単身高齢者世帯、全体の1割

11月26日の日経新聞1面は、「単身高齢者、三大都市圏で1割超え」でした。

・・・一人暮らしの高齢者が大都市で急増している。日本経済新聞が国勢調査を分析したところ、三大都市圏(1都2府5県)は2000年以降の15年間で2.1倍の289万人に達し、15年に初めて世帯全体の1割を突破した。単身高齢者は介護や生活保護が必要な状態に陥りやすい。社会保障の財政運営が厳しくなる懸念が強まり、在宅を軸に自立した生活を支える「地域包括ケアシステム」の構築が急務となる・・・

詳しくは本文を読んでいただくとして。単身高齢者世帯が、急速に増えています。全国で1割ですが、過疎地域とともに都市部での増加が大きな問題になっています。
元気なうちは良いのですが、いずれ体力や知力が衰えます。家族と同居していると、世話をしてもらえるとともに、何かあったときは助けを呼んでもらえます。一人住まいでは、それができないのです。
これからの地域行政の大きな課題です。

奈良県町村長への講演

今日11月27日夕方は、奈良県町村長研修会で「震災に学ぶまちづくり」を話してきました。場所は東京です。
私のこの7年8か月の経験を、お話ししました。奈良県は災害が比較的少ない地域ですが、近年は豪雨災害に見舞われています。阪神・淡路大震災や大阪北部地震もあり、想定外が起きるのです。
その際の心得や、町の復興には何が必要かを、お話ししました。町村長さんたちも、他人ごとではないので、熱心に聞いてくださいました。
もちろん、奈良の標準語で話しました。

パワハラ、しごき。その2

11月22日の朝日新聞オピニオン欄「人を導く力とは」の続きです。

松崎一葉さん(精神科産業医)
・・・企業の研修で、講師が一般的なパワハラ話をしても、管理職は「きれいごとに従っていたら契約は取れない」「今の若者は9時~5時で働くだけでは育たない」と話半分にしか聞いていません。彼らには、利益を上げるためには自分の指導方法は多少きつくても「善」であるという信念があるからです。
彼らが部下を指導する内容自体は無理難題ではなく、事実、若手が頑張ってもとれない契約が、課長がいくとまとまったりする。「こうしたらいい」という彼らの指導内容はおおむね正しいのです・・・

・・・しかも彼らは自分の出世目的というより、「国民にいい車を届けよう」とか「お客さんが満足するサービスを考えよう」と、本心から思っています。その目標がしっかり共有されているとき、私は上司と部下との間に「共感的関係」が成立していると言います。部下は「この人が言うのなら」と我慢して、自分から過重労働に耐えようとするのです。働き方改革が叫ばれても、こうした関係が会社の中に内在する限り、うつ病や過労死の危険がなくなることはないと思います。
昨今のレスリングや体操など競技団体でのパワハラ騒動も、同じように「金メダル」という崇高な目標を共有していた「上司と部下」の信頼関係がくずれた結果、とみることができるでしょう。
上司は結局、自分の成功体験を部下に押しつけ、自分のコピーをつくろうとしている。中にはうまくいき「育てられた」と思う部下も出ます。その部下は次の世代に同じ厳しい指導を課します。我慢して成し遂げた経験が無意味とは言いませんが、会社は次第に劣化するかもしれません。経済成長の鈍化でイノベーションが必要とされている現在、画期的な商品や新たなビジネスモデルは、商品を改良し量産すれば消費が伸び、売り上げが出た高度経済成長やバブル時代の「できる社員」からは生まれないからです・・・

社会史と政治史、喜安朗・川北稔著『大都会の誕生 ロンドンとパリの社会史』2

社会史と政治史、『大都会の誕生 ロンドンとパリの社会史』」の続きです。

パリについては、喜安朗先生が19世紀の民衆運動を書いておられます。
フランス革命後、商工業の発展、市民層の台頭が、パリの風景を変えていきます。大通りが作られ、盛り場ができます。主役は、貴族から市民(金持ちとそうでない人と)になります。その盛り場を舞台にして、民衆の歓楽と騒ぎが出ます。それが暴走すると、1846年の2月革命となります。
歴史で学んだ2月革命が、より詳しく、その背景や民衆蜂起としての姿が描かれます。

この本を読むと、政治史がいかに狭い範囲を扱っているかがわかります。社会の変化を見るには、政治指導者たちの動きだけでなく、それを支えた、あるいは指導者たちが意識しなければならなかった民衆の意識や社会の問題を見る必要があります。
マルクス経済学は、経済という下部構造が社会と政治を規定しますが、これはあまりに短絡的すぎます。
これからの歴史学、政治史は、民衆と社会を対象としたものに変わっていくのでしょう。
関連記事「歴史の見方の変化」「加藤秀俊著『社会学』

パワハラ、しごき

11月22日の朝日新聞オピニオン欄「人を導く力とは」から。

筒香嘉智さん(プロ野球横浜ベイスターズ選手)
・・・今年の夏、少年野球で暴力を振るう指導者の動画を見ました。あり得ません。罰はまったくいらない。他のスポーツや会社でも、怒鳴る、殴るという指導があると聞きますが、そのような指導者は、相手に聞いてもらえる言葉を選べていないわけで、言うだけで足りないから殴ったり怒鳴ったりしてしまうんですよね。
指導する際は、じっくり見守り、迷いがあるときなどに手を差し伸べる、というのが理想的です。答えをすぐに教えたくなる気持ちもわかりますが、それは子どものためにならない・・・
・・・コーチングというのは、本来は導くという意味です。しかし、日本ではティーチングをしていることが多い。怒鳴りつけるコーチは米国でもドミニカでも見ませんでした。会社でも、部下が仕事でミスをしたというだけで怒り、自己満足しているのは厳しさじゃないと思います。愛がないように感じます。共にする時間が長い上司として、部下が日ごろどう考え、どんな努力をしてきたのかをすべてわかった上での言葉ならいいと思いますね・・・

川人博さん(弁護士)
・・・元ラグビー日本代表の故・平尾誠二さんと、ノーベル賞を受賞した山中伸弥さんの物語を書いた「友情」という本に、「人を叱る時の四つの心得」が記されています。(1)プレーは叱っても人格は責めない(2)あとで必ずフォローする(3)他人と比較しない(4)長時間叱らない、とありました。
私が担当する東京大学のゼミで、(お好み焼き店チェーンの)千房の創業者である中井政嗣さんに話をしてもらったことがあります。元受刑者を積極的に採用し、上司が部下に接する際に大事なのは、「ねぎらい」と「励まし」だと指摘されていました。これこそリーダーシップだと思います。
この逆がパワハラで、相手のためではなく自分のストレス発散のために叱っています。誰でも加害者になる可能性があります。個人的資質も関係ありますが、環境や置かれた条件にも左右されます。社長から無理難題を課せられた部長や課長が、その部下に八つ当たりをするようになります。
長時間労働で肉体的にも精神的にも疲れると、他者への配慮を欠くことにつながります。抑圧は下へ下へと移っていき、最終的に家庭内での虐待などにもつながっていると私は考えています・・・
この項続く。