1月16日の読売新聞連載「教訓阪神大震災20年」第5回は、「企業支援、脱付け焼き刃」でした。阪神大震災の際にはなかった、中小企業の復旧支援制度が紹介されていました。これは、東日本大震災に際して、経済産業省中小企業庁が作ってくれた制度です。「グループ補助金」と略称しています。被災企業が複数で共同して事業復興計画を作り、地域の復興に貢献すると認められると、施設設備復旧費の4分の3の金額が国費で補助されます。これまでに、約1万社がこの補助を受けています(最近の採択例)。かつては、「民間企業は、自己責任で事業を行うもの」というのが「行政の哲学」でした(どこにも書いていない不文法でしょうか)。よって、儲けも損も、会社次第。災害があっても、政府は緊急に低利融資を行う程度でした。今回の大震災では、大きく転換して、被災企業の復旧を国費で支援しています。その代表がこの補助金です。また、工場や店舗を無料で貸し出すこともしています。
記事には、次のように書かれています。
・・過去の災害での中小企業支援は、低利融資が関の山だった。グループを「地域復興のリード役」とみなし、公費を民間企業に直接投入する大胆な試みは、震災後に急きょ検討され、3か月足らずで打ち出された・・
私も、この英断に驚きました。何度も繰り返しているように、インフラや住宅が復旧しただけでは、町の賑わいも地域の生活も戻りません。働く場や商店が必要なのです。都会で、店を開けばお客がたくさん来て儲かるところなら、民間企業の自主性に任せておけばすみます。しかし、過疎地では、高齢化した店主が事業再開をあきらめる場合も多いのです。
これまで、グループ補助金に使った総額は、1万社に対し、4,500億円です。これによって、再開した工場で働くことができ、町の賑わいが戻り、再開した商店で買い物ができるのです。これをしなかった場合の失業者や生活保護の増加といった「財政の損得勘定」だけでなく、金銭評価できない、家族の喜び、町の賑わい、暮らしの便利さにも大きな効果がありました。関係者からは、「ヒット作」と評価されています(もちろん、何でも国費で支援すればよいといったものでもありません)。
的確な記事を書いていただき、ありがとうございます。インターネットで読めないことが残念ですが。