(丸山真男著『政治の世界他十篇』、3)
今読んでも、古さを感じさせないのは、それは、時事的なものでなく、政治の本質を論じているからでしょう。古今東西、権力を巡る人間の行為は、さほど変わらないということです。ただし、現在の世界に生きている私たちとしては、その高度に抽象化された政治論や、政治権力論の上に、今の現実をどう変えるかという分析と実践が必要です。それが「政治学」特に抽象度の高い学問の、長所であり限界です。
この点については、本書につけられた松本先生の「解説」をお読みください。解説の中に、戦後日本の政治学における丸山先生の業績の位置づけとともに、次のような文章があります。
・・丸山の言う意味での「純粋政治学」を追求した戦後政治学の代表的作品は岡義達『政治』(岩波新書、1971年)であるが、理論的完成度の高い反面、観照的スタンスも著しく、この小著の洗練され(過ぎ?)た知的内容は今日政治学者の間でさえ十分に咀嚼されているとは言えない・・(P480)。
私は、1975年(昭和50年)に、大学3年生になり本郷の法学部に移りました(2年生までは、駒場での教養学部)。あまり深く考えずに、岡義達先生のゼミを選び、運良く入れてもらいました。政治学の授業とともに、このゼミで、1年間先生の指導を受けました。その抽象度の高い難解さを理解するまでの苦労、それ以上にきつかったゼミの苦労については、少し書いたことがあります(2012年12月8日)。しかし、社会をどう見るか、私の社会観の基礎は、この時に培われたことは間違いありません。また、今に続く生涯の友人を得ることもできました。