古くなりましたが、9月28日に、内閣官房の社会的包摂推進室が、「社会的排除にいたるプロセス~若年ケース・スタディから見る排除の過程」という調査報告書を公表しています。
この調査は、「現実に発生している様々な社会的排除状態に至る過程を、個々の人々のライフコースを追うことによって把握していく手法を採っている。いわばミクロの視点からの調査」です。
そこには、高校中退者(学校からの排除)、ホームレス(ネットカフェ等で生活する者も含む広義のホームレス)(住居からの排除)、非正規就労者(就労からの排除)、生活保護受給者(貧困)、シングル・マザー(機会からの排除)、自殺者(生からの排除)、薬物・アルコール依存症(機会からの排除)が取り上げられています。
社会的排除は、誤解を恐れずに言い換えると、「人生の挫折」というとわかりやすいと思います。単なる貧困(生活保護の対象)ではなく、社会で生きていく力を失った人たちです。
「人生に挫折する人は、弱い人だ」「運が悪いのだ」と、多くの人は考えます。それは当たっています。しかし、私もあなたも、そこに陥る可能性があるのです。
中退者も非正規就労も一定割合発生するということは、誰もが陥る可能性があるのです。交通事故、高齢による寝たきりや認知症と同じように、あなたやあなたの家族にも、可能性があります。他人事ではありません。その際に、立ち直る人もいれば、本人だけでは克服できず、家族でも支えきれない場合があります。
「人生でのリスク」という観点で考えましょう。病気については健康保険を、高齢による働けないリスクには年金制度を用意しました。これらは1961年です。交通事故については、自動車損害賠償責任保険(自賠責)を作りました。1955年です。高齢による衰えを、介護保険によって支えるようになったのは、2000年のことです。
それらのリスクと同じように、社会で支える仕組みと意識が必要です。
年金は金銭給付です。健康保険はお金の心配なく医者にかかることができる制度です。介護保険も、少しの負担で介護サービスを受けることができる仕組みです。
しかし、「人生での挫折」の場合は、お金や病院では救えません。一人ひとりに、寄り添って支える仕組みが必要です。
誰もが、病院や介護サービスを知っているように、これらの挫折を支える仕組みを作り、わかってもらえるようにしなければなりません。
そのためには、次のようなことが必要でしょう。挫折した人や家族が相談に行くことができる場所、相談に乗る職員の養成、社会への広報、それらへの投資(予算の増額)と責任を持つ役所の明確化です。