民間企業の給与が減っていることに合わせ、公務員の給与も削減されています。平成11年以降毎年のように、人事院勧告が引き下げられてきました。どの程度下がったのか、専門家に聞きました。平成22年夏の人事院勧告に、次のような記述があります。
・・公務員給与は、民間賃金が厳しい状況にあったことを反映して、平成11年に年間給与が減少に転じて以降、平成19年を除き、月例給又は特別給の減額による年間給与の減少(平成11年~平成15年、平成17年及び平成21年)又は据置き(平成16年、平成18年及び平成20年)が続いている。年間給与が減少に転じる前の平成10年と平成21年について、40歳の国家公務員のモデル例(配偶者・子2人)で比較してみると、その年間給与は、本府省勤務の係長で約12.8%、地方機関(地域手当非支給地)勤務の係長で約17.5%それぞれ減少している・・(別紙第1 職員の給与等に関する報告p1)。
累計では、1割以上も下がっているのですね。さらにこのあと、平成22年も引き下げられました。地方では地域手当見直しで、さらに大きく下がっています。
「給与勧告の仕組みと本年の勧告のポイント」の7ページ(9枚目)に、わかりやすい表がついています。平成11年から22年までの間、19年は引き上げですが、16、18、20年は勧告なし、そのほかの年度は引き下げです。
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明るい課長講座3
次の教えを、それぞれ職場での具体的場面を使って、解説せよ。そして、二つの教えの関係について述べよ。
A 今、目の前にある仕事に、全力を挙げて取り組め。
B 中長期的な視点で、広い視野で仕事に取り組め。
早稲田大学学生の感想文
暮れの12月14日に、早稲田大学に講義に行きました。牛丸先生が、その時の学生の感想文を送って下さいました。約150人分です。皆さん紳士的なのか、先生が「誘導」して下さったのか、おほめの言葉が多く恐縮です。ありがとうございます。
彼らの多くは20歳で、1991年のバブル崩壊後の日本しか知りません。私が数字で示した、それまでの経済発展や地域の変化について、あらためて驚いた学生が多かったです。「日本もすごい国なのだ」「ニュースでは日本はダメな国だとばかり言いますが、そうでもないのですね」とか。
また、先生の授業と重複しないように、地方財政によって地域でどのような成果が上がり、どのようなことができていないかをお話ししました。これについても、「ふだん聞けない話だった」と喜んでもらえたようです。
もっとも、私の話の骨格は、この10年間、ほとんど変わっていません。日本の停滞は、既に20年間も続いているのです。戦争に負けた昭和20年を起点にすると、20年後は昭和40年です。39年には東京オリンピックを開催し、43年(1968年)には西ドイツを抜いてGDPが世界第2位になりました。20年間というのは、それくらい「長い」期間です。
何を変えなければいけないか。それは、みんながわかっています。実行できない私たちに、責任があります。そして、借金は積み重なり、アジア諸国はどんどん追いついてきて、追い抜いていきます。
ところで、近ごろは学生さんと話すと、「年の差」を感じます。こちらも意識するのでしょうが、相手の方がもっと意識しているようです。無理もありませんね、私は、彼らの父親あるいはそれより年上の年代なのですから。さらに、官僚という職業が、距離をつくるようです。感想文の中にも、「官僚=悪い人と思っていました」という記述がありました(笑い)。確かに、56歳のおじさん官僚は、学生諸君からは、とっつきにくい「人種」なのでしょうね。
地域はこれから何で食べていくか
20日の日経新聞連載「ニッポンこの20年、長期停滞から何を学ぶか」は、「地方、疲弊止まらず」でした。
地域の活力の元は、なんと言っても産業です。それによって、住民は暮らしていけるのです。戦後の地域の発展は、農業の生産性向上、工場の地方分散、そして社会資本の整備によります。地方自治体は、農地整備、工業団地造成と企業誘致、公共事業に力を入れました。かつて「地域政策」は、産業振興と社会資本整備でした。国にあっては、「均衡ある国土の発展」をスローガンに、数次にわたって「全国開発計画」がつくられました。
1990年代以降以降の地方経済の低下は、次のような要因によります。
組立型工場が、アジアに出て行ったこと。農業の生産性が上がらなかったこと。それに代わる産業が育たなかったことでしょう。豊かになったことで賃金が上がり、アジア各国に勝てなくなったのです。グローバル化の影響も大きいです。2007年10月28日の記事も参照してください。
近年は、「地域政策」という言葉も聞かれなくなり、国土庁地域振興局も無くなりました。豊かになったことで、「開発」という言葉もそぐわなくなりました。
各地域が何で食べていくか。従来のような企業誘致も大切ですが、それだけでは国全体では好転しないでしょう。国家としても地域としても、これまでにない大きな課題になっています。
外交の重要性
藪中三十二著『国家の命運』(2010年、新潮新書)が、勉強になりました。出版と同時に買ってあったのですが、積ん読状態でした。反省。
著者は前外務次官で、日米構造協議などいくつもの国際交渉を経験しておられます。外務官僚から見た、日本国家論です。書評でも取り上げられているので、読まれた方も多いと思います。
私は内政が主な仕事なので、外交分野は勉強になります。日本が先進国になり、一方でグローバリゼイションが進んだことによって、外国との関係や外交交渉が、日本国の在り方と国民の生活に大きく影響します。日米の繊維交渉や自動車摩擦は、一部の製造業に大きな影響を与えましたが、農産物の輸入自由化や汚染された食品の輸入は、家庭にも影響を及ぼします。そして、国際社会で日本はどのような位置を占めていくのか、日本はどのような国を目指すのか。これは日本の安全と繁栄、国民の在り方、そして世界の安全と繁栄に、大きな影響を及ぼします。
官邸で見ていても、総理の仕事の半分以上が、外交と世界の経済問題や安全問題でした。最近のニュースでも、外国との関係や国際問題の占める割合が、多くなったと思います。これまでは、外交官と一部の関係者に任せておけばよかったものが、日本の政治の大きな要素になったのです。しかし、政治家をはじめ、マスコミ(記者)や論壇など、まだそれに従事する人は多くありません。専門誌がないことも、かつて書きました(2010年4月12日の記事)。それだけの市場が無く、関心が低いということでしょう。