渡邊啓貴著『現代フランス 栄光の時代の終焉、欧州への活路』(2015年、岩波現代全書)が、勉強になりました。日本を代表するフランス研究者による、ミッテラン大統領以来30年の、フランス政治、社会の分析です。一つの国の30年を270ページに盛り込むのは、大変な労力と技が必要です。先生が、ずっとフランスと併走してこられ、その都度に論文を書いてこられたからこそできることです。
日本で同様に、この30年間を300ページの本に凝縮しようとしたら、どうなるでしょうか。誰ができるのでしょうか。細部にわたる事実と理解、そして大胆な割り切りがないと書けません。そして論文の善し悪しは、その切り口が切れ味がよいかどうかで決まります。年表の記述をいくら詳しくしても、よい論文・分析にはなりません。
先生の分析では、フランスのこの30年は、副題にあるように、栄光の時代の終わりであり、EUへの統合です。しかし、単線的に進んだのではありません。国内の社会経済状況に規定され、国際的環境がフランスをそこに追いやります。他方で、リーダーも意図しつつあるいは抵抗しつつ、その流れに乗っていきます。乗らざるを得ないのです。この項、続く。
月別アーカイブ: 2015年7月
岩井克人先生の研究の軌跡、3
先生が、ものごとの根源まで遡って考えた例として、貨幣と法人があります。
貨幣がなぜ通用するかについては、商品説(特定の物、例えば金(ゴールド)に対する、人の欲求に支えられているとする考え方)と、法制説(政府の命令によるとする考え方)が有名です。しかし先生によると、あるモノが貨幣として使われるのは、「貨幣として使われているから貨幣である」という「自己循環論法」です。これも、なぜそうなるのか、本をお読みください(p223)。
法人については、単なる企業と法人とは何が違うか。企業は所有者(オーナー社長)が、企業の資産・商品を自由に処分できます。それに対し法人の場合は、株主が会社を所有しますが、会社が会社の資産や商品を所有しています。株主は、会社の資産を所有していませんから、自由には処分できません。これを、先生は「2階建て構造」と呼ばれます(p288)。
「企業は誰のものか」。株主のものか、経営者のものか、従業員のものか。これらの議論が、2階建て構造で明快に説明されます。企業統治の場合は、オーナーと経営者との関係は、委任契約になります。それに対し、法人会社での統治は、会社の経営者は株主との間で委任契約を結んでいるのではなく、会社との間で信任関係にあります。企業の経営者はオーナーの指示に従う必要がありますが、会社の経営者は株主の指示に従うのではなく、会社に対し責任を負うのです(p349)。詳しくは、これも本を読んでください。
新しい東北、若い人への宣伝
7月18日に、ニコニコ動画と復興庁が共催で、「ニコニコ町会議全国ツアー2015in岩手県平泉町」を、岩手県平泉町で開催しました。その記録。
竹下大臣と復興庁職員が参加(視察)しましたが、いつもの「客層」とは、勝手が違ったようです。職員に聞くと、「新しい東北を広く理解してもらうには、違った人たち特に若い人に宣伝する必要がある。復興庁が自前でやると、大変な予算が必要だ。このような若い人に人気のある媒体と共催するのは、安くて効果が大きい」とのことです。
玉浦西地区まち開き
19日に、岩沼市の集団移転先である、玉浦西地区で「まち開き」が開かれました。「NHKニュース」「河北新報」。
このホームページでもたびたび紹介しているように、沿岸部で津波被害にあった6地区が、約3キロ内陸部に集団移転しました。150戸の戸建て住宅と、210戸の災害公営住宅ができあがっています。写真で見ていただくとわかるように、きれいな戸建て住宅が整然と並んでいます。約1000人が、引っ越します。近くに小中学校があり、隣接してスーパーマーケットも開店しました。
元いた地区ごとに街区をつくり、お隣同士が「見える」ような住宅と庭の配置になっています。これだと、新しくコミュニティを作る苦労が小さくなります。
暑中お見舞い
日本各地で梅雨が明け、真夏の暑さに見舞われています。この3連休を、お元気でお過ごしでしょうか、それとも、暑さに参っておられるでしょうか。
小生は、ホームページに書いたとおり、1日目は目一杯仕事。実は、金曜日から鼻風邪を引いて、やや元気がなかったのです。視察同行と講演会は何とかやり遂げたのですが、気力だけでは風邪は治らず。金曜日に次官室に訪ねてきた屈強な後輩と新聞記者に、「あげるわ」といって風邪を「うつした」はずだったんですが、効果なし(ひどい話です)。
聞くと、今年の夏風邪は、ひどくはならないが長引くとのこと。そこで2日目は、家でごろんごろんして、風邪を治すことに専念しました。とはいえ、夕方から「異業種交流会」を設営してあったので、出撃。行った甲斐があり、成果がありそうです。
今朝になって、ほぼ風邪は抜けたので、書類整理など。講演会の速記録が2つも届いているのですが、いつもながら加筆するのがいやになります。一つには、私がしゃべった日本語のできが悪く、文章にするのに手間がかかるのです。もう一つには、速記者と主催者が見出しを入れたり、要約してくださっているのですが、「え~、こんな趣旨にとられているんだ」とがっかりします。しゃべった本人に、責任があるのですが。
あっという間の、3日間でした。楽しく過ごすためには、健康が第一です。風邪だったのか、暑さに負けたのか、わかりませんが。