ニクソンとキッシンジャーとヘイグ、その2

ウッドワードとバーンスタインの『大統領の陰謀』は、2人の若き新聞記者が、民間ビルへの不法侵入事件をきっかけに、大統領による盗聴ともみ消し工作を追い詰めていく記録です。権力(政府)からの圧力に耐え、他方、内部通報者の協力を得て、事件を明らかにしていく過程は、スリリングです。
もう一冊の『最後の日々―続・大統領の陰謀』は、ウォーターゲート事件が明るみに出て以降の、ホワイトハウス内での葛藤を描いたものです。「続」とついていますが、描き方、手法が全く異なります。前著は、2人が主人公の「日記」です。後著は、事件後の関係者への取材による「記録」です。
『続』にあっては、ホワイトハウス内の当事者が、ここまでしゃべるのかと、いささか驚きます。もちろん、著者の取材力と、当時のこの事件の大きさによるところもあるでしょう。
まず、大統領と法律顧問との葛藤が描かれます。そして、追い詰められても、辞任を認めないニクソン大統領と、ホワイトハウス内の側近たちの動きが、生々しく描かれています。最後は、孤独な権力者の「弱さ」が、痛々しく感じられます。
その間、国会議員らが大統領に辞任を迫ると、逆に意固地になることを恐れ、いろいろな手を打ちながら、大統領を導いていくヘイグ首席補佐官。彼は他方で、フォード副大統領への政権移行を準備します。その意味で、後半の主人公は大統領であり、ヘイグ補佐官です。
当時、ニクソン大統領は大統領職6年目、まだ61歳です。ヘイグ補佐官は50歳、キッシンジャー国務長官は51歳です。
ヘイグ補佐官はその後、レーガン政権で国務長官を務めます。レーガン大統領が銃撃を受け、病院に運ばれました。その際の、発言が有名です。記者会見で、「私がここを統制している」 “I am in control here” と明言します。これは、責任者が欠けた場合の「危機管理」として名言です。
”Constitutionally, gentlemen, you have the President, the Vice President, and the Secretary of State in that order, and should the President decide he wants to transfer the helm to the Vice President, he will do so. He has not done that. As of now, I am in control here, in the White House, pending return of the Vice President and in close touch with him. If something came up, I would check with him, of course”(
WikipediaAlexander Haig