五百旗頭先生、大災害、連載

五百旗頭真先生の毎日新聞連載「大災害の時代」最終回(1月17日)は、「三つの問い 列島での安全のために」でした。
・・・本連載の最終回を迎えて、三つのことを書きたい。第一には、単なる復旧か、創造的復興か、国費をもって支えるのは公的機能のみか、私有財産や個人の生活復興までを対象とするかという問題である。第二には、現在、津波常襲地の三陸沿岸を中心に、安全なまちづくりが力強く進行しているが、それがもたらす帰結についてである。第三には、東日本大震災以後の「次なる大災害」の問題である・・・
・・・阪神・淡路大震災において、・・・いくつか意見の相違が残った。知事が創造的復興の旗を掲げたのに対し、中央政府は「後藤田ドクトリン」と呼ばれた限界を設定した。国費は旧に復するためまでであり、新たなよきものは地元の財源でやれ、被災地だからといって焼け太りは許されない。また「法体系の整合性」を中央官庁は説き、被災者個人の生活再建に国費を投ずることを認めなかった。
しかし結局は、被災地の主張が東日本大震災までに認められることになった・・
・・・偉大なる安全化が進行する中、不安がよぎるのは、人口減少の社会動向であり、とりわけ被災地で進む少子高齢化である。人々を全国から引き寄せる魅力と活力をいかに築くかが、今後の最重要課題となろう。
一部には、速やかなにぎわいの回復のため高台移転などせず、海辺に住居と商店街を直ちに再建し、津波から逃げることを徹底すればよかったとの意見もある。しかし安全・安心感覚の進んだ今日、津波危険地域に住み続けたい人は多くなく、人口減少を加速する要因ともなろう。海辺の便利に慣れるとすれば、これまでと同じ悲惨の繰り返しになりかねない。安全性と魅力の両立を図る以外にないと大悟すべきである・・・