人事院の広報誌『人事院月報』2011年2月号が、ドイツとイギリスの幹部公務員人事を取り上げています。それぞれの人事委員会幹部を招いての、パネル・ディスカッションの報告です。そこで、大杉覚首都大学東京教授が、人事行政や公務員制度について、体系だった研究蓄積がなく、制度設計研究が必要であることを、指摘しておられます。
同感です。採用、昇進、評価、育成、退職とその後の処遇。また、幹部公務員にあっては、その任用方法や、政治家との関係をどうするかなど。公務員制度改革が長く議論になっていますが、議論の基礎となる共通の認識がないこと、議論する政策共同体が十分でないことから、百家争鳴になっているようです。公務員バッシングとも言われますが、その割には出口は見えません。
改革の目的と議論の対象者をそれぞれ明確にして議論しないと、結論が出ません。まずは、公務員一般と幹部公務員を分けて議論すべきです。そして、成果や能力による評価の議論と、スト権付与と、政官関係は、分けて議論すべきでしょう。公務員に何を求めるか、民間と何を変えるべきなのかです。
これまで「日本の官僚は優秀だ」と言われていたことから、その問題点や改革論が議論されなかったのだと思います。しかし、官僚と公務員が必要なことは、世界各国共通です。諸外国がどのような運用をしているのか参考にして、現在の日本に適したものを作ればよいのでしょう。その際に国によって違うのは、政治家との役割分担が各国の事情によって異なることや、民間での処遇や転職の状況でしょう。後者は、公務員の処遇を考える際や民間との交流、転職を考える場合に必要となります。