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「新しい基礎自治体像について」

2005年1月16日   岡本全勝
自治研究」平成16年12月号、17年1月号(第一法規)に、山崎重孝総務省行政体制整備室長の「新しい基礎自治体像について」が連載されています。十分に検討されることなく使われている「基礎自治体」という概念について、これまでの位置づけの変化・社会経済条件の変化・将来予測などを論じています。
制度の解説でなく、これまでの評価やこれからのあり方など、長期的かつ広い視点からの、読み応えある論文です。筆者は、地方行政制度の第一人者です。これからの自治体を論じる上で、重要な論文でしょう。ご一読をお奨めします。

三位一体改革40

2005年1月9日   岡本全勝
26日の日本経済新聞は、小泉政権の経済政策について、エコノミスト234人の評価を載せていました。「6割以上の人が60点以上の及第点をつけた」そうです。
評価される点は、「手つかずの課題もあるが、首相自ら課題を設定、実行している。政権が長期にわたり、政策が継続している」「公共事業を減らしても、景気が回復する実例を作った」です。
最優先課題は、年金改革が1番で、三位一体改革が2番目、次が景気対策です。三位一体は、ここまで来ました。(12月26日)
27日の日本経済新聞「2004年地域経済回顧と展望」で「三位一体改革・地方関与が前進」を取り上げていました。「国会が地方分権の推進を決議して11年。分権に向けた政策決定に地方が直接関与する仕組みが今年、初めて整った」「『政府は約束を果たした、首長も地方の経営をしっかりとやってほしい』地方交付税の総額確保が決着した今月18日、麻生太郎総務相は全国の首長に奮起を促した」(12月27日)
麻生総務大臣の12月24日の記者会見が、総務省HPに載りました。今年の締めくくりとして、20分間にわたって、三位一体改革の評価を述べられました。ご自身の語り(読み上げでないもの)なので、少し読みにくいところがありますが、ご了解ください。大臣の生の声を、お聞きください。
28日の読売新聞「2004年回顧検証2」は、「三位一体改革:地方の声に省庁は反撃」でした。三位一体が、今年の政治でもっとも進んだ課題だったことは、間違いないでしょう。詳しくは本文をお読みいただくとして、さわりだけを紹介します。
「地方の声を聞いたのは、ぺり-以来150年ぶりだ」「閣僚と地方自治体代表が激突」「文部省の新聞広告に対して、飯島首相秘書官が『小泉をつぶす気か』と激怒」「小泉首相はこう語った。『今後、国と地方の役割について、より踏み込んだ議論ができるんじゃないか。いいきっかけになった』」
「地方と省庁が激突」という構図は、去年までなら、ありえませんでした。今はそれを、新聞が当然のことのように解説します。「進展が少ない」という批判もありますが、これだけで、今年の三位一体=麻生大臣の仕掛けと努力が成功したと、私は評価します。
毎日新聞「記者の目」は、加藤春樹記者の「地方分権は進んだか:国と四つ相撲した6団体、次は国民を味方にして」でした。この論文も、明快でした。詳しくは紹介できませんので、本文をご一読ください。(12月28日)
三位一体改革の目標と実績を最新版にしました。お使いください。四捨五入の関係で、端数が合わないことがあります。(12月28日)
29日の読売新聞「解説」では、青山彰久記者が「分権・改革の覚悟、地方に必要」を書いておられました。「2005年は分権推進法成立から10年になる。」しかし「地方財政改革の改革速度は遅い」「地方6団体は、新しい制度の設計を提案し、地方から分権政策の立案に参画する力を高めることが不可欠だろう」「自由を求めれば責任も問われる」(12月29日)
30日の朝日新聞「04年日本経済・激動の主役(下)構造改革」は、「号令先行、結論と落差」という見出しで、郵政民営化と併せて三位一体改革を詳しく解説していました。(12月30日)
5日の朝日新聞「私の視点」に、山田啓二京都府知事が「三位一体改革、中央集権復活を憂える」を書いておられました。毎日新聞「よくわかるページ」は、三位一体改革の意味を、マンガ入りで分かりやすく解説していました。(1月5日)
9日の日本経済新聞「風見鶏」で、安藤俊裕編集委員が「骨抜きと先送りのツケは」として、政府・自民党の意思決定過程のあり方が異様であることを、解説しておられました。
「首相や内閣が掲げた改革構想が、自民党や官僚との調整プロセスでもみくちゃになり、結果は骨抜きと先送りである。首相・内閣が責任をもって政策を実行する一元的責任政治とは、ほど遠い姿と言ってよい」
「三位一体改革は、政府与党の統治能力を疑わせるような体たらくだった・・・」として、代表例に三位一体改革が取り上げられていました。
何度も書いたように、三位一体改革の目的は、日本の政治過程・政治構造を変えようとするものであるとともに、その実行過程が、日本の政治過程を反映したものなのです。
また、政治過程をあるべき姿にするためには、総理の政治力の他に、ここに書かれているマニフェストも有効です。そのために、新聞などによる検証が重要でしょう。期待します。
1面の連載「少子に挑む・ニッポン大転換」は、「未来描けば廃墟の山」を載せていました。需要予測を曲げてまで作った公共施設。そしてその維持費や修繕費が賄えません。この問題は、みんなが気づいています。問題を知っていながら先送りする組織。
官僚組織は、拡大の時には適していますが、縮小や終結には向いていないようです。開戦時に戦争終結を考えた日露戦争と、「一暴れして見せます」と言って勝算なき戦いに入った太平洋戦争との違いが、思い出されます。
政治家が責任をもつべきなのか、官僚が変わるべきなのか。続きは、またの機会に。(1月9日)

ページ開設3周年

2005年1月8日   岡本全勝
このホームページを開設してから、3年が経ちました。最初は、大学院での授業のために作りました。その後「下宿人を置いて、お客の呼び込みもしました。1年目は合計30ページ余りをつくり、総観客は1万人でした。2年で合計100ページ、累計観客4万人でした。3年で200ページを超え、観客累計は18万人を超えました。
この1年は、「日々の三位一体改革」や「法律ができるまで」「国会というところ」をたくさん追加しました。これが「観客動員」につながったと思います。ある人からの年賀状に「最近HPの更新が多いですが、飲む機会が減ったのですか」と書いてありました。うーん、そうかなあ。
最初のころ1日3人だった観客は、最近は平日は600人を超えます。ありがとうございます。これからも、ご期待に応えられるようにがんばります。

三位一体改革39

2004年12月24日   岡本全勝
これまでの3年間の進行過程を、表にしました。「三位一体改革の目標と実績」です。ご利用ください。(12月11日)
この表が、好評です。何人かの先生や政治関係者から、「出典を明示するので、使わせてもらいます」と連絡をいただきました。どうぞ、どんどん使って下さい(12月15日)
(17年度交付税総額)
18日に、麻生大臣と財務大臣の折衝が行われ、17年度の地方財政対策が決まりました。地方交付税総額は、前年度並みとのことです。地方団体には、これで安心してもらえます。
16年度の交付税総額(+臨時財政対策債)が大幅に減ったことから、17年度総額について地方団体は重要な関心を持っていました。「骨太の方針2004」や、11月26日に決まった「全体像」政府与党案でも、「17・18年度は、地方団体の財政運営に必要な総額を確保する」と明記してありました。
もっとも、重要なのは地方財政計画の姿と、地方税(+臨財債)などを含めた一般財源総額です。交付税総額は、〈歳出総額-特定財源-地方税など〉によって決まるのですから。
その際の新聞の「変な記事」については、マスコミ論1をご覧ください。(12月18日)
(社会のキーワード)
読売新聞によると、今年1―11月に記事中で使われた言葉の頻度や増加傾向などを基に予測した「2005年の注目キーワード」上位10位に、「三位一体改革」が選ばれたそうです。(12月18日)
18日に決まった17年度の地方財政対策は、総務省のHPをご覧ください。ここには、ポイントを書いておきます。
①地方財政計画規模=1.3兆円、1.5%減
②計画と決算との乖離是正=投資からソフト経費へ0.35兆円
③交付税総額横ばい、臨時財政対策債1兆円削減、「税+交付税+臨財債」は横ばい。
④財源不足=総額11兆円(3兆円減)、通常分7.5兆円(2.7兆円減)
⑤国庫補助金改革・税源移譲=1.1兆円。うち、所得譲与税化(老人ホーム運営費など)0.7兆円、税源移譲予定特例交付金化(義務教育)0.4兆円。
国の一般会計歳出では、交付税総額は0.8兆円減(特例交付金を入れると0.4兆円減)なのに、地方財政計画ではなぜ横ばいか。
それは、国の交付税特別会計で加算したからです。その財源は、16年度の剰余金です。国税の増による交付税財源の増加を、16年度に使わず、17年度に繰り越したのです。その処理のための、16年度補正予算と交付税法改正を、1月の国会に提出します。(12月20日)
19日の毎日新聞「発言席」に、梶原拓知事会長が「地財計画に分権潮流反映を」を書いておられました。20日の朝日新聞夕刊「窓」には、坪井ゆづる論説委員が「真摯とどぶ」と題して、参議院決算委員会での与党議員の追求を書いておられました。
なお、地方交付税の正式名称(法律などでの名称)は、「地方交付税」です。国の予算書に歳出として載る場合に「地方交付税交付金」という名前が使われます。それが交付税特別会計に繰り出され、地方に配分されるときには「地方交付税」です。(12月20日)
21日の日本経済新聞は、国の予算案の解説の中で、三位一体改革を詳しく解説していました。「国・地方の効率化停滞」という表題は、記事の内容とずれていましたが。20日の毎日新聞夕刊でも、宮田哲記者が「税源移譲9割が必要経費。分権・行革、効果乏しく」を解説していました。(12月21日)
22日の朝日新聞は「来年度予算案」「分権社会遠い道のり。首相、かすむ指導力」を解説していました。23日には、「義務教育費削減問題、官邸・文科省譲れぬ解釈」を解説していました。また23日の日本経済新聞は、「義務教育国庫負担、自民文教族温存へ始動」を書いていました。
でも、変ですよね。文部科学大臣って、総理に任命されているんです。三位一体改革が、日本の政治過程・政治構造・総理の指導力を問うもの、変革しようとしているものであることが見えます。(12月23日)
ご要望にお応えして、簡単な解説「三位一体改革の基本解説」を載せました。初心者の方には、三位一体改革は難しいですものね。さらに加筆中です。(12月18日、19日)
24日の朝日新聞「私の視点」に、小西砂千夫関学教授が「地方税を上げ赤字解消を」を、書いておられました。また同紙夕刊では、1面トップで大きく、板垣記者が、来年度予算政府案のうち、三位一体に焦点を当てて解説していました。図表も工夫してあり、わかりやすかったです。(12月24日)

三位一体改革38

2004年12月16日   岡本全勝
4日の朝日新聞も、知事アンケート結果を載せていました。「大半の知事が不満や批判を表明した」。不満の内容は、昨日書いたとおりです。評価できる点は、国と地方の協議の継続・税源移譲の実現・交付税総額確保などです。
あれほど隔たりがあった、政府(地方案)と与党が合意し、「双方五分五分」といわれるのですから、地方側は不満があるでしょう。
でも、これで終わったわけではありませんから、次に向かって頑張ればいいのです。分権は、一回の決定ですむような課題ではありません。仕掛けと手順が必要なのです。そのために、土俵も設定してあります。後は、盛り上がりを続けられるかどうかです。それは、地方団体側の努力にかかっています。観客も見ています。(12月4日)
4日の東京新聞も、全知事へのアンケート結果を載せていました。5日の産経新聞「紙面批評」は、「多角的に改革の検証を」を書いていました。「・・新聞は記事に・・という見出しを掲げたが、これでは、読者の目には国と地方、あるいは省庁同士が単に権限争いをしているように映ってしまうのではないだろうか」「マスコミが一件落着を許さず、ネチネチと報道し続けることが、改革の次のステップにつなげていくことになるのではないか」。同感です。(12月6日)
5日の読売新聞「政思万考」では、「地方の意見を聞くとは、幕末に老中阿部正弘が諸藩にペリーへの対応方法を求めたとき以来、なかったことだ」という話を紹介し、その後、幕府が滅びたことを書いていました。確かに、諸侯の意見を聞くのは、幕末開国をめぐって(1853年)以来のことですが、違う点もあります。
150年前は意見を求めたのに対し、今回は原案作成を依頼したこと。よって、前回はそれぞれ意見を出したのに対し、今回は意見をまとめたことです。今回はそれだけに、地方の対応は、すごいことなのです。
従来型の統治システムが限界に来ているという点は、類似しているように思えます。幕府も現在の日本政府も、有能な官僚をそろえながら、改革できないという点も。その後、日本が新しい時代に適応できるように「脱皮」するかどうかは、その後の政治にかかっています。明治国家は、それを成し遂げましたが。
諸侯に意見を聞いたことで、幕府の権威が落ち、政治秩序が流動化しました。今回「地方に原案作成を依頼したこと」が、新しい政治構造を作る動きへと「うねりが高まる」かどうか、これは関係者の動きにかかっています。(12月6日)
7日の産経新聞「正論」は、「教育の地方分権化が馴れ合い行政防ぐ」を主張していました。朝日新聞は文科省「補助金減でも国の権限維持」を書いていました。三位一体改革が、お金の奪い合いにとどまらないことが、よく見えます。(12月7日)
8日の朝日新聞「私の視点」は「補助金改革、地方の発想生かす運用を」を載せていました。また、日本経済新聞は、小泉総理が、「地方の意見を聞くのは幕末黒船以来のこと」と自賛しておられると伝えています。150年ぶりのことです。(12月8日)
麻生総務大臣の最新コラムは、「分権への開国-三位一体改革の全体像の取りまとめを終えて-」です。(12月9日)
【増税?】
来年度の税制改正が、与党でまとまりました。新聞では、「増税」「家計に負担の増」と書かれています。確かに「来年度の国民には負担の増」となりますが、この表現では一面しか伝えていません。
まず、今回の主な部分は、定率減税の廃止です。これは「減税の廃止」です。その意味では、「増税」ではありません。この半世紀間、日本が本格的増税をしたことがないことについては、拙著「新地方自治入門」p299をご覧ください。
次に、総理も発言しておられるように、この減税をした分は、赤字国債・赤字地方債で埋めています。即ち、将来の国民=子供や孫たちに負担させています。来年の国民への「増税」は、国債や地方債を減らします。それは、国債等の償還金の減=将来の国民にとって「減税」になります。もっとも、将来の国民からすると、「そもそも負担しなくてもよい、親父たちの借金の返済」が減るのですから、当たり前のことです。
この「減税廃止」をしても、なお多額の国債を発行し、将来の子供たちに送りつけているのです。現在の政治では、「将来の国民の声」が反映されません。もし彼らが発言したら、「もっと増税せよ」と言うでしょう。「自分たちの世代の受益は自分たちで負担せよ。子や孫に負担を送るな」と。このように「世代間の公平」が無視されています。その意味では、私たちの世代は「とんでもないこと」を続けています(前掲拙著p115)。
本当の増税は、赤字国債を発行しなくても良いようにすることです。(12月16日)