急に気が向いて、積ん読だった、ヌリエル・ルービニほか『大いなる不安定―金融危機は偶然ではない、必然である』(2010年、ダイヤモンド社)を読み始めました。ルービニは、2008年の世界金融危機を予想した学者の一人です。この本は、今回の金融危機を過去のバブルと崩壊(そこには日本の1990年代のバブルと崩壊も含まれます)と比べ、同じようなことを繰り返していることを分析しています。今回は別だと関係者は主張しますが、構図は毎回同じであることが示されていて、面白いです。さて、金融危機の防止と起きた際の対策は大きな問題ですが、私は次のようなことを考えました。
今回の巨大津波は、1,000年に一度のことといわれています。世界金融危機と同時不況は、100年に一度のことといわれました。そのような視点で見ると、原発の重大事故は、スリーマイル島原発事故が1979年、チェルノブイリ原発事故が1986年、福島原発事故が2011年ですから、20年1回としましょう。無差別大規模テロは、地下鉄サリン事件が1995年、アメリカ同時多発テロが2001年です。世界各地では頻繁に起こっていますが、新型で驚くべきものは10年に1度と考えましょう。
私たちは予想外のことが起きると「想定外」「未曾有」と表現します。しかし、地球の外から1,000年や100年単位で観察している人がいたら、巨大津波も世界金融危機も、「定期的に起きる事案」であって、そんなにびっくりすることではありません。原発の重大事故も、無差別大規模テロも、同じです。本人にとって交通事故は一生に一度の大変なことですが、救急隊員と警察にとっては、毎日起きている事案です。
私たちが1日とか1年という時間の単位で生活し、一生はせいぜい100年です。それに対し、上に述べたことを極端に単純化すると、巨大津波ような自然災害は1,000年の単位で、金融危機という経済システム事故は100年という単位で、原発事故といった科学技術の重大事故は20年、無差別大規模テロといった人の情念による重大犯罪は10年という単位で起きています。それぞれその時間単位で見ると、想定外でもなく、未曾有でもないのですね。関係者が、そのうちに忘れてしまうのでしょうか。