慶應大学、地方自治論第2回目

今日は、慶応大学法学部、地方自治論の第2回目の授業でした。
今回から出席した学生もいたので、前回のおさらいと、日本経済新聞社に提供してもらった「わかる日経」というパンフレットを配って、新聞記事の読み方を教えました。

そして、本来の自治論に入りました。今日は、地方自治の概要、日本国憲法での規定ぶり、地方自治の意義、団体自治と住民自治など、基本の解説です。
これらは基本中の基本なので、どの教科書にも載っていることです。まずは、覚えてもらわなければなりません、基本は、私のレジュメと教科書を読んでもらうとして。
江戸時代の分権、アメリカやヨーロッパでの自治の運用の違いなど、エピソードを使って、理解してもらいました。所と時代が変われば制度は変わること、現在の日本の地方自治が「絶対的なものではない」ことを話しました。

また、授業の反応を見るために、出席カードに感想やら質問を書いてもらいました。カードの総数は85枚でした。「私の授業は難しいですよ」と話したのに、先週より受講生が増えています。
学生に受けているのは、次のようなものでした。
・新聞の読み方指南
・私の官僚時代、特に総理秘書官の経験
・外国や江戸時代との比較をした「自治」の意味
それぞれに、私でなければ話すことができないものと、自負しています。無味乾燥な理論や歴史を話しても、学生には興味を持ってもらえませんよね。まずは、食いついてもらうように、工夫しました。
さて、多くの学生から、質問をいただきました。これについては、このホームページや授業でお話しします。

人材マッチング

河北新報連載「トモノミクス 被災地と企業」、4月7日は「現場に頼れる右腕 人材マッチング」でした。
・・・東日本大震災の被災地に送り込まれた228人が、復興をけん引する地域経済人の参謀についた。「右腕プログラム」。NPO法人「ETIC.」(エティック、東京)が構築した人材マッチングの進化形だ・・・
・・・プログラムは16年10月に募集を終了した。精神は新たな仕組み「ローカルベンチャー構想」に引き継がれた。エティックが釜石や石巻など8市町村と連携。「右腕」のノウハウを生かし、首都圏から人材を送り、民間投資を呼び込む。
「右腕」参加者のうち約100人が被災地で起業したり、派遣先地域に定着したりして地域経済に貢献する。人材マッチングのイノベーション(革新)が、新たな復興CSR(企業の社会的責任)を覚醒させる・・・
記事で紹介された事例は、復興現場で初めて挑戦した事例です。河北新報の記事の全文をお読みください。

人を求めている現場と、行きたいという人を紹介する「マッチング」。これは、難しい「お見合い」です。市場なら、価格という指標によって、売り手と買い手が結びつきます。しかし、この場合は、どこでどのような人を求めているのか、誰が行きたいのか、それを調べて結びつけなければなりません。拙著『復興が日本を変える』で、このお見合いの重要性を指摘しました。
事業を引き継ぎ、産業を振興するには、「人」が重要です。後継者であり従業員です。補助金などの支援も、それを使って事業に取り組む人がいてこそ、効果が現れます。何事も、人が基本なのです。
復興庁でも、「WORK FOR 東北」に取り組みました。「2月24日の記事

復興予算の執行状況

4月13日付けの各紙が、東日本大震災の予算の使われ方を報道していました。会計検査院の検査結果です。例えば、朝日新聞です。
・・・東日本大震災の集中復興期間だった2015年度までの5年間に、国が復興予算として計上した総額約33兆5千億円のうち、15年度末までに約9兆円が使われていなかった。会計検査院の調べでわかった。事業の遅れなどが影響したという。多くは翌年度以降の財源になっているが、事業内容が未定のまま計1千億円以上が自治体の基金に積み立てられていた。予算が使われたものの、十分に活用できていない事例もあった・・・

詳しくは、それぞれ本文を読んでいただくとして。
いささか、感慨にふけりました。復興を含め通常の事業なら、自治体から「予算が足りない」「毎年陳情しなければならない」などの要望や批判を受けます。ところが、今回は逆です。配られた予算が使い切れないのです。
他方で、「もっと精査して予算を計上し、配分すべきだ」という批判も受けます。もちろん、予算通りに執行されることが良いことなのですが。

復興事業の特徴として、精緻な計画や見通しがない状態で、事業を進めなければならないのです。また、現地で執行しやすいように、単年度でなく複数年度でも予算を配分しました。自治体で基金として、持っていてもらうのです。もし使い切れなかったら、翌年に繰り越してもらいます。
年度末に一々国に返納して、翌年に改めて申請をし直すというような手間を省いたのです。数年経って使い切れないとなれば、国庫に返納してもらいます。

自治体は安心して、事業を進めることができたと思います。
私は、今回のこの手続きは、ほかの事業にも応用できると思います。それによって、各自治体、各省、財務省、会計検査院の作業が、簡素化されるのです。関係者の大英断だったと思います。
このような良いことは、あまり報道されず、評価されませんねえ。

明るい公務員講座・中級編20

『地方行政』連載「明るい公務員講座・中級編」の第20回「部下の指導(4)意欲を持たせる指導」が発行されました。
「職員は褒めて育てる」とお教えしていますが、すべての職員が期待通りに仕事をしてくれるか。そうはいきませんよね。2:6:2の法則って、聞かれたことがありますか。蟻(アリ)の生態から発見されたものです。アリは皆せっせと働いているように見えますが、よく見ると、2割はよく働き、6割は普通に働き、残る2割はサボっているのです。
人間の組織でも、この法則が当てはまることがあるといわれます。では、どうしたら、普通の6割と働かない2割の職員に、もっと働いてもらえるか。今回は、この難しい問題について解説しました。

今回の内容は次の通り。
仕事が好きな人は1割?、2:6:2の法則、足りないのは技能ではなく意欲、意欲を持たせる指導、やりがいが意欲を高める、職員にも事情がある、全員が仕事人間ではない、指導は褒めながら。

慶應大学での講義開始2

今日は、公共政策論の授業第1回でした。
80人収容の教室が、授業中にどんどん埋まって(遅れてくる学生もいて)、ほぼ満員でした。資料は80部印刷して持ち込んだのですが、25部余りました???。学内ネットに資料を掲載してあるので、それを印刷した学生がいるのでしょうか。
先日の地方自治論の授業では「学内ネットで、資料を見ることができません」と言われたので、教えてもらったように「履修者のみ」という制限を外しました。今日、学生に聞くと、見ることができるそうです。まずは、一安心。
皆さん、熱心に聞いてくれました。朝9時からの授業に出席するのですから、それをもってしてもまじめです。私の話も、調子よく進みました。

第1回目なので、授業の進め方、私が伝えたいこと、公共政策のうち何を中心に話すかを、お話ししました。また、新聞を読むことと、読み方を教えました。これから社会人それもリーダーになる人たちですから、早く毎朝新聞を読む癖をつけて欲しいです。授業終了後に、さらに突っ込んで読み方を聞いてきた学生がいました。「毎朝2紙を読んでいるのですが、時間がかかって大変です」と。来週、そのコツをお教えしましょう。来週の準備を手伝ってくれたI君、ありがとう。
授業中に紹介した本は、阿川尚之著『アメリカン・ロイヤーの誕生』(1986年、中公新書)です。君たちの先輩で、慶応大学の教授も務められました。少し古くなりましたが、勉強になります。また、欧米の大手メディアの日本語版ニュースサイトについては、こちらを見てください。