被災地からの人口流出

総務省が、平成23年の住民基本台帳に基づく人口移動を公表しました。それによると、岩手・宮城・福島の被災3県では、人口流出が4万人を超えています。前年が1万人でしたから、大幅な転出の増加です。特に、福島県が多いです。なお、この数字は、住民票を移した人だけの数字です。このほかに、住民票を移さず、転出している人も多いです。

忙しい日々が続きます

復興本部事務局では、2月10日の復興庁開庁に向けた準備、福島特別立法の準備、避難区域見直しによる帰還に向けた課題の検討、復興特区制度の申請受付、復興交付金申請の受付など、忙しい日々が続いています。
平成24年度予算案を提出したので、その説明もあります。復興特別会計が新設され、復興関係予算が復興庁に一括計上されて、守備範囲と仕事が大きくなりました。また、国会が開かれ、復興関係の質問も多いです。
160人近くに増えた本庁職員が、夜遅く・朝早くまで頑張ってくれています。現地では、現地対策本部職員(合計90人近く)が、市町村との連絡や相談に、活躍しています。ありがとう。

最近の地震と富士山噴火・専門家の解説

ここ数日、「富士五湖」周辺を震源とする地震が頻発し、震度5弱も起きました。その分野の第一人者である鎌田浩毅京大教授に問い合わせたところ、次のような回答がありました。
先生には、私だけでなく、たくさんの方面から問い合わせがあるとのことで、「全勝のホームページにこの回答を載せて、みんなに紹介せよ」との指示を受けました。以下、先生からの回答です。

問題となっている地震は、
1月28日7時43分 山梨県東部・富士五湖 マグニチュード5.5(震度5弱)
1月29日16時46分 山梨県東部・富士五湖 マグニチュード4.7(震度4)などです。
まず深さが20キロほどで、昔から地震が比較的よく起きる場所です。いわゆる「山梨県東部の地震の巣」の中で発生したものでしょう。
皆さんが心配している下記の活断層「神縄・国府津-松田断層帯」ではありません。これは日本列島の活断層のなかで発生確率が16%と最も高いもので、予測規模は最大M7.5です。

昨日からニュースでは「富士五湖」や「忍野村」に反応しているようですが、震源をみると富士山のマグマだまりに直接関係する地震ではありません。これは、「フィリピン海プレート」に押されることによってできた「逆断層」の地震です。たとえば、去年3月15日に富士山直下で起きたマグニチュード6.4や、8月1日に駿河湾で起きたマグニチュード 6.2と同類です。
実は、東日本大震災の発生直後から、伊豆半島の北方で地殻変動が活発になっているので、このタイプの地震は今後もかなり起きるでしょう。

気象庁は「富士山活動とは無関係」と発表していますが、その通りです。一方、近くにある富士山のマグマだまりを揺すり続けている可能性はあるので、警戒は必要です。
富士山は300年間もマグマをため続けており、現在は噴火スタンバイ状態にあります。もし噴火に至る場合には、必ず前兆現象が出ますので、心配は要りません。前兆現象の経過については、下記に分かりやすく説明しましたのでご参照下さい。
もし富士山が噴火したら』(東洋経済新報社)
富士山噴火』(講談社ブルーバックス)
この機会に、富士山噴火の防災に関する点検と学習をしていただければ幸いです。京都大学教授 鎌田浩毅

それにしても、東京ではよく揺れます。

飲んでからも勉強できるか

「この土日は、仕事がはかどりましたか?」という質問が来る前に、自己申告します(笑い)。
昨日(土曜日)は出張がなく、仕事がはかどりました。今日(日曜日)は、職場のビルが全館停電で立入禁止でした。家で少し資料整理をした後、キョーコさんたちと日本橋三越の日本画展へ。その後、例によって紀伊國屋書店を散歩し(読まないであろう本を買い)、大学教授と打ち合わせを兼ねた懇談。
先生に、負けました。先生は、私より年上です。私より勢いよく飲んでおられたので、次のような質問をしました。
全:先生、飲んだらその後、本を読めませんよね。
先生:今日は、妻が大河ドラマの後、韓国ドラマを見るので、私は書斎に逃げて原稿を書きます。
全:はは~。わが家も同じですが、私は「ダーウィンが来た」を見て、お風呂に入り、布団の中で少し軽い本を読んで、轟沈です。
先生:でも、全勝さんは、ブログを書くんでしょ。あれだけ続けると偉い。
全:酔ってから書くと、危ないんですよね。
先生:現職の官僚で書くこと自体が、危ないですよ。

で、今日も酔っているのに、こんなことを書いています。反省。

政府に入った研究者からの苦言

1月28日の読売新聞「編集委員が迫る」は、知野恵子編集委員の「中村祐輔東大教授、医療推進室長辞任の理由」でした。2011年1月に内閣官房・医療イノベーション推進室長に就任した中村教授が、1年で辞任したことについてのインタビューです。

教授は日本の医療産業について、危機的状況だと指摘しておられます。
・・まず、新役作りが遅れている。例えば、ガン細胞だけを攻撃する「分子標的治療薬」という抗ガン剤がある。これまで世界で20種類以上開発されたが、日本製のものは一つもない。医薬品の輸入も急拡大しており、2011年度は1兆3600億円の赤字になった。日本の貿易赤字の半分以上に相当する。心臓ペースメーカーなどの治療用医療機器も外国製品ばかりだ。
大学などの研究水準は世界的に見ても高い。しかし、その成果を実用に結びつけ、産業として開花させる国家戦略がない。背景には、省庁間の縦割りがある・・

改革できなかったことについては。
・・未来につながる医療復興案を提案した・・しかし、霞ヶ関の役所からは無視された。
役所は全て根回しで動かしていく。落としどころを考えながら話し、少しずつ積み上げていく。私にとって最も不得手なことだ。それに霞ヶ関の発想は、予算の枠に縛られている。将来を見すえて、必要なものに優先度をつけることもしない。
・・官僚は視野が狭く、来年の予算を確保することしか考えない。10年後、20年後を見すえて政策を練るような人はまずいない。政治家も、政局が不安定な中、誰も責任を持って意思決定をしない。研究者も論文を書くことが目標で、時間と手間がかかる薬作りに本気で取り組もうとしない・・

研究者に政府に入ってもらうことについて、知野編集委員は、次のように述べています。
・・今回の原因を分析し、教訓を引き出さないと、同じことを繰り返す懸念がある・・
記事のごく一部だけを引用紹介したので、詳しくは原文をお読みください。