今日は、校長による学生点検。学生全員が整列して、私が点検します。10月14日の項に、書いた通りです。月に一度、校長が点検します。ほかの週は、副校長などが点検者です。朝8時半、透き通った冷たい空気の中での儀式は、すがすがしいです。
月別アーカイブ: 2009年12月
日本の社会保障、自由主義・保守主義・社会民主主義の混合
先生は、それに続けて、次のように書いておられます。
・・一般政府支出および社会保障給付の対GDP比を見ると、日本は先進国の中ではアメリカについで低い。この点に着目すれば、《自由主義的レジーム》の要素をもつといえる。社会サービスの領域ではヨーロッパのように公的部門が提供するのでもなく、またアメリカのように市場で購入されるのでもない。伝統的に日本では、基幹産業の従業員向けの企業内福祉と家族共同体の中で提供されてきた。それによって、社会保障関係費は、低位に保たれた。
つぎに、社会保障給付の内容に着目すると、アメリカやイギリスに比べ、社会保険の比重がやや高い。しかも、より重要な特徴は、社会保険制度が産業、職業、年齢別に分立していることである。同一の属性を有する人々がお互いにリスクをシェアし、かつ助け合うという連帯志向である。この点に着目すれば、日本は《保守主義的レジーム》の要素もある。
さらに、狭義の社会保障費以外にも、福祉国家を財政的に担保している仕組みがある。日本では、大都市と地域、また近代部門と農業などの伝統部門との格差が大きい。このため所得階層間ではなく、むしろ地域間、産業間を基準にした再分配のウェートが高い。地方財政調整制度によって、ナショナル・スタンダードでのサービス供給の財源が保障されている。この点に着目すれば《社会民主主義的レジーム》の要素もある・・
財政学者の夢・持田先生
・・日本の財政は平成の「失われた10年」の後遺症ともいうべき公的債務残高の塊と格闘している。しかも貧富の懸隔は拡がり、地方は疲弊し、生命を守る医療や老後の安心を支える年金制度にも綻びが目立つ。頼みの綱となる税制はやせ細っているが、負担の問題を真正面から議論することは先送りされている。混沌と社会を覆う閉塞感を払いのけて、希望に満ちた未来へとわれわれを導いてくれる曙光が差してくるのは、一体いつになるのであろうか・・
・・問題の設定の仕方が正しければ、半分は解けたも同然だといわれる。それと同じように、財政の将来を展望するには何よりも現状をトータルに正しく把握することが必要だ。しばしば「大きな政府」か「小さな政府」なのかという形で財政の将来像が議論される。一体、先進諸国の福祉国家と比べた場合に、日本はどのような特色をもつのだろうか。
『財政学』の最終章では、高い福祉需要と低い租税負担という正反対の極の間を揺れ動きながら、財政システムが将来どのように変貌するのかを展望した。書店の本棚で手にする教科書の目次の中に、読者がこのような章を発見するのは稀であろう。
財政学者の夢とは何だろう。・・筆者にとっては、財政学という切り口から現代国家の本質と今後の行方を探ることが夢であり、目標である。そして《福祉国家財政》という観点から、この夢に近づこうとした・・
「学問は、価値判断からは、中立でなければならない」と主張する人もいます。しかし、行政や財政など、現実の社会を対象としている学問において、それは成り立たない、あるいは役に立たない議論になる、恐れがあると思います。
都市の統治
喜安朗著「パリ-都市統治の時代」(岩波新書、2009年)を読みました。パリという町が、王政の支配下に入り、さらに革命を経て、近代的国家の支配に引き継がれる過程を、描いています。
絶対王政が、分立していた権力を統一します。それは、都市においても同様です。本書では、別に、警察の強化という観点から、都市の統治を描きます。
さらに、そのような権力の視点だけでなく、地図の作成(都市の現状把握)、都市改造、上下水道整備、貧困層の調査など、行政サービスや機能を通じた都市の統治も描かれます。
また、いったん解体された中間集団が、再度復活して社会が安定することも、描かれています。もちろん中世的ギルドではなく、新しいアソシアシオンという形です。
都市の統治を、様々な観点から論じた、興味深い本です。新書ですが、読解するには少し力が必要な本です。
消防大学校での講義
今日は、大学校の幹部科(消防本部の幹部になる職員コース)で、地方行政を2時間講義しました。これまで外部講師にお願いしていたのですが、私の「得意」とする分野なので、今回、私が担当しました。
久しぶりの講義なので、資料の準備に、手間がかかりました。単なる制度論でなく、現在の地方行政や市役所が置かれている問題を取り上げたので。慶応大学などで使っていた資料は、1年以上前のもので、数字が古くなっています。総務省の関係者、さらには富山県の職員に協力を得て、作りました。ありがとうございました。用意したレジュメと資料に、しゃべるポイントを、赤で書き込んでおき、そして2,3度事前に予行演習をして、準備はばっちり。おかげで、流れも良く、お話しできました。ところが、久しぶりなので、時間配分を誤りました。あれもお話ししたい、これも教えたいと。いろいろと具体事例を出してしゃべっているうちに、時間が足りなくなりました。もっとも、これはいつものことですね。反省。