日経新聞6月19日の経済教室、八田達夫先生の「特区で岩盤規制打破を」から。
・・成長戦略には、①特定の産業を政府が選んで成長のために補助金をつける方策と②経済全体の新陳代謝を良くするための規制改革とがある。安倍首相がこのうち規制改革を成長戦略の理念として選択した意義は極めて大きい・・
成長は必ず衰退を伴う。同じ産業の中でも新しい工夫をした事業者が入ってくれば、既存の事業者は出て行かなければならない。新しい産業が生み出されれば、古い産業は衰退しなければならない・・
しかし経済成長がある程度進んだ段階では、既得権を持つ成熟産業は新産業の成長を止めようとする。そのために既得権集団は、様々な口実をつくり、政治家を使って、参入規制を法制化する。参入規制は、新陳代謝を阻害し、成長を止める最大の要因である。だからこそ、参入規制の撤廃が成長戦略の一丁目一番地なのである・・
(この後、先生は例として、農業、医療、美容師を挙げておられます)
・・これらの参入規制は「岩盤」と呼ばれている。岩盤はマグマのように強い力を持った制度が生み出している。
その第一は、国家公務員制度である。エリート官僚は定年よりはるか以前に退職しなければならない。このため、官僚達は自分だけでなく先輩や後輩の退職後の就職先のことを考えながら行政を行わざるを得ない。必然的に、産業や企業の既得権を維持する規制強化の手助けをする。定年まで退職せずに働けるような国家公務員制度改革を行えば、省益を守る動機は大幅に低下するであろう。公務員をいじめるのではなく、公務員が省益を考えなくても済む制度を設計する必要がある。
第二は、労働の流動性を極端に下げている日本の雇用法制である。年功序列と終身雇用の組み合わせという戦後日本に独特の雇用制度の下では、若い人は自身の生産性よりも低い賃金をもらい、年配者は自身の生産性よりもはるかに高い賃金をもらう。若い人には、賃金が生産性を超える年齢に達するまで企業を去るインセンティブがない。一方で年配者をその賃金水準で雇おうとする他社はない。このため日本では労働の流動性が低く、自社にしがみつく。そのような従業員を抱えた日本企業には、競争的な新企業が参入することを防ごうとする強い動機が発生する・・