神野直彦東大教授と池上岳彦立教大学教授の編集による「地方交付税何が問題かー財政調整制度の歴史と国際比較」(東洋経済新報社)が発刊されました。以下、はしがきの要約です。
「競争社会」を目指す経済学思想に基づいて、地方交付税制度は破壊されようとしている。「地方交付税は弱者に甘えをもたらし、非効率であるがゆえに、弱者となった者に非効率な乱費をもたらすだけである」などと、したり顔で主張されている。
こうした「構造改革」が失敗しているのは、「何のために改革をするのか」という改革の基本原則を無視したからである。地方交付税の改革もまた、財源保障機能の廃止を言い出すに及んでは、ヴィジョンなき破壊の典型である。必要な改革は、制度の破壊ではなく、未来の設計図を準備した改革である。本書では財政調整制度を国際比較と歴史的観点から分析し、財政調整制度の改革の方向を提示する。
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米国まめ日記8
東大夏学期終了
東大での夏学期の講義が終了しました。13回は、済んでしまうとあっという間ですね。いつものことですが、始まるまでは緊張し、途中は準備でへとへとになり、終わると少しの満足と、ああすれば良かったという大きな後悔が残ります。そして、参加者がどれぐらい満足してくれたかという不安と。
今回は、本や新聞にも書かれていない、日本の行政と政治を講義しました。一方で個人体験に基づく「現実の紹介」をし、他方でそこから見える問題の構図を「理論的に分析」することです。新しい試みなので、私の思いがどれだけ通じたか、少し心配です。成績評価のための学生のリポートを見て、逆に自己評価をしてみます。学生から提出されるリポートが楽しみです。
学会発表余話
実は、学会の講演では、かなり抑えて話しました。話のスピードも、「唾のとばし方」も、そして内容の「つっこみ方」も。いつもの調子の、半分ぐらいの「血圧」でしゃべりました。参加者の評価は、「岡本課長も、あんな話し方ができるんですね」「分かりやすかったですが、もっと話したいことがあったんじゃないですか」「いつもの全勝節じゃなかった」などなど。
抑制して話したのは、聴衆には研究者から町村職員まで様々な人がいるので、その反応を確かめながら話したこと、また、公式の場でいつものように元気よく「脱線」するわけにはいかないからです。
さらに、真ん前の席に神野直彦東大教授、金子勝慶應大学教授、中井英雄近畿大学教授、齋藤愼大阪大学教授などなどが座って聞いておられるのですよ。こんなに晴れがましい、かつ緊張する機会は、めったにないでしょう。
2003年地方財政学会
7月4日、5日と札幌で、日本地方財政学会2003年度総会が開かれました。300人近くが参加し、大盛況でした。基調講演をさせていただきました。テーマは、「交付税の現状と改革課題」です。1週間前に三位一体が決まったばかりで、ホットな話題を解説しました。
各分科会も、税、国と地方、公共事業、福祉、地方債、海外事情と盛りだくさんでした。発表者も研究者と実務者、海外からの参加と、内容も理論研究、シミュレーション、事例研究と、バラエティに富んでいました。「大会プログラム」をご覧下さい。夜は、全国の研究者と懇親を深めてきました。
5日の北海道新聞も、紹介してくれました(川村記者ありがとう)。概要は、「第11回地方財政学会の基調講演と概要」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2003年9月号に、まとめてあります。
各自治体が今後の税財政を考えるに当たっても、研究の第一線を知ること、また研究者と知り合いになることは、有意義だと思います。自治体の職員の加入も大歓迎です。会員は現在500人を超えています。
写真は、玉岡神戸大学助教授の提供です。