講義のビデオ収録

今日、消防大学校で、地方行政を2時間で講義しました。消防大学校長の時に、私が担当していた科目です。この科目は、e-ラーニング(インターネットを使った自宅学習)に移行することが決まっていたので、今日はその録画撮りでした。
いや~、勝手が違い、疲れました。
e-ラーニングでは、ビデオを見る前後に、小テストをします。学習効果を見るためです。ということで、まずは、小テストを15問ほどつくりつつ、講義内容をつくりました。いつもは、「地方行政の現状と課題」をお話ししているのですが、効果測定のためには、「日本の地方自治制度」や「地方行政の仕組み」なども講義しなければなりません。この内容は、さほど面白い内容にはなりません。
さらに、ビデオになるということで、講義全体を通して、エピソードや脱線を入れることができません。また、脱線すると時間が足らなくなります。笑いを取ることが難しいのです。学生に質問して答えさせるとか、手を挙げさせるという、参加型の授業も時間がかかるのでだめ。いつもなら、レジュメでは空欄にしておいて、学生に書き取らすという手法も、取りにくいです。それら重要なことは、パワーポイントにして画面に載せるのです。今日の授業では、資料として配ったのですが。
ふだんよりゆっくりとしゃべり、主語と述語を明確にして話すように心がけたら、とても疲れました。学生たちも緊張して聞いているので、みんなで疲れました(反省)。
言い訳をするなら、サンデル教授の政治哲学の授業「白熱ハーバード教室」は、学生に考えさせる授業です。今日私が行った授業は、ビデオを見て学生が知識を得る、おさらいをする授業です。自ずと違いがあります。もちろん、知識を授ける授業でも、面白くする工夫はあるのでしょうが。
それでも、今日は学生を相手に授業をして、それを録画したので、まだやりやすかったです。学生の反応がわかりますから。これが、学生なしで、ビデオカメラに向かってしゃべるのだと、もっと難しいでしょうね。
放課後、天川晃放送大学教授とお会いする機会があったので、カメラに向かってしゃべるのは難しくありませんかと、尋ねました。先生は慣れておられます。

後輩教授たちの活躍

先日、「自治大での私の授業を見て、教授たちが評価する」という話(9月12日の記事)を、書きました。それでは、彼らがどのような授業をしているか見てみようと、モニターカメラで見てみました。
大したものです。まずは、授業の入り方です。私は、講義や講演は、最初の30秒あるいは3分で、その日の授業の善し悪しが決まると考えています。いわゆる「つかみ」です。講師の最初の発言に、観客がどう反応するかです。落語家も同じだそうですが。彼らは、大したものです。いろんな工夫をしています。内容は企業秘密なので、ここでは紹介できません(笑い)。また、誰もが、まねをすることはできない内容です。
教授室で会った時には、若い課長補佐の顔でしたが、モニターを通してみた彼らの顔は、大げさに言えば、輝いていました。「どこに、こんな自信があったのだろう」と、思うくらいです(失礼)。
授業の内容も、しっかりしています。そして、授業中に小テストを出します。その際には、事前に机を班別に並べさせて、班ごとに議論して答を出させます。人数が多い授業では、個別に回答させるのは時間がかかり、全員参加になりにくいのです。この点もよく考えています。モニターで見ていると、班別討議のたびに教室がうるさくなり、回答の際には歓声が上がります。
私は彼らに、「話すだけの授業はやめよ。学生が参加する方式にせよ」と言っています。サンデル教授の「白熱ハーバード教室」です。と言いつつ、私の授業では、それができていないのですが。
私は22年前に、自治大学校で教授を勤めました。その時の私と比べて、若き教授陣の勉強ぶりと工夫には、正直言って負けました。うれしい負けですね(ここは強がり)。頑張れ、猪鼻教授、草壁教授。

ペイオフ発動・金融行政の進化

9月10日に、日本振興銀行が経営破綻し、ペイオフ(上限つき預金保護による処理)が行われました。ペイオフが発動されたのは、わが国では初めてのことなので、大きく報道されています。日経新聞経済教室、15日の翁百合さん、16日の佐藤隆文教授(前金融庁長官)が、わかりやすいです。
私の関心は、市場(金融)に対して政府(行政)はどうかかわるかということと、金融危機という社会のリスクにどう備えるかということです。
普通の会社が倒産しても、それは関係者の負担で処理されます。手続や優先順位は、一般的な破産法制で決まっていて、それに沿って処理されます。しかし、銀行の場合は、これまで倒産させず、ほかの銀行に合併させて救済したり、国費を投入して保護したり、一時国有化して救うなどの処理をしました。預金も全額保護したのです。
これには、大きく二つの要因があったと思います。一つは、銀行の倒産が、次々とほかの金融機関に波及し、金融システムが機能不全になる恐れがあること。システミック・リスクです。金融はお金のネットワークなので、このようなことが起きます。もう一つは、国民の間に「銀行は倒産しない」という信仰があり、預金が戻ってこないとは考えていなかったこと、そして通常の会社と違い、取引先(預金者)が一般人で範囲が広いことです。社会不安を引き起こす可能性があるのです。
今回、初めてペイオフによる破綻ができたのは、それをするだけの条件が整った、整えたからです。この点は、佐藤論文に詳しく書かれています。

佐藤教授は、事前予防と事後処理の整合性を、指摘しておられます。金融行政は、かつてのきつい規制行政から、規制緩和が行われました。そして市場の競争に委ねるようにしたのですが、破綻した場合の処理が、一般企業と違って問題になるのです。
預金者保護・金融システム維持のために、セーフティネット(安全網)を強くすると、ずさんな経営者が出てくる可能性があります。高い利息で預金者を集め、うまくいかないと倒産させるのです。このような銀行や預金者が保護されるようでは、まっとうな競争は生まれません。そして、その費用負担は国民に押しつけられるのです。他方、安全網がないと、金融システムの危機が発生する可能性があります。
それをにらみながら、うまく制度を組み立て運用する。この20年間の銀行破綻と金融行政の経験から、日本が学んだことです。

児童虐待防止法10年

日経新聞が17日から社会面で、連載「震える小さな命。児童虐待防止法10年」を始めました。児童虐待は、新聞報道の中で、最も涙が出る話です。記事にも書いてありますが、各家庭の問題から、社会全体で取り組むべき課題へと変わりました。しかし、家庭の中で起きる、子供は外に訴える手段を持たないことが多いことなどから、なかなか有効な手は打てません。
介護保険制度もできて10年なのですが、こちらは「見えるサービス」なので、問題点の改善が容易です。行政は、人間関係、家庭の中の問題は、得意ではありません。

大学院秋学期開始

今日から、日大大学院での授業が始まりました。初日から、学生さんも集まり、早速、授業を開始しました。今学期は、「公共経営論」です。市役所組織の経営だけでなく、地域社会の経営まで広げて、話をしようと考えています。
地方自治体の課題は、組織の課題と、地域の課題の二つがあります。前者は、行革であったり、NPM、組織と人の管理などです。後者は、不況と不安に悩む地域社会を、どのように活性化し安心な社会にするかです。市役所組織は、あくまでも住民生活を豊かにするための「手段」であって、地域社会の経営を考えないと、組織経営論だけでは狭いのです。「夕張市の経営」といった時に、市役所だけを考えていても、市域の活性化にはなりません。「国家経営」といった時には、国家行政組織(省庁組織)の経営ではなく、日本国・日本社会の経営を考えるでしょう。
実は、自治大学校の基本課程(幹部養成課程である第1部、第2部)は、公共政策(政策立案能力養成)と行政経営(組織管理能力養成)の2本柱からなっています。それと同じです。また、春学期に講義した、地域社会のリスクと行政組織のリスクの2つにも、対応しています。
春学期もそうでしたが、このテーマをまとまって話すのは初めてなので、準備が大変です。でも、自分の考えを整理するのには、良い機会です。
参加の院生さんたちに連絡です。今日使わなかった配付資料は、来週使うので、持ってきてください。