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日経新聞夕刊コラム第11回

2018年3月15日   岡本全勝

日経新聞夕刊コラム第11回「社会の財産」が載りました。
写真に写せない財産、数字に換算できない財産は、たくさんあります。個人にも、地域にも、社会にも。日本は、信頼に支えられた「強い社会」を持っています。

社会的共通資本は、私の長年の研究対象です。拙著『新地方自治入門』で、住みよい地域を考えた際に、気がつきました。
住みよい町は、社会資本(狭義、インフラや公共施設など)だけでは、できてはいません。目に見えない各種の資本(資産)も重要です。制度資本(教育や医療制度)、関係資本(信頼など)、文化資本(治安、気風など)があって、住みよい町ができます。これらを含めて、広く社会的共通資本(ソーシャル・キャピタル)をつくることを考えるべきです。

残念ながら、政治学や行政学の教科書では、十分に取り上げられていません。写真に写せない、数値で表せないことから、研究対象になりにくいのです。
公共政策論でも、多くは対象は行政の範囲にとどまっています。しかし、ここで取り上げた「社会関係資本」は、行政が法律や予算で作るものではありません。

公共空間を考えた際、その主体は、行政だけでなく、住民、企業、非営利団体もその担い手です。そして、対象も、法律や予算で作る公共施設や制度だけではありません。これまでの行政と行政学は、主体と対象さらには方法において、狭いのです。
東日本大震災 復興が日本を変える』第4章でも、指摘しました。ご関心ある方は、お読みください。
慶應義塾大学での公共政策論でも、論じています。いずれ、本にまとめようと考えています。

原発事故被災地、帰還者支援。福島民報社説

2018年3月15日   岡本全勝

福島民報新聞、3月14日の社説は、「帰還者支援 官民挙げ、全力で」でした。
・・・東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から丸7年がたち、避難指示が解除された市町村では帰還する住民や事業を再開する人が着実に増えている。一人一人の存在が古里を取り戻すための大きな原動力になる。それぞれの思いを受け止め、官民挙げて支えていかねばならない。
住民の帰還を巡っては「全体の一割にも満たない」「戻った住民も多くは高齢者」といった悲観的な取り上げられ方が目立つ。ただ、昨春に比べて住民が千人近く増えている地域や倍以上になった町もある。生業を取り戻し、次代につなぐと前を向く高齢者や、再開された学校に元気に通う子どもたちもいる。目を向けるべきは全体を大くくりにした数字ではなく、その内実だろう。
原発事故で全住民が避難した地域を再生させるのは容易ではない。避難指示の期間が長ければ、家屋・施設、田畑・山林の荒廃が激しさを増し、さらに難易度は上がる。人々が戻るまでに時間がかかるのは当然だ。それでも「帰る」と判断した住民の存在はたとえ一人でも尊い。さまざまな事情で、帰りたくても帰れない人、避難先から通って事業を再開した人とも思いは通じているはずだ・・・
・・・これからどうしたいのか。何を目指すのか。そのために必要なものは…。古里に戻った人たちの意向や思いを丁寧にくみ取り、手詰まり感のある復旧・復興施策に反映させる仕組みや取り組みが必要だ。年代や職業などによって果たすべき役割に違いはあるにしても、意欲ある人たちの力を生かし、一歩ずつ確実に前に進んでいけば、たどり着けないところはない・・・

指摘の通りです。
一部には、「帰還者は少ない」「行政の思い通りには人は戻っていない」といった報道もあります。それは事実です。しかし、批判しているだけでは、事態は進みません。
住民にも、様々な思いの方がおられます。アンケートでは、半数以上の住民が戻る意向がない、と答えた町もあります。では、どのようにすれば良いのか。

マスコミの指摘や批判にも、2種類のものがあると思います。批判だけで終わる記事と、改善に向けて書かれた記事と。後ろ向きか、前向きかの違いでもあります。
情緒的だとお叱りを受けることを覚悟で言えば、頑張っている現地や住民に対して、愛情がある記事と、愛情のない記事の違いだと思います。他人事での批判と、その身になって考える記事との違いでもあります。
早川さん、ありがとうございます。

被災地での就職支援。マチリク

2018年3月15日   岡本全勝

この大震災では、被災地の人材不足を補うため、官民でいくつもの試みをしました。
自治体へは、応援職員や任期付き職員採用など。民間の力を借りた例では、「ワーク・フォー・東北」です。

いま、また新しい試みが成功しつつあります。「マチリク」です。
単なる求人と求職の斡旋(職業紹介)ではなく、求職者の不安解消と求人側の問題点解決まで踏み込み、さらに就職後も支援します。
田舎の中小企業、年に1人も採用しない企業だと、応募する学生も不安です。先輩も同期もいないし。他方で、中小企業も、毎年のように採用をするわけではないので、新人をどのように扱ったら良いか分からない。就業規則だって、あるかどうか。そこを、埋めるのです。

それを、自治体と地域企業が一緒になってやる。それをマチリクが支援する、という仕組みです。職業紹介だけでは、3年以内に多くの若者が離職しています。この試みでは、定着率が抜群に良いです。
詳しくは、ホームページと添付の資料を読んでください。
被災地を中心にやってきましたが、全国各地でUターンを求めている、若い働き手を求めている自治体が「ほしがる」仕組みでしょう。全国でも取り入れて欲しいです。
以下、藤沢烈さんの紹介文の一部を、転載します。

地方自治体の若者地元定着にむけた、官民連携の新しいアプローチ~マチリクプロジェクト
(地方自治体の若者地元定着にむけた2つの壁)
地方から東京圏への人口流出により、若者人口は減少の一途。仮に地方に留まったとしても、定着しません。
厚労省平成26年度新規学卒就業者3年以内離職率は、従業員100人以下企業は、大学38.8%、高校47.1%。
①地方の中小企業は若手人材の育成ノウハウに乏しく、働き方革命の最近は整備されて当たり前の労働規定が不十分な企業が少なくない
②大卒学生も、「キャリアになるのか」「相談できる同期・先輩がいるか」「労働環境は適切か」といった点を近年は重視
この2つの壁がある限り、合同会社説明会等のマッチングの場の支援だけでは課題は解決出来ません。

(2つの壁を乗り越えるコミュニティ採用・定着支援)
地方自治体がリーダーシップを取り、地域企業とリクルートキャリアと共に採用、定着に取り組むことを宣言します。軌道に乗るまでの地域企業への補助や、研修の会場提供などを行います。
リクルートキャリアは、就職サイトや合同会社説明会といったマッチングの場の支援に留まらず、研修や定期的な勉強会を通じノウハウを提供して地域企業の底上げを図ります。また各企業に入社した人材を一堂に会した研修を定期的に実施し、「地域同期」としてのネットワークを構築します。
この一連の活動そのものを広報することで、就職安心地域のイメージを醸成していきます。

(東北三陸地域での実施例)
2014年~2016年にかけて、岩手県釜石市、岩手県大槌町、宮城県気仙沼市で実施しました。3地域合わせて36人の採用と定着率90%で推移しています。

増えた会社員のうつ病

2018年3月14日   岡本全勝

2月10日の朝日新聞別刷りbeの「サザエさんをさがして」は「働く人のうつ病」でした。
私が40年間社会人として働いているうちに、職場では様々なことが変わりました。まあ、変わらないことの方が多いのですが。変わったことの一つが、職員のうつ病です。
うつ病の職員が増え、メンタルヘルスが職場で大きな話題になっています。昔は、ここまでのことはありませんでした。官民を問わず、私以上の年代の管理職経験者は、同じことをおっしゃいます。
この記事によると、1970年(昭和45年)に、サザエさんが取り上げています。しかし、解説によると、当時はまだあまり知られておらず、1990年代からの増加が激しかったようです。今やうつ病は「国民病」と表現されています。患者数は111万人を超えているのだそうです。100人に1人です。受診者が増えたことも、要因のようです。
さらに、次のような記述も。

・・・そして、この動きは90年代末に入ると加速する。新しい抗うつ薬が発売され、製薬会社などは「うつは心の風邪」といった啓発キャンペーンを始めた。精神科への抵抗感が弱まり、受診する人が増えていった。電通社員の過労自殺訴訟で、最高裁が00年に「企業は、過労で社員が心身の健康を損なわないようにすべき義務がある」との初判断を示したのも大きかった。逆に「軽い気分の落ち込みまで、うつ病と診断されている」という批判も出るほどだった。
一方、うつ病は「時代や社会を映す鏡」ともいえる。それは、海の病棟の患者層を時系列に見るとわかる。設立された89年から数年は、「きまじめタイプ」の公務員や教師が多かった。バブル末期の90年代初めは接待漬けの商社マン、企業のIT化が進むと働き過ぎのIT系社員、最近は超高齢化による人手不足を反映して看護師や介護職員が多いのだという。
2000年代後半に入り目立ってきたのが、いわゆる「現代型」といわれるうつ病である。徳永院長によると、きちょうめんで自分を責める「従来型」と違い、周囲に攻撃的で、休日は旅行に行くようなタイプのうつ病を指す。若い世代に多いという。「様々な要因があるが、職場への帰属意識の希薄化が一因でしょう」
社会心理学者の加藤諦三さん(80)は「バブルがはじけ、企業は本来の姿である機能集団になった。さらに家庭や地域が弱体化し、日本人は情緒的満足を求める場所がなくなった」と指摘する。・・・

職員のうつ病、心身症は、多くの職場で管理職が悩んでいることです。

古くなってすみません。「ホームページに書かなければ」と思って、切り取って半封筒に入れてあるのですが。ついつい他の記事を優先しているうちに、後ろの方に行ってしまい、忘れてしまうのです。反省。朝日新聞はウエッブで過去記事も読むことができるので、便利です。

地方分権改革 提案募集方式

2018年3月14日   岡本全勝

月刊『地方財務』3月号が「地方分権改革 提案募集方式の展開」を特集しています。巻頭に、大村慎一・内閣府地方分権改革推進室次長が「提案募集方式の成果と今後の課題」を概説しています。
第一次分権改革は、「委員会勧告方式」で進みました。それは、全国共通の制度について勧告を受け、法令を見直しました。平成26年からは、「提案募集方式」をとっています。全国一律でなく、地域の個性を生かすこと、地方の発意を生かすことが、特徴です。

4年やってみて、提案に対する実現や対応の割合は、平成26年の64%から年々上昇し、29年では90%になっています。
提案内容は、放課後児童クラブ、保育所、給食費のコンビニ納付、タクシーの貨客混載、所有者不明土地など、生活に密着したものとなっています。
また、提案が実現することになったもののうち、法律改正が20%、政省令改正が7%、告示や通知が53%、自治体への情報提供が20%です。法令ではなく、運用が支障になっていることがわかります。
具体的な提案と改善例が紹介されています。ご関心ある方は、お読みください。