内閣府が、「東日本大震災における原子力発電所事故に伴う避難に関する実態調査」を公表しました。東京電力福島第一原子力発電所事故の際、住民の避難誘導が適切に行われませんでした。今後の教訓とするために、大規模な住民アンケートと関係機関へのヒアリングがされました。住民アンケートは、対象者が約6万人、回答者が2万人です。調査結果概要や結果を見ていただくと、当時の混乱した状況がわかります。
3月11日当日に複数回出された避難指示を入手した住民は、2割未満です。停電したりして、周知の方法が限られたのです。避難指示を聞いても、どこに避難したらよいかわからなかった、何が起きているかわからなかった住民が多いのです。どこに避難してよいか情報がなかった住民は、6割に達しています。4月末までに避難所を5か所以上転々とした住民が2割います。さらに、5月以降でも2か所以上を移動した人が5割以上います。
関係機関へのヒアリングでは、次のような回答があります。
・全町避難を想定した防災訓練は全く考えられてこなかった。
・大規模な住民の移動、患者の移動という想定はなかった。
・基本的に受け入れ先を探しながら避難・移動するという形だったので、それがきつかった。
・身体麻痺等で寝たきりの患者等をバスで搬送するのは無理であった。
・皆パニック状態で、高齢者や要介護者を優先するという措置までは採れなかった
このような調査は、原子力災害対策本部、その実務を担う経産省原子力安全・保安院がもっと早く行うべきものでしょうが、原子力安全・保安院が廃止されたので、内閣府防災担当が実施したようです。
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アメリカの3大・大統領
吉松崇著『第格差社会アメリカの資本主義』(2015年、日経新聞出版社、日経プレミアシリーズ)。著者は日米の金融機関に勤めた人で、アメリカの新しい富裕層=金融界でとてつもなく儲ける人を紹介しています。低所得者層について書いた本ではありません。それはそれで勉強になるのですが、ちょっと違った点を紹介します。p141。
・・・普通のアメリカ人に「歴代大統領の中で、偉大な大統領は誰か?」と尋ねると、ワシントン、リンカーン、セオドア・ローズベルトの3人の名前は必ず出てくる。4人目となるとフランクリン・D・ローズベルトか、アイゼンハワーか、ジョン・F・ケネディか、はたまたロナルド・レーガンか、このあたりは人それぞれの政治的立場により様々であり、コンセンサスはない。
ワシントンは言うまでもなく独立戦争の英雄である。リンカーンはアメリカの分裂を回避して奴隷解放を成し遂げた功績、そして、セオドア・ローズベルトは今日に至る現代アメリカの背骨を形成した人だからだ・・・
不安を取り除く
毎日新聞「坂村健の目」12月17日「ベビースキャン」から。
・・・11月下旬の英国のテレビ番組「BBC WORLD」で福島県の子どもたちの内部被ばくを測定できるホールボディー(全身)カウンター「ベビースキャン」の測定結果が紹介された。3台が福島の病院に設置され、約2700人の小児、乳幼児を測定した結果、全員から放射性セシウムが検出されなかったという。
この装置は東京大学大学院の早野龍五教授(原子物理学)が中心となって、海外製のホールボディーカウンターを改造したもの。うつぶせ姿勢で、不安をあたえずに4分間測定できる・・・
・・・実は、一緒に生活する母親のデータから高い精度で子供のデータも推定できる。不検出の結果も予想されており「科学的には不必要」とも言われていた。しかし直接「測れない」ということを「わからないから怖い」と言い換える人たちがいる。いわゆる「悪魔の証明」に対抗するには、全ての場合について地道にデータを積み上げるしかない。
早野先生が偉いのは、母親たちの不安を「科学的に必要ない」と切り捨てず、測れないデータを一つでもなくすために地道に努力していることだ・・・
・・・しかし、発表姿勢としては弱いのか、ベビースキャンの結果も日本では10月初めに発表されたのに、残念なことに取り上げた日本メディアは非常に少なかった。事態がわからないときに、非常ベルを鳴らすのはマスコミの立派な役割。しかし、状況が見えてきたら解除のアナウンスを同じボリュームで流すべきだ。大震災から5年近く。早野先生を含む多くの方々の地道な努力で、データは着実に積み上がっている・・・
五百旗頭先生、大災害、連載
五百旗頭真先生の毎日新聞連載「大災害の時代」最終回(1月17日)は、「三つの問い 列島での安全のために」でした。
・・・本連載の最終回を迎えて、三つのことを書きたい。第一には、単なる復旧か、創造的復興か、国費をもって支えるのは公的機能のみか、私有財産や個人の生活復興までを対象とするかという問題である。第二には、現在、津波常襲地の三陸沿岸を中心に、安全なまちづくりが力強く進行しているが、それがもたらす帰結についてである。第三には、東日本大震災以後の「次なる大災害」の問題である・・・
・・・阪神・淡路大震災において、・・・いくつか意見の相違が残った。知事が創造的復興の旗を掲げたのに対し、中央政府は「後藤田ドクトリン」と呼ばれた限界を設定した。国費は旧に復するためまでであり、新たなよきものは地元の財源でやれ、被災地だからといって焼け太りは許されない。また「法体系の整合性」を中央官庁は説き、被災者個人の生活再建に国費を投ずることを認めなかった。
しかし結局は、被災地の主張が東日本大震災までに認められることになった・・
・・・偉大なる安全化が進行する中、不安がよぎるのは、人口減少の社会動向であり、とりわけ被災地で進む少子高齢化である。人々を全国から引き寄せる魅力と活力をいかに築くかが、今後の最重要課題となろう。
一部には、速やかなにぎわいの回復のため高台移転などせず、海辺に住居と商店街を直ちに再建し、津波から逃げることを徹底すればよかったとの意見もある。しかし安全・安心感覚の進んだ今日、津波危険地域に住み続けたい人は多くなく、人口減少を加速する要因ともなろう。海辺の便利に慣れるとすれば、これまでと同じ悲惨の繰り返しになりかねない。安全性と魅力の両立を図る以外にないと大悟すべきである・・・
明るい公務員講座、5
連載第5回が、発行されました。今回は「資料で説明を」です。考えがまとまったら、そのまま上司に説明していませんか。傾向と対策を考えずに説明に行くのは、無防備です。内容は、次の通り。
岡本のイエローカード。報告の上げ方、3つの準備。必要最小限の資料。準備は万端、自信を持って。