目標による人事評価

消防大学校では、今日は、警防科(60人)の入校式がありました。明後日は、幹部科の入校式があります。ところで、国家公務員の目標による評価が、10月から本格的に始まりました。内容は、二本柱からなっています。
一つは、能力評価で、あらかじめ定められた項目ごとに評価されます。これは1年後の9月30日までが対象期間ですから、評価は来年です。もう一つは、業績評価で、各人が目標を申告し、その結果を評価します。最初の対象期間は3月31日までの、半年です。すなわち今回、この業績評価のための目標を、申告するのです。私も、申告しました。
この問題については、連載「行政構造改革」第2章四で官僚制の問題を取り上げ、その2(3)で公務員の評価を論じました。目標による評価には、このような個々の公務員の評価とともに、各組織についての業績評価も課題です。

秋の休日

ようやく転任の挨拶状を書き終え、一息つきました。この1年間、多くの方からご声援をいただき、ご心配もかけたので、一言お礼を言わなければと考えました。出すのに1か月もかかり、また多くの方に出していないので、申し訳ありません。気にはなりつつも、夜はいろんな方が「慰労会」をしてくださり、休日は美術館など行きたいところもあって、なかなか進みませんでした。
この秋には、根津美術館が再開し、山種美術館が移転再開しました。上野でも、いろんな美術展が開かれています。本屋には、読みたい本が並んでいます。その前に、買ったままで書斎に積んである本もたくさんあります。1年間の経験で、知りたい分野・好奇心の対象が、さらに広がりました。いくら時間があっても足りません。困ったものです。

国際金融危機と政府の役割

昨年9月にいわゆるリーマンショックが起き、世界規模の金融危機が発生しました。そしてそれは、世界同時不況を引き起こしました。100年に一度の危機、あるいは戦後最大の不況といわれるほどの激震でした。対応を誤れば、世界恐慌の恐れがありました。いろんな考察がされていますし、これからも出されるでしょう。
私も官邸で、いろんなことを考えました。
まず、政府の責任、日本政府は何をするべきかです。国際金融という世界は、二つの意味で、政府との関係が難しいです。一つは国際的ということで、それを監視する責任ある組織がありません。国内なら、各国政府の仕事です。もう一つは、市場に対し、どこまで政府が関与するかという問題です。日本政府が提案した内容は、官邸ホームページに載っています。また、世界恐慌を避けるため、政府は各国と協調して、内需拡大策を採りました。
国際金融市場の不安定性に対し、早くから警鐘を鳴らした学者に、スーザン・ストレンジがいます。「カジノ資本主義」や「マッド・マネー」などの著者です。彼女は、「カジノ資本主義」の中で、結末(現状)を導く重要な決定について、次のように書いています。
・・外交の場合は、例えば戦争をするかどうかは、国家(政治)が決める。しかし、通貨システムの場合は、国家(政治)と市場の両方がある。そして、国家が決定する場合、規制などで市場に介入するという「積極的に決定」する場合と、市場に介入しないでなりゆきに任せる「消極的な決定(非決定)」とがある。
市場がグローバルであることと、技術の変化によって、非決定の方が一般的である・・
私は連載「行政構造改革」で、官僚の不作為(第3章二1注41)や、政治の決断の先送り(第3章三2)を取り上げました。

リスク再論・政府が取り組む課題

10月22日の日経新聞経済教室に、林良造先生の「政府、リスク管理手法磨け」が載っていました。政府が、リスクに取り組むべき方法について、参考になりました。しかし、私は、少し違った考えを持っています。
先日も書きましたが、リスクを分類し、狭いリスクと広いリスクを区別すべきだと思います。
先生も、「政府の役割とは、自然や人為的な大規模な破壊による被害を予防・軽減し・・」と書いておられます。私が言う狭いリスクは、これです。
一方、先生が議論を展開しておられる、財政赤字、規制改革の遅れ、不明朗な政策の優先付け、行政機関の様々な不祥事などは、狭い意味でのリスクではありません。これらは、確かに将来、政府に被害を与えます。しかし、自然や人為的な破壊では、ないのです。
リスクは発生が他律的であり、いつ起こるかわからない、発生時刻と規模が予想できないといった特徴で区分すべきです。
政府の政策の遅れや、内部の不祥事は、破壊による被害には該当しません。さらに、リスク管理として、立法プロセスや官僚機構の問題までを視野に入れると、「政府の課題」がすべて、リスク管理に含まれます。確かに、官邸が対処しなければならない問題は、すべてリスクになります。しかしそれでは、政治学がすべてリスク学になってしまいます。

日本の政権交代・社会勢力の争いではなかった

フランスの社会学者エマニュエル・トッドさんの発言(2009年10月21日、日経新聞夕刊)。
・・日本の政権交代に驚いたのは、近年のヨーロッパの動きとは、まったく異なるからだ・・しかも予想外だったのは、私が知る限り、年齢や社会階層による支持政党や投票行動に、大差がなかったことだ。フランスなら若者や労働者は、左派を支持する傾向が明確にある。してみると、日本は一つの「全会一致」から別の「全会一致」に変わっただけで、ある勢力の勝利によって過去を完全に断ち切ったのではない、と言えそうだ・・