地域振興と国家行政機構

高松での地方版経済財政諮問会議に出席して、いくつかのことを考えました。
地域の経済振興を考えることは、地方自治体の仕事でしょう。しかし、現在のような国内での大きな不均衡が生じると、中央政府としても放っておけなくなります。しかし、各省にはそれを担当する部局がありません。総務省(旧自治省)は、主に地方制度と税財政です。国土交通省は、道路などのインフラ整備が主です。経済産業省は、中小企業などを所管していますが、各地域ごとの産業対策までは手が回っていないようです。農業は農水省の所管ですが、農業はGDPに占める割合が1%(従業者で4%。訂正します)でしかなく、農業振興では地域経済は支えられません。いずれにしても、「地域の振興」を総合的に所管する部局はないようです。
かつては、国土庁に地域振興局がありました。それがどれだけ機能したかは別として、今あれば、そこが主たる任務を担うと思われます。道州制になれば、中央政府でなく各道州の責任になるでしょう。
次に、地域の経済状況を、中央政府に吸い上げる機関がありません。それぞれのデータは、各省の系列で本省に上がっているのでしょうが。各省の出先機関は、中央で決めたことを実行する、あるいは地方自治体に伝達する機関であって、情報を吸い上げる機関ではないのです。

これまでは、地域間に差がありつつも、地方もそこそこに経済が発展しました。また、高度経済成長期には、人口が工業地帯に大移動することで、格差を吸収しました。組立型工場も、地方へ進出しました。中央政府は、公共事業、農業保護で「国土の均衡ある発展」を達成できました。そして、国庫補助金と地方交付税とで、地方自治体の財政力も平均化しました。
農業保護が行き詰まり、工場がアジアへ流失し、近年第二の失業対策としての機能を担っていた公共事業が削減されたことで、この仕組みが成り立たなくなりました。そして、日本全体がマイナス成長・低成長になることで、新たな成長産業を持たない地方の疲弊が目立つようになりました。
もっとも、かつてもエネルギー革命で、山村での炭焼きの暮らしが成り立たなくなり、石炭から石油への切り替えで、炭坑が成り立たなくなりました。それらも、経済成長はかなり吸収したのです。対応できなかった部分が、今になって、山村での限界集落、夕張などの旧産炭地の疲弊となって表れています。