今日は、東北大学公共政策大学院で残りの2コマを講義。先週出した「宿題」を、院生たちはよく考えてきていました。資料を作って、発表する院生もいました。私が悩んだ事例や、被災現場での具体事例を取り上げたので、院生たちも考えやすかったと思います。テーマの中には、結論が出ていないものもあります。講義が、理論や抽象論だけでは、おもしろくありません。実績を述べるだけでは、学生は頭を使いません。ということで、少し工夫しました。
まだまだお話しすることは、たくさんあります。次の機会に、お話ししましょう。
(補足)
今日の授業で紹介した資料は、次のページに載っています。
政府が取った新しい取り組み=復興庁HP「復旧・復興の政府の新たな取組について 」
復興庁での企業連携=企業連携のページ
復興庁でのNPO連携=ボランティア・NPO・公益法人等との連携のページ
内閣官房にある組織=組織図(知らない組織がたくさんあるでしょ)
私の官僚制論=「行政構造改革」(少し古いです)
新しい社会のリスク=「社会のリスクの変化と行政の役割」
田舎での暮らし(笑い)=『新地方自治入門-行政の現在と未来』のp18
月別アーカイブ: 2012年10月
ドイツでアフリカ沖の海賊裁判
10月21日の朝日新聞に、次のような記事が載っていました。
・・ドイツのハンブルク地裁は、19日、アフリカ東部ソマリア沖でドイツ船籍の貨物船を襲った海賊10人に禁固2~7年の判決を言い渡した・・海賊が訴追されたケニアが受け入れを拒んだため、ドイツで約400年ぶりの海賊裁判となった・・
政権交代に左右されない社会保障議論とシステム
10月20日の読売新聞解説欄は、石崎浩編集委員らによる「社会保障改革。国民会議、始動早急に」でした。
・・そもそも1年で出来ることは極めて限られている。政治的党派を超えて取り組んだ好例とされるスウェーデンの年金改革は、7年かけた・・だからといって、国民会議には何も期待しない、と突き放すべきではないだろう。改めて「社会保障改革の方向性を確認する」だけでも、重要異な意味があるからだ。
それを理解するには、政権交代をはさんだ議論の系譜を見なければならない。
野田政権が目指す社会保障・税一体改革は、自公政権で麻生内閣が設置した「安心社会実現会議」の路線を受け継いでいる。
それまでもさまざまな会議が提言を重ねてきたが、安心会議は与謝野馨・経済財政相(当時)が主導し、野党だった民主党のブレーン的存在の宮本太郎・北大教授をあえて中心メンバーに迎え入れたことで、大きな転換点となった。
そこで打ち出された方針の柱は、▽社会的助け合いを強化するための「公」の新たな担い手を育てる▽雇用を中心に据えて社会保障を全世代型に再構築する▽消費税で財源を確保する▽安心社会実現円卓会議を設置する―というもの。後に、鳩山政権が掲げた「新しい公共」、菅政権が唱えた「一に雇用、二に雇用」などを先取りしていた。
民主党政権に交代した後、宮本教授は改めて「社会保障改革に関する有識者検討会」の座長に就き、安心会議とほぼ同じ内容の報告書を出す・・
民自公3党が政権交代をはさんで合意形成した一体改革を円滑に実施していくためにも、国民会議を早急に設置し、地に足の着いた議論を始めるべきだ・・
宮本太郎・北海道大学教授は、次のように述べておられます。
・・戦後、日本社会は安定した雇用の確保を基軸とし、雇用と連携させて社会保障制度を構築してきた。そのかたちには、もっとプライドを持って良い。国民会議の議論では、改革課題と併せて、これまでの日本の社会保障から継承するべき理念も再確認し、与野党に提示する必要がある。
今の与野党は互いの主張をぶつけ合っているが、政権交代のたびに年金や医療のシステムがひっくり返るのでは、国民はたまらない。国民会議では、政権が交代しても揺らぐことのない土台を固める議論をすべきだ・・
記事には、2000年の小渕内閣での「社会保障構造のあり方について考える有識者会議」から、2011年の菅内閣での「社会保障改革に関する集中検討会議」まで、7つの会議が表に整理されています(麻生内閣での「安心社会実現会議」の記録)。
リーダー待望論は敗北主義
10月17日の朝日新聞オピニオン欄、米倉誠一郎・一橋大学教授の「リーダー要りますか」から。
「なぜリーダー待望論に反対なのですか」という問に対して。
・・僕だって、白馬に乗ったリーダーが現れて、ええいっとすべての問題を解決してくれたら、こんなにありがたいことはないと思います。でも、現実には、そんな人はいません。強いリーダー、カリスマのようなリーダーを待望するのは敗北主義・・
世界を見て下さい。アメリカのオバマ大統領はとても有能な人だし、ブレーンも悪くない。カリスマ性もあった。でも今度の選挙で再選できるかどうか、大変苦労していますね。フランスのサルコジ前大統領も、カリスマ性でリーダーになったけれど、再選できなかった。今は、一人のカリスマリーダーで物事が解決できる時代ではないのです・・
「震災後の日本では、強いリーダーを求めがちなような気がします。なぜだと思いますか」との問については。
・・簡単だからですね・・
誰か立派な人が現れて、任せてしまえれば簡単でしょ。情報を集めたり判断したりしなくていい。ついていけばいいわけですから・・
私は、リーダー待望論を、「水戸黄門主義」あるいは「水戸黄門病」と呼んでいます。テレビの時代劇「水戸黄門」では、8時40分頃になると黄門さんが出てきて、一挙に問題を解決してくれます。でも、世の中はそうならないので、ドラマの中でスカッとしているだけです。テレビの水戸黄門は放映が打ち切られたようですが、仮面ライダーにしろドラえもんにしろ、「スーパーマン」は、漫画かドラマの世界にしか出てきません。
リーダー待望論はまた、「お任せ民主主義」です。有能なリーダーや信頼に足るリーダーは、育てない限り出てきません。「新人だから期待できる」は、根拠のない無責任な話です。スポーツの世界にしろ、会社経営の世界にしろ、教育の世界にしろ、「新人だからやらせてみよう」というところはないでしょう。通常は、時間をかけて育てて、選抜して、「これなら使える」とわかった人を、責任あるポストに就けるのです。
「あの政治家はダメだ」「この政治家もダメだ」と言って使い捨てにしているようでは、政治家も育ちません。
被災地を元気づける番組
今晩のNHKテレビ「キッチンが走る」で、「震災からの再起にかける生産者~茨城、常陸太田市」を再放送していました。元の番組は、6月に放送したそうです。常陸太田市は茨城県北部にあり、北隣の福島県での原発事故による風評被害に遭っています。
番組では、震災以降、落ち込んだ消費を取り戻そうとがんばっている、農家の人たちを取り上げていました。採れた蕗(ふき)を市の検査所に持ち込んで、放射能が検出されないことを確認していることも、紹介されていました。地元の食材を使って、有名シェフが料理を作ってくれます。
常陸太田市で採れる野菜などが安全であることと、おいしいことが、よく伝わってきます。視聴者への影響は大きいと思います。ありがとうございます。
K記者さんへ。NHKは、被災地を元気づける番組も、作るのですね。このような番組の方が、「大震災以来1年半の番組」としては、ふさわしかったのではないですか。