山下課長の大論文、被災者支援本部の記録と分析

総務省行政管理局の山下哲夫課長が、季刊『行政管理研究』2011年12月号に、「政府の被災者生活支援チームの活動経過と組織運営の経験」を書かれました。
これは、「被災者生活支援本部」での経験を基に、書かれたものです。事務記録とともに、どのような点に苦労したかが、鋭い分析によって整理されています。質量共に充実した大論文です。行政組織管理にたずさわっている人や研究者に、ご一読をお勧めします。山下課長は、行政管理局の中心人物(筆頭課長)で、国家行政機構管理のプロです。専門家の分析を、ぜひお読みください。
実は私も、支援本部の経験を原稿に書き始めたのですが、復興本部に移ってまた忙しくなったのと、山下君がこの論文を書いてくれるので、私の原稿は途中で放棄しました(反省)。

山下課長は、2001年に実施された省庁改革の際に、私と一緒に苦労した仲間です。今年の3月19日に、私が被災者支援チームの立ち上げを命じられた時に、真っ先に彼を呼び出し(3連休の初日のお昼でした)、その日の午後に組織づくりと必要な職員集めを開始してもらいました(2011年4月2日の記事参照)。初期の被災者支援本部(下段の写真、左の2枚)を、作ってくれました。この写真に、彼も写っています。本人は自分の机と椅子がなく、立ったままで部下に指示を出しています(今となっては苦笑)。
さらに翌日、施策を企画管理してもらうために、もう一人の課長を、内閣府から呼び寄せました。彼も、省庁改革本部で私の部下だった職員です。2人を、組織人事課長と政策企画課長とし、急ごしらえの組織を動かしてもらいました。
2人とも、休日に呼び出され、3時間後には私の前で、作業を開始していました。私からの指図はごく簡単なもので、というか私も何をして良いかわからない状態でした。そして彼らは、私が1を言えば10わかる関係です。彼らは私に「こんな方向でよいですよね」と確認して作業をし、あとで「全勝さんの名前で、こうしておきましたから。相手が聞いてきたら『その通りや』と言ってください」と報告してくれます。私の方は、その他の課題や次の仕事の企画で、彼らをかまってやる時間がありません。「よっしゃ、よっしゃ」か「ちょっと待て、もういっぺん言って見て」くらいしか、返事ができません。
別件ですが、現地に入っていた職員(旧知の後輩)から後に、「困って全勝さんに電話で相談したけれど、『忙しい』といって相談に乗ってくれない全勝さんを、初めて体験した」と、苦情を言われました(反省)。それくらいの忙しさだったということですね。

なお、本部では、時間と共に仕事の内容が変化し、それにあわせて事務分担もどんどん変えました。さらに2か月後には、呼び寄せた職員たち(多い時には100人を超えました)を順次、派遣元省にお返ししました。優秀な職員を、長い期間お借りするわけにはいきません。また、次の機会に優秀な職員を派遣してもらうためには、なるべく早く返す必要があります(笑い)。撤退を考えること、これも管理者の重要な仕事です。これらも、2人がしてくれました。
先を読んで仕事をする。この2人なくして、支援本部の仕事は回らなかったでしょう。感謝しています。2人を出してくださった、送り出し元組織にも感謝します。私がしたことは、2人を呼び出し、仕事を任せたことです(ちょっと、格好良い台詞ですね)。
先日、復興本部に訪ねてきてくださった民間企業の大先輩が、「全勝君の仕事場には、高度成長期の時のような雰囲気があるね」と誉めてくださいました。単に忙しくドタバタしているだけかもしれませんが、ありがたい評価と受け取りました。