社会史と政治史、喜安朗・川北稔著『大都会の誕生 ロンドンとパリの社会史』2

社会史と政治史、『大都会の誕生 ロンドンとパリの社会史』」の続きです。

パリについては、喜安朗先生が19世紀の民衆運動を書いておられます。
フランス革命後、商工業の発展、市民層の台頭が、パリの風景を変えていきます。大通りが作られ、盛り場ができます。主役は、貴族から市民(金持ちとそうでない人と)になります。その盛り場を舞台にして、民衆の歓楽と騒ぎが出ます。それが暴走すると、1846年の2月革命となります。
歴史で学んだ2月革命が、より詳しく、その背景や民衆蜂起としての姿が描かれます。

この本を読むと、政治史がいかに狭い範囲を扱っているかがわかります。社会の変化を見るには、政治指導者たちの動きだけでなく、それを支えた、あるいは指導者たちが意識しなければならなかった民衆の意識や社会の問題を見る必要があります。
マルクス経済学は、経済という下部構造が社会と政治を規定しますが、これはあまりに短絡的すぎます。
これからの歴史学、政治史は、民衆と社会を対象としたものに変わっていくのでしょう。
関連記事「歴史の見方の変化」「加藤秀俊著『社会学』