消防大学校の授業と評価

今日は、火災調査科の卒業式でした。以前、このページで紹介した「消防大学校で家を燃やす」の主人公たちです。10月19日に入校して、約2か月の研修を終え、各消防本部に帰っていきました。合計47人、うち女性1人、平均年齢39歳の精鋭たちです。ちなみに、あのとき燃やした家屋も自動車も、ちゃんと原因を見つけたそうです。さすが「コロンボ」。
この間に、授業科目は70科目、延べ255時間の授業です。化学知識、模擬の現場調査、鑑識、調査書類の作成、法令、訴訟などなど。途中に、4回の効果測定(試験)もあります。一定点数に達しないと、卒業できません。また、優秀者は表彰します。各人の成績は、所属の消防本部に連絡されます。決して、楽な研修でないことが、おわかりいただけると思います。
でも、日本の消防行政の水準を保つためには、必要なことです。そのために、消防大学校があるのです。彼らは選ばれて、全国から来た職員であり、これから、各地で幹部として部下を指導する立場にあるのです。
逆に、学生が教師を評価する制度もあります。5段階で、各教師を評価してもらい、さらに具体的にどこが良かったか悪かったかを、書いてもらいます。校長講話も、学生による評価の対象になります(うぐっ)。
学生も熱心ですから、教師に対する要求も高いです。「本に書いてあることをしゃべるだけなら、時間の無駄だ」「もっと、××のことを知りたい」とか。それを基に、私たち学校側は検討会議を開き、次の授業内容や講師を入れ替えるのです。

ねじれ国会での法案成立

9日の読売新聞は、今国会で成立した法案と成立しそうな法案、見通しの立たない法案を、表にして整理していました。既に16本も成立しています。成立するパターンには、政府案を全会一致で、政府案を与野党で共同修正、与野党の議員提案を一本化などがあります。
テロ特措法での対立ばかりが報道されて、与野党ねじれ国会では、法律が成立しないかのような印象を受けますが、そうではないのです。与野党ともに、国民に向け、実績をアピールする必要があります。だから、法案の内容によると思います。記事では、生活関連法案が、その対象だとしています。
このような積み重ねが、民主主義を深くしていくと思います。新聞には、単に対立をあおるのではなく、このような分析を引き続きお願いします。

国家の役割変化と財政学

持田先生の「混沌から希望への羅針盤」を読みながら、いろんなことを考えました。(12月7日から続く)
1 国家の役割、福祉が中心に
先生は、「福祉国家財政」という観点を、著書の中心に据えておられます。歳出では社会保障費を取り上げ、歳入では社会保障負担を大きく扱っておられます。社会保障費は、他の先生の教科書でも出てきます。
先生は特に、「社会保険拠出を既存の租税と合わせて総合的にとらえた」と述べておられます。「社会保険拠出の実態は、保険の仕組みと政府の強制力を利用した世代間の租税・移転制度に限りなく近づいている」。そして、社会保険拠出は税制の累進性を低下させると指摘し、「納税者の公平な負担」を考えるためには、社会保険拠出を真正面から議論しなければならないと、述べておられます。
私は、これを「国家の役割の変化」と理解します。すなわち、財政的にも、かつての産業振興・社会資本整備から、福祉の役割が大きくなり、それが中心になったということです。
2 歳出だけでなく負担の議論が必要
すると、財政学の議論の仕方も、変わってきます。
かつての産業振興・社会資本整備の場合は、歳出を議論すればすみました。もちろん「減税」という手段も使いましたが、それはいわば補助金の一種であり、歳入論として大きくは議論されません。これまでの歳入の議論は、総量確保と、誰に負担させるか(累進度など)の議論でした。
しかし、福祉の場合は、所得再配分の観点から、歳出だけでなく、「負担=租税+保険料」の議論が必要です。それも総量でなく、個人への帰属の議論が必要なのです。
「給付付き税額控除」は、その典型です。貧しい人への支援として、低所得者には減税します。しかし、さらに収入が低い人は納税していないので、減税ができず、この人たちには現金給付をするのです。税金という負担の議論が、給付という歳出の議論に連結しています。

日本のソフトパワー

9日の東京新聞「時代を読む」で、ジェラルド・カーチス教授が、日本のソフトパワー外交について、次のような趣旨を書いておられました。
日本の伝統的外交は、世界に関する情報の収集に偏っており、日本の情報を世界に発信する重要性を認識していない。日本の国際交流基金は、イギリスのブリティシュ・カウンシル、ドイツのゲーテ・インスティチュート、中国の孔子学院に比べて、職員や海外拠点の数ではるかに劣る。日本のソフトパワーを広めるのに成功したプログラムに、JETプログラムがある。JETプログラムは外国人青年を日本に招き、小中高校で英語を教えたりする。将来への投資であり、費用をはるかに超える価値を持つ。

消防大学校長の仕事

今日は、消防団長科の卒業式。式の後、中島みゆきさんの「ヘッドライト・テールライト」(NHKプロジェクトXのエンディングテーマ)の音楽が流れる中、在校生に見送られ、全国に戻って行かれました。
消防大学校では、消防職員(市町村の常勤職員)のほか、消防団長も受け入れています。今回、卒業された団長さんたちは、20名。平均年齢60歳です。
ご存じのように、消防団は職業を持ちながら、ボランティアで消防に従事してくださる人たちです。全国に約90万人おられます。常勤の職員は16万人ですから、その大きさがわかります。かつては、常勤の消防職員は都会しかいなくて、田舎は消防団だけでした。全国に消防署ができたのは、昭和40年代以降です。詳しくは、消防庁のホームページをご覧ください。
団長科は9日間のコースです。でも、農業なり商店なりお勤めなり、お仕事をお持ちですから、休んで入校するのは、大変なことです。もちろん、日頃の訓練や出動も、仕事を持ってのことですから、ありがたいことです。
日本のボランティア活動の中でも、元祖だと、私は考えています。しかも、危険を伴う活動です。