嘘をつく意識はないが記憶を美化する

26日朝日新聞夕刊「追憶の風景」保坂正康さんの言葉から。
・・私はこれまで昭和史を調べる中で、のべ4千人の方に話をうかがってきました。それで気づいたことがあるんです。1割の人は本当のことをいう。1割の人は最初から嘘をいう、8割の人は記憶を美化し、操作する。この8割というのは実は我々なんです。悪人じゃないけど、うそをついている・・

国際経済・金融の協調枠組み作り

23 日に、韓国で開かれていた、20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が終わりました。アメリカのガイトナー財務長官が、各国の経常収支比率を一 定水準に保つ数値目標の導入を提案しましたが、参考ということに落ち着いたようです。一方で、準備通貨(アメリカ、EU、日本です)を持つ国は、責任ある 経済政策をとり、為替相場の安定を保つ必要があると合意されました。経済成長や通貨の安定のために、国際協調の枠組みが進みつつあります。
24日の日経新聞は、1970年代のG5からの歴史を、簡単な表とともに解説していました。1985年にプラザ合意(アメリカ、ニューヨークのプラザホテ ルでの会議)がされ、円が大幅に値上がりしました。この時は、G5(アメリカ、日本、ドイツ、フランス、イギリス)です。
その後、イタリアとカナダを加え、G7になりました。1987年のブラックマンデー(ニューヨーク株式市場の暴落)、1997年のアジア通貨危機、 2008年のリーマン・ショックと、経済が政治を揺さぶりました。そして、中国やブラジルなど新興国が台頭し、G20という枠組みになりました。
一方で、国連はこのような分野では、存在感がありません。政治は主権国家体制でありながら、経済金融はその国境を越えて動くという現代において、どのように国際協調の枠組みが進むのか。人類の知恵が試されているのでしょう。

日系定住外国人施策

地域の悩みの一つに、定住外国人問題があります。特に日系外国人は、多数の人が一部地域で固まって住むことで、日本社会と関わりを持たなくても暮らしていけました。しかし、日本語が話せない、文化や習慣が違うことから、地域住民と摩擦を起こすことも多いです。さらに近年の日本の不況で、困難が増しています。地方自治体は、様々な取り組みをしています。
内閣府共生社会政策統括官にある定住外国人施策推進室が、取り組み事例を取りまとめました。ご覧下さい。

私がこの問題を取り上げるのは、次の2つの理由からです。
一つは、この問題が、これからの自治体にとって、課題は地域で発生し、解決策も国からは来ないという一例だからです。
もう一つは、自治体がつくらなければならない「マチ」とは、道路や施設といった有形のものだけでなく、人と人との付き合いや助け合い、ルールやマナーといった無形の社会資本が重要だということです。住民の暮らしにとって、道路や施設以上に、人とのつながりが重要なのです。外から来た人が困ることを数え上げると、何が重要なマチの要素であるかがわかるのです。これについては、拙著『新地方自治入門-行政の現在と未来』p177で述べました。

日銀総裁、日本は世界のフロントランナー

10月21日の朝日新聞オピニオン欄は、白川方明日銀総裁のインタビューでした。1ページもの大きなものですが、一部紹介します。詳しくは、原文をお読み下さい。

(問)今回の金融緩和を打ち出した時、日銀を世界の中央銀行の「フロントランナー」と表現しました。
(答)金融危機後に欧米の中央銀行が取った政策のほとんどは、日銀が90年代後半から2000年代前半に採用したものだ。そして今、日本が直面している問題は、欧米も経験していない新しい状況になっている。にもかかわらず、金融政策の議論はいつまでも欧米での議論が前提となっている。だから「自分たちの頭で考えよう」という気持ちを込めて、フロントランナーという言葉を使った。

(問)日銀が十分な金融緩和をしているとしたら、日本経済が回復するためにさらに必要なことは何ですか。
(答)将来への展望が開けにくいと、多くの人が思っている。成長への展望を切り開いていくことを、企業、金融機関、当局それぞれがやるしかない。今の日本経済が直面している問題を、正確に理解することも重要だ。
例えば物価が持続的に下落するデフレ。人口減少と生産性上昇率の低下から、潜在成長率がじわじわ下がる傾向に歯止めがかからないことが、デフレという現象に出ている。これが問題の本質だと、正確に理解しないといけない。痛みを伴うが、これに取り組まない限り、デフレから脱却できないという基本認識をしっかり持つ必要がある。

(問)企業は何をするべきなのでしょうか。
(答)企業は高い利益を享受できる新たな市場を創造し、開拓していくチャレンジが大事になる。日本の企業は、これまで主としてコスト削減やコスト構造の改善による生産性の引き上げを優先する戦略をとってきた。いわば経営の効率性の追求だ。これはこれで大事だと思う。ただ、日本は今、人口が減少していて既存の国内市場が縮小に向かう中で、「市場を創る」という戦略がない限り、発展はやはり難しい。

(問)政府に求められることは何ですか。
(答)政府の最大の仕事は、企業や金融機関がチャレンジしていくことを可能にする環境を整備していくことだ。グローバルな競争上、日本の企業が不利になる制度がないか、不断に点検していくことが求められている。すでに政府の検討は始まっているが、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の推進、税制や規制の見直しは重要なポイントとなる。人やモノが成長分野に流れるようにしていかないといけない。柔軟性がカギだと思う。個人が挑戦して失敗しても、もう一回挑戦できるセーフティーネット(安全網)の整備もやはり必要だ。

(問)課題が山積していますね。
(答)ただ、悲観しすぎてはいけない。かつての成長率の高さはなくなったが、冷静にみれば日本の強みもたくさんある。
日本は労働時間を減らしてきたが、それでも単位時間当たりの生産性上昇率は、今も米国と比べてそれほど負けていない。金融システムも安定している。リーマン・ショックが起きて先進国の金融機関の経営が悪化した時でも、日本だけは金融機関の貸し出しは増加した。さらになにより成長著しい中国などのアジア諸国と近い。
最近の日本社会を見ていると、気分の持ちようも大事だと思う。すべてを否定的に考える気分の持ちよう自体が、経済の成長力を落としている面もある。過度の悲観論は、一掃した方がいい。

企業内弁護士

10月22日の日経新聞が、「法務が支える企業戦略」を解説していました。
・・契約文書の確認など、従来は裏方の役回りが多かった法務部門の重要性が増している。会社法の施行や事業領域の拡大を契機として、資本市場での買収合戦や新興国法制などに対応する場面が増えているためだ・・
として、企業買収や企業防衛、海外投資、アメリカ議会での社長の証言の際の内容精査、政府の法制審議会への提言、温暖化ガス排出枠購入の際の国連との折衝などを、紹介しています。
企業内弁護士は現在435人で、2001年の7倍に増えたそうです。まだ少ないような気がしますね。