12月11日の読売新聞1面「地球を読む」は、北岡伸一・JICA理事長の「明治維新150年、開国と民主的変革に意義」でした。
・・・大正元年(1912年)9月、若き日の石橋湛山は、明治時代について次のように述べている。多くの人は、明治時代を戦争と植民地の拡大の時代だったと見るだろう。しかし自分はそうは考えない。国民は軍事費の負担にあえいでいるし、これらの戦争は、時勢上やむを得ず行ったものだ。その成果は一次的なものであって、時勢が変わればその意義を失ってしまう。
そして石橋は、明治時代の最大の事業は、戦争の勝利や植民地の発展ではなく、「政治、法律、社会の万般の制度および思想に、デモクラチックの改革を行ったことにある」(『東洋時論』「評論」)と述べる。私は石橋の議論に強く共感する・・・
・・・私は国連大使として国連で世界の紛争に関する議論に参加し、また国際協力機構(JICA)理事長として、途上国の発展に関わっている。その度に痛感させられることは途上国の発展の難しさである。
紛争を起こさず、あるいは収束させ、国家的統合を維持し、経済的、社会的、政治的に発展していくことがいかに難しいか。経済発展はできても、そこから民主主義へと発展していくのは極めて難しい。
したがって、多くの途上国にとって、非西洋から先進国になり、自由、民主主義、法の支配といった近代的諸価値と伝統を両立させている日本という国は、まぶしいようなすごい国なのである・・・