連載「公共を創る」第15回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第15回「哲学が変わったー成長から成熟へ 成熟社会に入った日本の行政」が、発行されました。

大震災の被災者支援と復興の過程で、これまでの行政の成功と限界がわかりました。前回に続き、日本社会の変化に従って、行政も変わらなければならないことを議論します。
明治以来、理想的な国家、理想的な国民を作るために、努力してきました。そして、それに成功しました。ところが、そこから漏れ落ちた人への対応は十分とは言えません。
漏れ落ちた場合の「安全網」の整備や、その教育をしてないのです。理想は教えますが、それに乗らない人や失敗した場合の生き方を教えないのです。
「坂の上の雲」を見上げていて、「坂の下の影」を見落としていたのです。

行政の目的も、生産者視点から、生活者視点に変える必要があります。
例えば公営住宅は、かつては住宅のない人に対し、数を増やすことが目的でした。現在は、住宅は数だけなら、余っています。他方で、入居者の孤立や孤独死が問題になっています。これは、建設部局の任務ではありません。そして、孤立は社会福祉の範疇を超える課題でしょう。「公営住宅」といっても、行政の任務が変わってきたのです。