11月4日の日本経済新聞法務欄「不作為型の不祥事、教訓は」は、経営陣が問題への適切な対応を怠ったために危機に直面する「不作為型の不祥事」が続発していることを取り上げていました。JR北海道(線路の異常か所の放置)、みずほ銀行(暴力団への融資を放置)、カネボウ化粧品(化粧品による病状発生を放置)、高級ホテルでの長期間の食材偽装などです。問題は、事故や事件が起きたことではなく、それを放置していた経営者の対応と責任です。
長友英資・元東京証券取引所最高自主規制責任者:最近の(やるべきことをやらなかった)不作為型不祥事の原因は、危機の芽に対する経営トップの感度が低すぎることだ。単に組織とルールを整備するだけのコンプライアンスでは解決しない。問題のきっかけをつかむ情報を「部下が対処すべきこと」と考え、経営者が自らの問題だと判断できなかったのだろう。
みずほ銀行はコンプライアンス担当執行役員を更迭したが、違和感を覚えた。資料が膨大で問題の部分に意識を向けられなかったというが、膨大な情報の中からリスクをかぎ分けるのが経営者の能力であり責任だ。
浜田真樹・日本公認不正検査士協会理事長:企業は同じような能力・背景などを持った人材の集積度合いが高いほど、業務成果が上がる。一方で、反対意見を排除したり情報収集に偏りが出たりして、誤った方向に進みやすくもなる。
視野が狭まった組織の暴走を防ぐには、最終的にはリーダーの力しかないとされる・・ネガティブな細かい情報でも把握して議論できる組織を整えるのは経営者の責任だし、その経営者を外部の眼で監視する仕組みも必要だ。
増田英次・弁護士:・・コンプライアンスそのものを目標とせず、企業理念の実現や目標達成の過程の中に法令順守や問題点の発見を含むことだ。前向きな作業の中に位置づけなければならない。今のコンプライアンスは、あまりに無味乾燥。大切なのはルールではなく、社員の意識と企業風土を変えることだ。社員の仕事に対する情熱や喜びのような「感情」を軽んじたコンプライアンスは決して成功しない。
長友氏:・・過去の判例でも、取締役が「知らなかった」ことの責任を問われ得ることは明確だ。日本野球機構の統一球問題ではコミッショナーが「昨日まで(仕様変更を)知らなかった。不祥事ではない」と言ったが、本来は大いに恥ずべきことだ。
増田氏:重要なのはコミュニケーションだ。不祥事が起きる組織では上司と部下がうまく意思疎通できていない。組織が目指す理想の将来像を社員が共有することに力を入れるべきだ・・
詳しくは原文をお読みください。