日本の社会保障、自由主義・保守主義・社会民主主義の混合

先生は、それに続けて、次のように書いておられます。
・・一般政府支出および社会保障給付の対GDP比を見ると、日本は先進国の中ではアメリカについで低い。この点に着目すれば、《自由主義的レジーム》の要素をもつといえる。社会サービスの領域ではヨーロッパのように公的部門が提供するのでもなく、またアメリカのように市場で購入されるのでもない。伝統的に日本では、基幹産業の従業員向けの企業内福祉と家族共同体の中で提供されてきた。それによって、社会保障関係費は、低位に保たれた。
つぎに、社会保障給付の内容に着目すると、アメリカやイギリスに比べ、社会保険の比重がやや高い。しかも、より重要な特徴は、社会保険制度が産業、職業、年齢別に分立していることである。同一の属性を有する人々がお互いにリスクをシェアし、かつ助け合うという連帯志向である。この点に着目すれば、日本は《保守主義的レジーム》の要素もある。
さらに、狭義の社会保障費以外にも、福祉国家を財政的に担保している仕組みがある。日本では、大都市と地域、また近代部門と農業などの伝統部門との格差が大きい。このため所得階層間ではなく、むしろ地域間、産業間を基準にした再分配のウェートが高い。地方財政調整制度によって、ナショナル・スタンダードでのサービス供給の財源が保障されている。この点に着目すれば《社会民主主義的レジーム》の要素もある・・