年別アーカイブ:2018年

原真人記者、リーマンショックを考える

2018年7月23日   岡本全勝

7月21日の朝日新聞読書欄に、原真人・編集委員が「リーマンショックから10年 人類史レベルで変化を考える」を書いておられます。

・・・世界経済を震撼させたリーマン・ショックから今年で10年。「百年に1度」と言われたあの危機は多くの教訓を残した。だが、のどもと過ぎれば熱さ忘れるの例えどおり、住宅バブルの崩壊で痛い目にあった反省はどこへやら。いま私たちが目の当たりにしている世界経済はリーマン直前をもしのぐ資産バブルのふくらみようである。
率直に言って、近い将来、世界規模でのバブル崩壊が再び起きる可能性は小さくない。10年前の教訓をいま改めてかみしめておく価値は十分ある・・・

として、リーマンショックを考える図書を紹介しておられます。それも、単に羅列するのではなく、それら図書の持つ意味も解説してあります。例えば、関係者の回顧録は貴重ですが、自分の行動を正当化しがちです。
近過去の歴史を勉強することは、難しいです。教科書にはまだ載っておらず、定番の解説書がどれなのか。一般人には、わかりません。このような読書欄での紹介は、役に立ちます。

そして、最後に次のように締めくくっておられます。
・・・リーマン後の経済状況を短期でなく、もっと長い時間軸でとらえ直そうという本の出版が増えているのも最近の傾向だ。
『世界経済 大いなる収斂』は、ICT(情報通信技術)革命でアイデアの移動コストが極端に下がり、世界の富と知識の分布が急激に変わる姿を描く。
経済成長やグローバル化を当たり前のものでなく相対化してとらえ、人類史レベルで世界経済の変化を考える。そんな機運が生まれたのも、一種のリーマン効果と言えるかもしれない・・・

政策の検証

2018年7月23日   岡本全勝

7月12日の日経新聞に「成長戦略、検証なき膨張  工程表3倍でも目標達成率は低下」が解説されていました。
・・・政府の成長戦略への関心が下がっている。安倍政権で6回目となる今年の戦略は世界的なデジタル革命への対応などを打ち出したが、株式市場はほとんど反応しなかった。新たなテーマを毎年加えたことで目標実現への工程表は初回から3倍に膨らんだが、目標達成が厳しくても検証が不十分なままの政策も多い・・・

・・・成長戦略は規制緩和など制度改革を伴うので金融・財政政策よりも成果が出るまで時間がかかる。このため、戦略に盛った政策はKPI(重要業績評価指標)と呼ぶ目標を設け、達成までの数年間の工程表を示す。
工程表は肥大化している。2013年に安倍政権が初めてつくった成長戦略の工程表は48ページだったが、新たな政策が加わり続けた結果、18年版は147ページもある。
政府が1月に評価したKPIの進捗状況をみると、目標達成に向けて順調な項目は全体の45%と前年の51%から下がった。目標を引き上げたことで未達になった項目もあるが、工程表に新たな目標が加わったことも達成率を押し下げている。
過去の検証はおざなりだ。例えば産業の新陳代謝を促す観点から掲げた開業率・廃業率の引き上げ。「米英並みの10%台に高める」という目標を最初の戦略から掲げてきたが、直近16年度の廃業率は3.5%と15年度よりも下がった。それでも目標達成への補完策は打ち出していない・・・

検証の重要性を示す、良い解説記事だと思います。
もちろん、打ち出す政策が、すべてうまくいくとは限りません。このような批判に、政府はどう答えるか。それによって、政策がよいものとなっていきます。
マスコミはとかく、政府の政策について、会社の商品について「新しく打ち出した」といったニュースを書きますが、その政策がどのような結果になったか、どのような成果を生んだかは伝えません。特に、うまくいかなかったものについては、政府も会社もだんまりを決め込みますから。
記者が、省庁や会社の「記者発表」を追いかけている限りは、そのような「提灯記事」になる恐れがあります。

続く猛暑

2018年7月22日   岡本全勝

日本列島は、暑い日が続いています。熱中症について、たくさんのニュースが伝えられています。子供や高齢者が亡くなっています。

私が子供の頃は、こんなに暑くなかったように記憶しています。学校はもちろん、家にも、父親の自家用車にも、冷房はありませんでした。
冷房のない教室ですが、汗でびっしょりになりながら、本を読んだとかノートを書いたといった記憶はありません。
夏休みは、麦わら帽子を被って、セミ取りに精を出していました。午後は昼寝をしていましたね。この時は、汗をかいていました。夜は、蚊帳をつって寝ていました。
明日香村は田舎ですが、大和盆地ですから、決して涼しいところではないはずです。

今年の夏は、書斎でこのホームページを加筆するにも、本を読むにも、冷房なしでは無理です。そんなに高温になったのでしょうか。
テレビでは、日中の外出を控えるようにと、くり返し注意を呼びかけています。
今日は孫と公園のジャブジャブ池に行きましたが、午前中で帰ってきました。新宿までの散歩は、一駅分1キロメートルで断念し、地下鉄へ。紀伊國屋は冷房が効いていて、寒いくらいでした。
毎週、同じことを書いています。

稲継先生の新著『シビックテック』

2018年7月22日   岡本全勝

稲継裕昭・早稲田大学教授が『シビックテック』(2018年、勁草書房)を出版されました。
シビックテックとは聞き慣れない言葉ですが。副題に「ICTを使って地域課題を自分たちで解決する」とあります。

金沢市では、分別ゴミをいつ出せば良いかが、スマートフォンですぐにわかるアプリがあります。
奥能登地方には、「のとノットアローン」という子育て中の親を支援するアプリがあります。イベント、遊び場やお店の地図、信頼できる相談先などが載っています。
これらに共通するのは、ICT機能を使って、誰でも簡単に便利に使えること。市役所でなく、市民が主体になって作っていることです。

稲継先生は、これを「自動販売機モデル」(市民が税金を投入すると、サービスが出てくる。出てこない時は、自販機を叩く)から、市民が自分たちで地域の問題を解決する社会への転換だと主張されます。自販機モデルには、機械の中がブラックボックスで、市民からは見えにくいことも、含まれています。

ICTの発達によって、このような形での、市民による地域の問題解決ができるようになったのですね。
これまで市民参加というと、市役所への抗議行動、要請行動が主で、市役所と協働するとしても、審議会への参加、計画過程での参加でした。しかし、スマートフォンやパソコンを使って、「知りたい情報」を提供することが簡単にできるようになりました。
そして市民が知りたい情報は、市役所の仕事だけでなく、企業や地域が提供しているサービスなどもあります。これから、このような市民参加が広がることを期待しましょう。
もちろん、このような動きだけで、地域の課題がすべて解決するわけではありません。しかし、「地域の課題は市役所が解決してくれる」という通念を変えていくでしょう。

医師に必要な国語力

2018年7月21日   岡本全勝

7月12日の読売新聞解説欄、山口俊晴・がん研有明病院名誉院長の「がん医療新時代へ」の続きです。先生は、次のようにもおっしゃいます。

・・・医師にとって国語力は必要なんですよ。患者さんの言葉から思いを理解し、治療法を易しく説明する。物理学や統計学より大事だと思うね。
説明と言えば、ぼくが医者になった1970年代前半、患者さんにはがんを告知しなかった。胃がんの人に抗がん剤を点滴し、「肝臓の調子を良くする薬です」とごまかす。告知する方向へと変わったのは、90年代半ばからかな。

今でも、「本人にはがんだと言わないで」と頼む家族はいる。僕はきっぱりと断り、こう説明します。
「がんはあなたの病気ではなく、本人の病気です。私の長年の経験上、告知すれば、たとえ数日間は落ち込んでも、最後には納得します」
告知していないと、ばれないように家族が患者に近寄らなくなるんですよ。こんな時こそ、家族がそばにいてあげないといけないのに。正直に告知して、残された時間を家族とともに大切に使った方が、患者・家族の双方にとって良い―。こう説明すると、今では例外なく家族も納得してくれるようになったね・・・