猛暑の夏

暑い日が続いています。朝から30度を越える日々。40度近くになるところもあるそうです。被災地では、ボランティアが活躍しています。ありがたいことです。熱中症に気をつけてください。

私は、外出を控え、家の中で過ごしています。水シャワーを浴び、冷たい麦茶を何度も飲んで。冷房の嫌いな私も、そうは言っておられません。20日の慶應大学での春学期最後の講義の準備をまずは終え、その他の資料の整理。

孫の相手、これは外出せざるを得ません。そして、意を決して新宿へ。散歩はあきらめ、地下鉄で行きました。地下鉄もお店も、寒いくらいに冷えていました。

皆さんも、健康に気をつけてください。

NHK、被災地での生活支援情報

NHKがウエッブニュースで、被災地での生活関連情報を載せています。画面の中程です。目立つように黄色の字に、大きな文字で表示してあります。

例えば、広島県内。項目は、断水の復旧見込み、給水か所、住宅提供、入浴支援、災害ゴミ受け付けなど。
停電していない、テレビを見ることができるという条件の下ですが。これは、被災者には役に立ちます。
通常は、避難所に張り出すのですが。たくさんの人に最新情報を見てもらうには、この方が便利です。

砂原先生の新著

砂原庸介教授が、『新築がお好きですか? 日本における住宅と政治』(2018年、ミネルヴァ書房)を出版されました。「何だろう」と疑問を持たせる書名ですね。

日本では、新築の持ち家が好まれます。若いうちはアパートや社宅に入っていても、最後は新築の持ち家を持つことが、「住宅双六」の上がりでした。家を建てることが、男子一生の夢でした。
では、なぜそのような意識が、国民の間にできあがったのか。政府が強制したのでも、誘導したのでもありません。政府の住宅政策はありましたが、必ずしも新築持ち家ではありません。住宅メーカーや工務店、不動産屋などが提供し、国民が選択した結果、できあがったものです。
教授は、これを「制度」として分析します。ここで制度とは、法律、共有されている規範、習慣など、個人の住宅選択を制約するものです。

私はこの本の主旨を、「戦後日本の住宅(新築持ち家志向)を対象とした、政治行政の政策と国民の行動の相関の分析」と理解しました。政府の政策と国民の意識が相まって、このような新築持ち家志向ができあがるのです。それを分析した本です。
江戸時代の町人が大家さんの長屋を借りて住んでいたこと、戦前でも夏目漱石が借家住まいをしていたことなど、新築持ち家は必ずしも日本の伝統ではありません。経済学からしても、新築持ち家が経済的とも思えません。それを支えたのが、「制度」です。

私は、「制度」を2つに分けて、理解しています。一つは狭い意味での制度です。 法律や規則など、明示的にルールと定められているもの。 政府が定めるものだけでなく、会社が(従業員向けに、顧客向けに)定めるものなども含みます。
もう一つは、国民が持っている「通念」です。規則として決められていないのですが、多くの国民がそれが良いと信じているものや、慣習です。これが、社会の運用や秩序を支えています。
法制度が国民に一定の行動を強制し、後者がそれを支える関係にあります。法制度がなくて、通念だけがある分野も多いです。冠婚葬祭などは、後者の部分が大きいです。

さて、この通念が続くのか、変わるのか。これについても、分析されています。
既に空き家が膨大な戸数になり、売れなくて負の遺産になっています。他方で、大都市での土地の値上がりで、戸建ても新築マンションも、サラリーマンには手の届かないものになっています。質の良いマンションもできています。
実は、この通念を支えてきた基礎には、土地についての神話(土地は最高の財産)と所有権絶対の意識があります。この部分が変わらないと、住宅についての意識は変わらないのです。でも、あれだけ執着された農地が放棄され、空き家(空き土地)も増えつつあります。この経済的変化が、通念を変えていくでしょう。
私は、変わると想像しているのですが。といいつつ、私も宅地を買い、戸建て住宅を建てました。

原発避難者の生活再建対応策

7月10日に、「避難指示区域等における被災者の生活再建に向けた関係府省庁会議」が開かれました。被災地の復興には、地域の復興とともに、被災者の生活再建が必要です。地域と人です。

津波被災地でも、住宅が完成し街並みができると、仮設住宅から出て行かれます。ただし、高齢者や意思能力に欠ける方など、自分では判断できない方もおられます。その方々には、市町村の福祉部門と連携して、個別に生活相談をしています。そうすることによって、順次仮設住宅が撤去されています。
原発被災者は、遠隔地に避難したこと、避難生活が長引くこと、帰還しても働く場が元通りにならない場合もあることなど、困難な条件にあります。既に帰還して事業を再開した人や、新しい場所で生活を始めた人も多いです。しかし、まだ避難生活を続けておられる方も多く、このような「不安定な生活」を早く切り上げてもらう必要があります。

避難指示が出た区域の全世帯にアンケート調査も行いました。
6割の人が、持ち家に居住しています。
主たる家計維持者の無職23%が、震災後に44%へ増加しています。
そのうち、新たな仕事に就きたいは(60歳未満で)2割程度です。当面仕事をするつもりはない理由は、収入・貯蓄があるとのことです。
健康状況は特に問題はないが66%、精神面で日常生活に支障があるが10%程度おられます。

これらを踏まえ、「対応強化策」(概要本文)をまとめました。見守り、住まい、就労、健康の4分野です。
かなりの地域で、避難指示が解除されました。住民サービスは、順次再開されています。
ただし、まだ当面のあいだ、避難指示が解除できない地域もあります。その人たちのためには、新しい生活を始めるための損害賠償(故郷損失賠償を含む)が支払われました。また、帰還したい人のためには、県内に公営住宅を用意しました。まずは、この公営住宅に入っていただければと考えています。

慶應大学、公共政策論第13回目

公共政策論も、第13回目。政府の役割の議論で、国家の役割などを説明しました。
国家の役割を網羅的に分類した資料って、見当たりません。独自に作った分類で、説明しました。

補足
授業で紹介したイギリスの政治の歴史(議会によって社会の亀裂を統合する)は、近藤和彦著『イギリス史10講』(2013年、岩波新書)です。参考「覇権国家イギリスを作った仕組み」。

1980~2010年の行政改革の分類と位置づけについては、拙稿「行政改革の現在位置~その進化と課題」年報『公共政策学』第5号(2011年3月、北海道大学公共政策大学院)。