ビル街の竹林

7月10日の日経新聞アートレビューが、きれいな写真付きで、「竹の居場所」を取り上げていました。虎ノ門ヒルズのビル内に、小さな竹林があるのです。このほかにも、東京では、六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、日本橋三井タワー、秋葉原クロスフィールドにもあるそうです。首相官邸の中庭にもあります。
ビルの中やビルの谷間に、竹林があると、オヤッと思いつつ、何かしら落ち着いた感じがします。竹は、和風建築には欠かせませんが、コンクリートの洋風建築には、違和感がなきにしもあらずです。それを、どのように調和させるか。建築家の腕の見せ所なのでしょう。竹林を使い出した、ランドスケープ・アーキテクトの三谷康彦さんは、「竹林には日本的な空気が流れている。まっすぐ立つ様は潔い」と述べています。
記事によると、これらの竹は、すべて同じ場所で育ったのだそうです。宇都宮市の若山農場です。なぜ、ここの竹が使われるか。背が低いのです。だから、狭い空間でも使いやすいのです。もっとも、かつて関係者に聞いたところ、ビルの中で竹を育てるのは、結構手間がかかるのだそうです。

メディア界の焼き畑農業

7月13日の朝日新聞広告欄のインタビュー「仕事力。手嶋龍一が語る仕事、第3回」から。手嶋さんは元NHK記者です。このホームページでは、『1991年日本の敗北』(1993年、新潮社)の著者として紹介しています2008年1月11日
・・メディアの世界は大きな出来事が向こうから押し寄せてきます。まじめな若者ほど全力を出し切ってニュースに立ち向かう。早朝から深夜までデスクの指示を真に受けて働き詰めです。これではくたびれるだけでなく、知的にも油が切れてしまう。そう「メディア界の焼き畑農業」なのです。でも日本では、干からびると早速前線から放り出してしまう。ジャーナリストがこれほど若くして現場を離れる国は見たことがありません・・
このインタビューには、湾岸戦争開戦前夜、ブッシュ大統領に同行してサウジアラビアに行った際の、ワシントン・ポスト記者の働きぶりも載っています。お読みください。

徒然草

今日は、サントリー美術館の「徒然草展」に行ってきました。先日に行ったキョーコさんが、「よかったわよ。勉強になった」とのことなので。
なるほど、勉強になりました。木登りの名人、榎の僧正、石清水に参る仁和寺の僧など、昔習った文章が出てきました。
徒然草って、江戸時代にも、たくさんの人に読まれていたのですね。3大随筆といわれていますが、処世訓として重用されたのでしょう。そして、絵巻物で読んだのですね。文字だけの冊子より、親しみがわきます。
記録に出てくるのが、書かれてから100年後で、兼好法師が書いたとは、実のところわからないのだそうです。初めて知りました。
このような展覧会の度に思うのですが、昔の人は達筆ですね。読めませんし、我が悪筆を振り返り、恥ずかしいです。でも、兼好法師は、「手のわろき人の、はゞからず、文書き散らすは、よし」(第35段)と言っています。
もっとも、「自分のことばかりしゃべる奴はダメ」とも言っていますが(第56段)。

企業と社会

田久保善彦・グロービス経営大学院研究科長の「企業経営から見たCSR」(7月11日)の続き。
・・日本企業のこれまでのカギ括弧付きのCSRの特徴として、環境対応とコンプライアンスの二分野への重点が置かれすぎてきたことが挙げられる。過去の公害問題という苦い経験から、特に日本の製造業の環境対策は世界的にみてもトップクラスであり、それ自身は非常に素晴らしいことである。また、コンプライアンスが守られなければその企業は社会的に抹殺され存在する事すらできないため、その企業の価値発揮の根源である生業の発展と、ここを重視するのは基本中の基本である。
更に最近では、各種のNPOやNGOへの資金的支援や協業の実施などを、強く志向する企業も多く出てきている。これも、様々な種類の主体が活躍する環境を整えるという観点から一般的には喜ばしいことであるが、支援活動自体が目的化してしまっているようなもの、また目的意識や当該企業の活動内容との関連性などが希薄なものなども散見される。
しかし、このように、特定の分野への対応のみがフォーカスされた結果、近年のグローバル社会からの要請に応え切れていない部分があることも否めない。例えば、海外における二次受け、三次受けの労働管理などに関しては、日本企業は課題を指摘されることも少なくない・・
ポスト他著『企業と社会―企業戦略・公共政策・倫理』上下(邦訳2012年、ミネルヴァ書房)が、参考になります。目次を見ていただくと、企業が社会と、いかにいろいろな分野で関わっているかがわかります(上巻下巻)。

大阪の課題とは

今日の放課後は、旧知の関西の方との意見交換会。最近の情勢をお互いの視点から分析した後、関西の課題、10年後の大阪について議論しました。
私は、拙著『新地方自治入門』で、自治体が取り組まなければならない課題を、「役所内の課題」と「地域の課題」に分けて議論しました。行革や分権、役所の効率化は、市役所としては重要な課題です。しかし、住民からすると、暮らしが良くなって「なんぼ」です。自治体の効率化は、その手法なのです。
住民の安心など地域の課題はたくさんありますが、東京から見ると、関西・大阪の課題の第一は、「地盤沈下」をどうするかでしょう。関西復権は、経済界の復権です。東京都知事はそんなことは考えなくても良いのですが、大阪市長と府知事の一番の仕事は、10年後の関西経済の復権です。そしてそれは、役所だけではできません。どのように、経済界、マスコミ、住民を巻き込むかです。そして、4年や5年では出来ません。