昨日の続きです。
・・・ただし、被災者にリスクの許容を求めるだけでは、だめだと思います。それぞれが考え方や生活の条件が違うので、避難生活を余儀なくされたすべての人に、公的な支援による移住の選択肢をつくることが必要です・・・
「提案への反響は」という問に対しては。
・・・国や行政は政治的な問題から何も言えないようです。市民団体は「リスクを許容させるなんてけしからん」と。ある専門家は「非常に有害」と批判してきました。これに対し、私は「除染を徹底するほど被災者は帰れなくなりますが、それはどう考えていますか」と問いかけましたが、返事が来ません。別の側面を考える習慣がないのでしょう・・・
月別アーカイブ: 2015年8月
中西準子先生、早期帰還目指し線量の見直しを
東京新聞8月23日「あの人に迫る」は、環境リスク学者の中西準子先生でした。
「なぜ除染と帰還の目標に、国が長期に目指すとしている放射線追加被ばく線量の年1ミリシーベルトより高い、年5ミリシーベルトを提案したのですが」という問に。
・・・私は、原発事故の被災者一人ひとりが今後の人生を決めていくことを念頭に考えました。現状では判断材料が乏しい。簡単に除染できないことが既にわかっているので、1ミリシーベルトを帰還の目標にすると、ほとんどの人がいつ帰れるのか分からないのです。
だから、被災者の人生の大切な時間が奪われないよう、なるべく早く帰れるような条件と根拠を探りました。学業や就職など人生の一区切りを15年とし、期間後に1年間住んでも積算で100ミリシーベルトを超えず、その間に自然減で年1ミリシーベルトになるという条件を設定しました・・・
・・・一方、現実的な除染を考えると、年5ミリシーベルトなら数年内の目標として可能です。この値なら、自然減を加味すると15年間の積算線量は100ミリシーベルトを大きく下回ります。このリスクは、私たちが日常的にさらされている化学物質のリスクと比べても大きくありません・・・
・・・除染の目標を徹底的に下げれば、放射能のリスクが下がるから良いように思えますが、逆に、いつまで経っても帰れません。
その間に、被災者の生活や人生設計が破壊されるリスクを考えないと。一つのリスクを無理に減らすと、別のリスクが大きくなる。これをリスクトレードオフといいます。
水道水の塩素消毒では発がん性物質ができますが、感染症を防ぐために、そのリスクを私たちは受け入れています。大気中の発がん性物質も環境基準として一定程度認められているのは、自動車や産業活動を止めるわけにはいかないから。互いにバランスをとって生きましょうという考え方です・・・
自治体学会、災害からの復興
8月22日は、自治体学会(奈良市)第5分科会「大災害からの復興を実践から考える」パネルに出席してきました。金井利之・東大教授、更谷慈禧・十津川村長、坪井ゆづる・朝日新聞東北総局長、山口一史・ひょうご・まち・くらし研究所常務理事さんらと、突っ込んだ議論ができました。
災害時での救助や、その後の復旧・復興は、自治体の能力が問われる場です。国の指示や外国の先進事例より、日本の自治体が一番進んでいて、事情をよく知っているでしょう。ただし、経験のある自治体です。避難所の運営、被災者への支援、仮設住宅建設、新しいまちづくり、住民の意見の集約、コミュニティの維持と再建など。自治体行政の最先端だと私は考えています。課題は、さらに改善することと、経験のない自治体にどう勉強してもらうかです。
集団移転先初の夏祭り
8月23日の河北新報が、宮城県山元町の新山下駅前の新市街地で、集団移転先での夏祭りが行われたことを伝えています。よいコミュニティができると良いですね。
鎌田浩毅先生、書評
8月23日の日経新聞読書欄、「今を読み解く」は、鎌田浩毅・京都大学教授の執筆「活動期迎えた日本の火山」でした。先生は、ますますご活躍です。