年別アーカイブ:2018年

昭和モデル経済の崩壊がもたらしたもの

2018年2月25日   岡本全勝

朝日新聞が経済面で「平成経済」を連載しています。第2部は「昭和モデルの崩壊」です。戦後に生まれ、高度成長を経験し、平成を官僚として過ごした私には、身近な話題ばかりです。経済の変化が政治の変化を生んだ例を、2つ紹介します。

2月11日は「非正社員、守らぬ労組」でした。
戦後、労働組合は、非自民勢力の中核として、輝いた時期もありました。労働者の地位を向上させる、政治では革新的主張をする存在として。
しかし、ある時期から、組合員の既得権を守る保護集団に変化しました。「市民との連帯」も空しくなりました。企業が正規職員の待遇をそれなりに引き上げると、労働組合の存在理由が低下しました。他方で非正規職員が増え、その待遇が問題なのに、労働組合は正規職員を守ることを優先したのです。経済・社会の状況が変わったのに、自らの変革に失敗したのです。
さらに、賃上げについては、近年は政府が主導するという、労働運動からは「奇妙な」構図になっています。

「昔陸軍、今総評」と呼ばれた時代もありました。「スト権スト」を打って、国鉄を長期間止め、国民の支持を失いました。国鉄の労組(先鋭的部分)は、最終的には国鉄解体を招きました。彼らは、自らの行動をどのように評価(総括)しているのでしょうか。
意図したことと全く違った結果を招く。しかも、自らの存立する組織をつぶしてしまう。旧日本軍とともに、政治学や組織の責任者にとって、大きな研究事例です。

2月18日は、「財界、団結から分散へ」でした。
労働組合が強い時代は、経営者側は、会社経営にあっては労働組合との対決、政治にあっては社会党との対決(自民党支援)が重要でした。しかし、労組が力を失うとともに、財界の使命も変わってきたのです。

山極寿一・鎌田浩毅 著『ゴリラと学ぶ』

2018年2月24日   岡本全勝

山極寿一・鎌田浩毅 著『ゴリラと学ぶー家族の起源と人類の未来』(2018年、ミネルヴァ書房)を紹介します。面白くて、一気に読み終えました。

鎌田浩毅・京大教授が聞き手となった、山極寿一・京大総長との対談です。山極先生は、ゴリラ研究で有名です。本書の前半、どのようにしてこの研究に進んだか、現地調査での死の危険を伴う調査など、体験談は興味深いです。
多彩な経験をされた方、これまでにない業績を上げられた方の体験談とそれに基づく話は、面白いですね。学問や研究が、透明な空気の中でできるのではなく、ある人の営みの中でできあがることがよくわかります。若き研究者に読んでもらいたい本です。
後半では、ゴリラの家族研究と、それを通じた人類の起源やあり方の議論です。行動生物学や社会生物学との違いが、よくわかりました。なぜ人類は家族を持つようになったのか。副題に「家族の起源と人類の未来」とあります。

鎌田先生は、上手な聞き手です。相手の話を発展させ、あるときは本筋に戻しと。また、巻末の「講義レポート」もよいですね。単なる対談のしっぱなしではなく、これがついていることで、価値が上がります。

書店のホームページでは、次のように説明されています。
「〝知の伝道師〟鎌田浩毅が受け手となる講義形式で、斯界の第一人者の人生・思想に鋭く切り込むシリーズの第一巻。ゴリラ研究のパイオニア、山極寿一京大総長を迎え、第Ⅰ部でその半生に迫る。第Ⅱ部では霊長類学の世界へを踏み入れ、われわれ人類の起源と未来を縦横に語る。五感をフルに使い、研ぎ澄まされた直観がつかむ「曖昧なもの」に導かれた豊かな知が溢れる一冊」
ミネルヴァ書房は良い研究書とともに、人物評伝もたくさん手がけています。このシリーズも期待ましょう。

原発事故避難指示区域での被災者生活再建支援

2018年2月23日   岡本全勝

2月7日に「避難指示区域等における被災者の生活再建に向けた関係府省庁会議」を開きました。「趣旨
避難指示が、順次解除されています。解除された地域では、除染とインフラ復旧がすみ、各種サービスも再開されています。しかし、それだけで住民の生活が戻るわけではありません。仮設住宅暮らしが長期間だっただけに、帰還と生活再開は難しいです。これまでの役所は、モノをつくることや規制は得意です。国民の生活を支援する際も、生活保護や年金、医療保険のような金銭支援は得意です。しかし、個人の生活再建まで踏み込んだ経験は少ないです。

この仕事は、「原子力災害対策本部」が責任を負っていますが、関係各省が様々な支援に協力しています。資料をご覧いただくとして、特に次の資料をご覧ください。
資料6 被災者の生活再建を巡る現状について
資料7 復興庁資料(各種生活支援。各省にない施策は、復興庁が取り組んでいます。)

日本語の3相

2018年2月23日   岡本全勝

日本語は、大和言葉の上に、漢字と漢語を輸入して、できあがりました。1,500年前から1,000年前頃でしょうか。150年ほど前から、西欧の言葉が入ってきましたが、漢語に翻訳して、日本語に取り込みました。哲学、民主主義、電気・・。
ところが近年、漢語に翻訳することなく、カタカナ表記で日本語に取り込むことが増えました。インターチェンジ、インターネット・・。それはそれで通じるのですが。

日本語の基礎は、大和言葉と漢語でできているので、カタカナ語はどうも据わりが悪いです。漢字が表意文字なのに対し、カタカナ英語は表音文字なのが、大きな理由でしょう。
「携帯電話」と書けば、初めての人も、どんなものか想像がつきます。でも「スマホ」は、想像できないのです。「スマートフォン」と聞いても、「スマート」「フォン」が日本語からは連想できないのです。ハイウエイは、高速道路が定着し、これはわかりやすいです。インターチェンジは、良い日本語がなったのでしょうか。
IT関連は、特に翻訳を怠っているようです。おっと、「IT」はカタカナにも変換せず、アルファベットのまま、日本語に取り込んでいます。駅のICカード(これもアルファベットのままですね)の機械は、「チャージ金額を・・・」と話しますが、「チャージ」なんて使わなくても「入金」ですむのに。
かつて書きましたが、カタカナ英語は、非英語圏の人が日本語を学ぶ際に、苦労することです。そして、高齢者にもわかりにくいのです。漢語に翻訳する努力をして欲しいです。

私たちは、次のような3相(3層)の日本語を使っています。
1 あの人は、気持ちを抑えられない。
2 相手方は、感情を制御できない。
3 クライアントは、メンタルをコントロールできない。

私も、職場ではついつい3を使ってしまいます。家では1を使っています。書き物では、できるだけ3を使わず、1か2に書き換えるようにしています。

日経新聞夕刊コラム第8回

2018年2月22日   岡本全勝

日経新聞夕刊コラム第8回「いつ寝るか」が載りました。
麻生太郎内閣総理大臣の秘書官時代の経験です。総理秘書官の経験は、たくさんの思い出がありますが、コラムに載せるには「向いていない話」が多いです。そこで、「マッコウクジラの降下」を書きました。
今思い返しても、ほれぼれするような「急速、濃密な睡眠」でした。そして、目覚まし時計が鳴ると、バネ仕掛けのように跳び起きるのです。全く苦労しませんでした。若い時には、朝起きるのが苦手だったのですが。
最近は、ゆったりとした睡眠時間を取っているので、あのような濃密な睡眠にはなりません。

問い合わせがありました。「キョーコさんは、先に起きて、朝ご飯をつくってくれるのですか」
はい。必ず作ってくれます。朝が早いので、朝食を食べないと、昼食までにお腹が減ります。そもそも、力が入りません。で、必ず朝食をつくってくれます。今もです。これには、感謝しなければなりません。「私を元気に働かせて・・・」という愛情(魂胆)もあるようです(苦笑)。

執筆の苦労の続きです。
書きたいことはたくさんあるのですが、話題はこの字数で収まる話でなければなりません。他方で、抽象的な話ではわかりにくいと考え、具体事例を入れるようにしています。
官僚の経験談を中心にしているので、どうしても私の実体験が主になります。しかし、自己満足では、読む人は面白くないですよね。一般の方に分かってもらう、興味を持ってもらう内容でないと、読んでもらえないでしょう。難しいです。