朝日新聞9月12日オピニオン欄は、「ピケティ論争、格差は宿命か」でした。フランスの経済学者トマ・ピケティ教授の著書『21世紀の資本論』が、世界中で議論を呼んでいるとのことです。資本主義の下で経済的不平等が進む、という主張です。
稲葉振一郎・明治学院大学教授
・・そもそも、なぜ不平等がいけないのかを考える必要もある。格差と成長の関係を考える場合、「レベリングダウン問題」というものがあります。全体の賃金水準を下げながら格差を縮めるという考え方は採用に値するか、ということです。みんなが平等に貧乏になるという政策は本当に正当化できるのでしょうか。
平等主義の本来の目的は、不平等な社会で困っている人や弱者を助けることです。でも、手段はいろいろある。平等主義はそのひとつにすぎず、困っている人を助けることと同じではない。重要なのは平等ではなく、全員がある最低水準をクリアしていることだという考え方もある。むしろこちらの発想のほうが現実の制度づくりには直結してくるかもしれません・・
大竹文雄・大阪大学教授
・・私たちはできることから始めるべきです。まず、リーマン・ショック時に発覚したような、常識外に高い報酬を経営者たちに取らせないよう、株主や市場が経営監視を強めることです。格差拡大を一定程度和らげることができます。
加えて、日本で喫緊の課題は教育支援です。大学など高等教育機関へ進む道は、資産のない家庭の子どもたちにも同等に開かれなくてはなりません。子どもたちは将来のイノベーションを担う成長の糧です。高等教育を受ける機会を一定の所得層に限定してしまう状況になれば、日本そのものの成長余力が損なわれてしまいます。
競争の機会を等しくするような教育支援は、福祉的な観点から必要なだけではありません。技術革新を促して生産性を高め、社会の持続可能性を維持するためにも欠かせない投資なのです・・