」でした。
ポイントは、次のようです。
・スウェーデンは高成長で政府規模を縮小
・有意な転職支える流動的な労働市場カギ
・国が成長しなければ国民の所得増えない
・・・スウェーデンについては1995年から2015年にかけての20年間の動きが矢印で示されており、この間に政府規模が英国やドイツよりも小さくなったことが分かる。スウェーデンはかつて大きな政府で有名だったが、高い経済成長率により状況が変化したのだ。
ビル・エモット氏の著書「『西洋』の終わり」によると、スウェーデンは高い経済成長率を持続することで、93年に国内総生産(GDP)比で72%もあった政府規模を07年には49.7%に引き下げた。GDP比で約22ポイントの引き下げは、GDPが550兆円の日本の感覚に当てはめれば、約120兆円にも相当する。
スウェーデンの高成長の背景にあるのが選択と集中だ。選択と集中の時代には、企業の栄枯盛衰や個人の転職が当たり前になった。そこでは転職に際して、学校などで新たな技術を学び直す、そうした個人をしっかりと支える仕組みを持つ国の経済が成長するようになった。個人のキャリアアップを支える流動的な労働市場を持つ国の成長率が高まるようになったわけだ。
かつて転職が珍しかった時代には、そうした仕組みは経済成長にほとんど役に立たなかったが、それが様変わりしているのだ。
図でスウェーデンと正反対の動きを示しているのが日本だ。その大きな要因は、個人のキャリアアップを支える労働市場がほとんどないことによる低成長だ。日本の経済成長率は先進国の平均を1%ほども下回っている。その分だけ図の潜在的国民負担率の分母が大きくならず、負担率が上がっていくことになる・・・
・・・日本でも個人のキャリアアップを支援する取り組みは始まっている。19年6月の「骨太の方針」では、就職氷河期に正規社員になれなかった人々の再チャレンジを支援する方針が打ち出され、7月には内閣官房に就職氷河期世代支援推進室が設置された。就職氷河期世代の正社員を30万人増やす目標が掲げられている。
18年4月の週刊ダイヤモンドによれば、就職氷河期に就職できなかった人々がそのまま老後を迎えると、生活保護に依存せざるを得なくなる。「生活保護予備軍」は約147万人にのぼり、生活保護費は約30兆円にも達すると試算されている。そうした人々が再チャレンジして就職し、生活保護予備軍から脱却すれば、当人も幸せだし、日本のGDPも相当押し上げられるはずだ。ちなみに再チャレンジは、第1次安倍内閣が06年に掲げた政策目標だ・・・
原文をお読みください。
松元さんの主張については、著書『日本経済 低成長からの脱却』をこのホームページで紹介しました。