12月23日の読売新聞解説欄、塩野七生さんの「民主政 アテネの教訓。指導者 衆愚の分かれ目」から。
・・・アテネの全盛期を築いて民主政を完成させたペリクレスは、人々が発する不安の声を冷静に説き鎮め、長期的な視野に立った政治をした。しかし彼の後の指導者は、逆に人々の不安や怒りをあおり立て、戦略を欠いていく。ペリクレス後のアテネが後世、衆愚政と呼ばれることになった。
衆愚政のアテネは、政治の仕組みや有権者のレベルが以前と変わったわけではない。民主政を機能させる指導者がいたかどうかの違い。民主、民主と唱えていれば民主政が実現するわけではないの。民主政を妄信してはいけない・・・
塩野さんは、12月26日の日経新聞オピニオン欄にも、出ておられました。「失望が生むポピュリズム」。坂本英二・編集委員 の解説から。
・・・塩野七生さんは紀元前からルネサンスまで2500年に及ぶ欧州の歴史を約50年かけて書き上げた。登場する国家の盛衰や政治リーダーの栄光と失敗は、21世紀の国際社会とも共通する多くの教訓を含んでいる。
塩野さんの歴史長編はたいてい静かに始まる。民族や文化が生まれた時代背景を丁寧に紹介。だが外敵などに対抗するため個性的な指導者が現れた瞬間から、歴史が一気に走り出す。「ローマ人の物語」ではスキピオ、スッラ、カエサルら適時に適切な男たちが現れて困難を克服する。どんなに強大な帝国も、優秀な指導者を選べなければ一気に坂を転げ落ちる・・・