アメリカの反知性主義

朝日新聞8月18日オピニオン欄、アメリカ外交問題評議会上級研究員、マックス・ブートさんの「米共和党 愚かな党のふり、現実に」から。
・・・1950年代には、民主党の大統領候補だったスティーブンソンは「エッグヘッド(はげ頭の知性派)」、共和党の大統領候補だったアイゼンハワーは「まぬけ」、という図式が定着した。この見方は、リチャード・ホーフスタッターの「アメリカの反知性主義」でお墨付きを得た。
民主党は米国の知性派の代弁者だという印象が固まるなかで、共和党員は、政治目的のために、反知性のレッテルを受け入れた。だが、少なくとも最近まで、それは、見せかけのものだった。アイゼンハワーは安全保障問題に比類なき知識を持ち、レーガンは無能な役者に見えて、何十年も公共政策を磨き、演説原稿を自分で書き続けた。ニクソンはキッシンジャーらハーバード大学教授に内外の政策を託した。
レーガン政権時代、共和党は、アメリカンエンタープライズ研究所やヘリテージ財団のような保守系シンクタンク、ウォールストリート・ジャーナル紙、コメンタリー誌などを効果的に活用し、「政策政党」として知られるようになった。
だが、共和党と政策分野のつながりは徐々に弱まっている。かつてはアービング・クリストルやジョージ・ウィルなどの思想家が果たしていた役割を、ラジオトーク番組の司会者やテレビタレントが担うようになった。見境なく、軽率で、すべてを消耗させる怒りの感情が真っ先に漂うようになった・・・