7月12日の読売新聞解説欄、山口俊晴・がん研有明病院名誉院長の「がん医療新時代へ」の続きです。先生は、次のようにもおっしゃいます。
・・・医師にとって国語力は必要なんですよ。患者さんの言葉から思いを理解し、治療法を易しく説明する。物理学や統計学より大事だと思うね。
説明と言えば、ぼくが医者になった1970年代前半、患者さんにはがんを告知しなかった。胃がんの人に抗がん剤を点滴し、「肝臓の調子を良くする薬です」とごまかす。告知する方向へと変わったのは、90年代半ばからかな。
今でも、「本人にはがんだと言わないで」と頼む家族はいる。僕はきっぱりと断り、こう説明します。
「がんはあなたの病気ではなく、本人の病気です。私の長年の経験上、告知すれば、たとえ数日間は落ち込んでも、最後には納得します」
告知していないと、ばれないように家族が患者に近寄らなくなるんですよ。こんな時こそ、家族がそばにいてあげないといけないのに。正直に告知して、残された時間を家族とともに大切に使った方が、患者・家族の双方にとって良い―。こう説明すると、今では例外なく家族も納得してくれるようになったね・・・