施政方針演説

今日1月24日、国会が開会され、総理の施政方針演説がありました。復興については2番目の項目、1は「はじめに」ですから、実際には第一番目の項目「創造と可能性の地・東北」として取り上げられました。
・・「創造と可能性の地」。2020年には、新たな東北の姿を、世界に向けて発信しましょう。
福島沖で運転を始めた浮体式洋上風力発電。宮城の大規模ハウスで栽培された甘いイチゴ。震災で多くが失われた東北を、世界最先端の新しい技術が芽吹く「先駆けの地」としてまいります。
3月末までに、岩手と宮城でがれきの処理が終了します。作付けを再開した水田、水揚げに湧く漁港、家族の笑顔であふれる公営住宅。
1年半前、見通しすらなかった高台移転や災害公営住宅の建設は、6割を超える事業がスタートしました。来年3月までに、200地区に及ぶ高台移転と1万戸を超える住宅の工事が完了する見込みです。やれば、できる。「住まいの復興工程表」を着実に実行し、一日も早い住まいの再建を進めてまいります。
福島の皆さんにも一日も早く故郷に戻っていただきたい。除染や健康不安対策の強化に加え、使い勝手のよい交付金を新たに創設し、産業や生活インフラの再生を後押しします。新しい場所で生活を始める皆さんにも、十分な賠償を行い、コミュニティを支える拠点の整備を支援してまいります。
東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策について万全を期すため、東京電力任せとすることなく、国も前面に立って、予防的・重層的な対策を進めてまいります。
力強いアーチ姿の永代橋。関東大震災から3年後、海外の最新工法を採り入れて建設されました。コストがかさむなどの反対を押し切って導入された、当時最先端の技術は、その後全国に広まり、日本の橋梁技術を大きく発展させました。
まもなく3度目の3月11日を迎えます。復興は、新たなものを創り出し、新たな可能性に挑戦するチャンスでもあります。日本ならできるはず。その確固たる自信を持って、「新たな創造と可能性の地」としての東北を、皆さん、共に創り上げようではありませんか・・

政治評論の役割、2

御厨先生の指摘を読んで、私は、アカデミズムとジャーナリズムの罪を考えました。もっとも、これは私のオリジナルではなく、多くの識者が指摘していることです。
これまで日本のアカデミズムは、海外の理想的な政治制度を紹介して、それを基準に日本の政治は遅れていると、国民を教育してきました。その際に、イギリスやフランス、アメリカでも、ここに至るまでにどのような経験と犠牲を払っているかを、捨象しています。そして、それらの国々でも、日々の政治の運用では、そんなに単線的にかつきれいに進んでいるのではないこと、利害対立が激しいことを教えません。
ジャーナリズムもまた、その理想を基準に、「日本の現実政治はダメだ」と批判します。それはある面必要です。しかし、「あれもダメ、これもダメ」と批判するだけでなく、「ここはダメだが、ここは良い」と指摘しないと、「全て悪い」では、改良と進歩がありません。また、理想に近づく道筋を指摘しないと、無責任です。
子育ても、部下職員の教育も同じでしょう。欠点をしかってばかりでは、子どもは育ちません。良いところを誉め、欠点は修正の方向を示す必要があるのです。
あわせて、政党の扱いが小さすぎると思います。日本は、議会制民主主義をとっているのですから、政党を通じて政策を実現するのが、正当な道です。すると、それぞれのテーマ・政策について、各党の主張を検証し、より正しいと思われる政党を支援することが必要でしょう。政党を誉め、批判して、育てることが必要です(官僚批判をしているだけでは、良い政治は実現しません)。

政治評論の役割

御厨貴著『馬場恒吾の面目―危機の時代のリベラリスト』(文庫版、2013年、中公文庫)を読みました。
馬場恒吾は、1875年生まれ、1956年死去。20世紀前半のジャーナリストで、昭和前半を独立した政治評論家として活躍しました。戦後は、読売新聞社長を務めています。
勉強になったか所を、引用しておきます、
・・「戦後」70年近くになるが、今や「政治評論よ、何処へ行く」の感を深くする。55年体制と自民党一党優位体制の確立は、まちがいなく政治評論を不毛にした。では55年体制の崩壊とその後の「政治改革」の20年は、どうだっただろうか。いやいっこうに政治評論ははかばかしくなかった。
55年体制下で紡がれたのは、ミクロな政局の叙述と、マクロな政治の展望との二つに集約される議論であった。ミクロとマクロのつなぎの部分が実はない。ジャーナリズム出身者による政治評論はミクロを得意とし、アカデミズム出身者によるそれはマクロに傾斜した。知らず知らずのうちに、相互不可侵の態勢ができあがり、自己満足以上の成果はなく、現実政治に影響力を与える筆の力はなまくらなまま打ち過ぎた。
政治構造の転換を余儀なくされたこの「政治改革」の20年も、小選挙区・二大政党制・政権交代の三題話に収斂する政治評論しかなかった・・(p3、文庫版まえがき。なぜ今、馬場恒吾か―政治評論の復活のために)
この項続く。

官民連携推進協議会

「新しい東北」官民連携推進協議会のホームページを作りました。被災地では、行政機関だけでなく、企業、大学、NPOも、復興に向けた取組をしています。この協議会は、これらの方々と情報を共有・交換し、関係者の連携を進めようとするものです。
ホームページには、会員によるさまざまな支援(資金助成、経営相談、起業支援、販路開拓支援、職員研修など)や、被災地での取り組み事例(事業支援、新しい試みなど)を紹介しています。
復興に際して、官だけでなく、民間が取り組んでいることをどう活用するか。何処にどのような取り組みや支援があるのか、それを取りまとめてお知らせすること。復旧だけでなく、それを超えた新しい挑戦に取り組むこと。これらを、インターネットという新しい道具を使って、情報提供と情報交換をしようとするものです。新しい行政の形だと、考えています。ご関心ある方は、ご覧ください。

新しい住宅の形

「新しい東北」住まいのこだわり設計事例集」を、復興庁のホームページで公開しました。これは、将来を見据え地域の課題を解決する工夫をした設計事例です。
例えば、岩手県大槌町の大ケ口地区公営住宅です。絵を見ていただくとわかるように、各家の南側に縁側を設置し、住民が自然と出会うようにしてあります。団地の入り口には、集会所と広場を配置してあります。既に完成しています。機会があれば、ぜひご覧ください。類例は、仮設住宅(例えば釜石市平田地区)でも、作りました。
これは、「新しい東北」で取り組んでいる、「高齢者標準による活力ある超高齢化社会」の例です。単に、元に戻すのではなく、日本の未来を見据えた試みをしています。東北は、過疎、少子化、高齢化、産業空洞化といった、日本の未来の最先端を進んでいるのです。
住宅も、数を作るのではなく、高齢者の住みやすいバリアフリーにすることはもちろん、孤立化しないための仕組みを埋め込もうとしています。もちろん、住宅の建て方だけでは、孤立化防止や豊かな老後は提供できません。これに合わせて、どのような人のつながり(サービス)を作るかが、次の課題です。皆さんの、お知恵を待っています。