【交付税削減問題】
財務省が、「地方財政にはムダがある。地方財政計画どおり使われておらず、流用されている。よって、地方交付税を7.8兆円削減するべき」と主張しています(10月22日諮問会議での谷垣大臣など)。この問題について解説しましょう。
1「地方財政計画には不適切な過大計上があり、7.8兆円を今後2年間で削減」という主張について
地方財政計画は、総務省と財務省が作り、内閣から国会に提出したものです。作った本人が「過大である」と認めるのは、正直なのか無責任なのか・・。麻生大臣も、「今年の地財計画は、谷垣大臣もサインしたもの。それが間違いだったというのは・・」と、あきれておられます。
こんなに大きい金額の間違いがあるのなら、普通は関係者は処分されて当然でしょう。でも、関与した大臣も留任、担当主計官も留任しておられます。そう言えば、自らの役所がした査定に向かって「3大バカ査定」と批判した幹部がいた役所ですからねえ。もっとも、彼は先輩たちの査定を批判したのであって、自分の査定を批判したのではありません。
官僚論はこれぐらいにして、理論編に入りましょう。
2「ペットの不妊手術代とか乳幼児医療助成など、不適切な経費が地方財政計画に計上されている」という主張について
この主張には、「誤解させる」表現があります。
まず、そのような経費を支出している地方団体があるのは、事実です。しかし、そのような経費は地方財政計画には、計上していません。では、どうして地方団体は、そのような経費を支出できるか。
(1)計画にはすべての支出を計上するわけではない
①計画と決算の規模の差
まず、地方団体の決算と地方財政計画との間に、規模の差があります。地方財政計画は近年では85兆円程度ですが、決算は100兆円近くあります。
②地方が自ら財源を捻出
その差の10兆円ほどの部分は、各自治体が自らの財産を売ったり、積み立てた貯金を取り崩したり、超過課税をして、財源を捻出しています。そして、地方団体が自由に使っています。
この部分なら、国は関知しません。
(2)計画と決算のずれ
①計画は予算ではない
次に、地方財政計画はあくまで計画です。各自治体の予算を縛るものではありません。国が、「この程度の仕事をしてほしい。そのためにはこれだけ財源を保障しますよ」と、計算するために作っています。
そこに含まれている財源のうち、国庫補助負担金は、決められた目的に使わなければなりません。また、歳出のうち、法令で決められたものは、そのように使わなければなりません。それ以外は、地方団体の自由です。首長が決め、議会が賛成すれば良いのです。国が決めたとおり支出するのなら、地方自治とは言いません。
②地方の判断
今、問題になっているのは、投資的経費と一般行政経費(経常経費)との「入り繰り」です。経常経費は、決算の方が計画を2.9兆円(一般財源で)上回っています。一方、投資的経費は、決算の方が計画より2.6兆円下回っています。計画では投資的経費に充てるとした財源が、経常経費に充てられているのです。これを、財務省は問題にしています。
確かに、「計画だから決算と乖離しても良い」とはいえ、あまりかけ離れると計画の意義が失われます。なぜこんなに乖離が出たか、が次の問題です。
地方の言い分は、「建設事業より福祉に力を入れたい」です。そして、「財源がどんどん減る中で、福祉より建設事業を削減したい」ということです。だから、「地方財政計画を実態に合わせるべき」ということになります。