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地方行財政-三位一体改革

三位一体改革・交付税改革

総務省HP平成17年12月からの抜粋)
1 総額の大幅な抑制(H16~H18年度)
交付税総額(臨財債を含む)の抑制
△ 5.1兆円(うちH18年度△1.3 兆円)
2 制度の改革等
(1) 「行政改革インセンティブ算定」の創設・拡充
 歳出効率化努力に応じた算定(H17年度約400億円)
 徴収率向上努力に応じた算定(H17年度約100億円)
(2) 企業誘致等による税収確保努力インセンティブの強化
 道府県分の留保財源率を20→25%
(3) アウトソーシングによる効率化を算定に反映
 ゴミ収集、学校給食等について、アウトソーシングによる効率化を前提とした算定(約△2,000億円)
(4) 段階補正の縮小
 小規模市町村の算定を効率的な団体を基礎に縮減(約△2,000億円)
(5) 算定の簡素化
 都道府県分の補正係数を概ね半減
 事業費補正(事業量に応じた算定)の大幅な縮減
(6) 計画と決算の乖離の同時一体的是正
 H17年度に3,500 億円、H18年度に1兆円(一般財源)の是正を実施
(7) 財政力格差拡大への適切な対応
 税源移譲分を基準財政収入額へ100%算入(当面の措置)
(8) 不交付団体の増加
 人口割合(市町村) H12年度11.5% → H17年度18.4%
(2010 年代初頭には人口割合1/3、税収割合1/2を目指す)
各年度の改革を表にしたものは三位一体改革の目標と実績

三位一体改革の基本解説4

4 地域間格差はどうするのですか
(1)差がつく仕事、つけない仕事
事務の種類を、2つに分けて考えるべきでしょう。
義務教育・保育・生活保護・介護・警察・消防といったサービスは、日本中で最低限は保障すべきものです。国家として国民に「ナショナル・ミニマム」を保障すべきでしょう。これらについては、法令で地方団体が守るべき最低基準を義務付け、財源も保障します(国庫補助金でなく地方交付税でできます)。
もちろん、その基準以上に、各団体がサービスを上乗せするのは自由です。
その他の事務、例えば、公共事業・産業振興・内部事務費などは、それぞれの地域で自由に競争して良いと思います。一定額の財源を保障すれば、その中で工夫してください。
(2)国庫補助金が廃止された場合、それと同等の税収が増えない団体はどうしますか
日本全国で、廃止補助金額と税源移譲額を同額としても、各団体事にはでこぼこが生じます。これについては、税源移譲の際になるべく差がつかない方法を考えています。それでも差がでる分は、地方交付税で調整します。
【第3部:税源移譲】
国から地方への税源移譲って何ですか
(地方には財源が必要)
国庫補助金を廃止するだけでは、地方団体は困ります。仕事はなくならないのですから。それに見合うお金が必要です。
そのためには、地方税を増税する、または地方が自由に使えるお金(地方交付税、あるいは使途を特定しない交付金など)を国から交付する方法があります。地方自治のためには、地方税が一番です。自分で集めて自分で使うのですから。
(税源移譲の方法)
国民の負担を上げないで地方税を増やす方法が、「国から地方への税源移譲」です。
今回行う方法は、個人の所得にかける国税を、地方税に移すのです。即ち、私たちの所得には、国税として「所得税」が、地方税(県税・市町村税)として「住民税所得割」がかかっています。
例えば、所得税を10%・住民税を5%・合計15%払っている人がいると、所得税を5%・住民税を10%・合計15%にすると、国の取り分が減り、地方の取り分が増えます。個人の(国民の)負担は変わりません。
(国と地方の損得)
もし、3兆円国庫補助金を廃止するとしたら、3兆円を税源移譲します。すると、国は、歳出(国庫補助金)が3兆円減りますが、歳入(国税)も3兆円減るので損得なしです。予算規模は3兆円減ります。
地方は、歳入(国庫補助金)が3兆円減りますが、歳入(地方税)が3兆円増えて、損得なしになります。ただし、個別の団体ごとには、でこぼこが生じることがあります。
【第4部:地方交付税】
地方交付税って何ですか

三位一体改革の基本解説3

2 国庫補助金廃止で、地方団体はどうなりますか
(1)自由になる
いちいち国にお伺いを立てる必要もなく、国の基準に縛られることもなく、自分たちで自由に事業ができます。
①どんな仕事をするか=福祉か公共事業かを選べる
②どのようにやるか=道路の幅を選べる
③どこをするか=道路ならどこの箇所を優先するか
(2)責任が増える
その代わり、地方団体には責任が生じます。
まず、自分で考えなければなりません。そして、どこに何をどれだけ使うかを選べるということは、それに対して責任を持たなければならないということです。「国の基準で・・」とか「補助金がないので・・」といった言い訳はできません。
(3)満足度が上がる
国の押しつけでない、自分で選べます。そこに、満足度が上がります。
(4)地域で差が生じる
地方団体の自由が増える、選択ができるということは、地域間で差が生じるということです。それは、より住みやすいまちづくりの競争が始まるという良い面と、取り残される町・失敗する町が出てくるという面の両方があります。
それが「自治」です。「画一」の反対は「個性」であり、「格差」です。
3 政治的位置付け
(1)地方分権
補助金廃止・地方への税源移譲は、単に国から地方へお金を移す=各省と地方団体のお金の取り合いではありません。日本の政治と行政の構造を変える、日本社会のあり方を変えようとするものです。
国庫補助金は、官僚が地方団体にいうことを聞かせる「手段」です。中央集権の手法なのです。それをやめようとしているのです。
日本の地方分権は、次の3つの段階を経て進みます。
①国と地方団体の関係を上下から、対等にする。これは2000年の第一次分権改革で達成しました。
②財源の分権=国庫補助金を廃止
③規制の分権=国による地方団体に対するコントロールを縮小
今取り組んでいる国庫補助金廃止は、この第2段階なのです。
(2)たとえ話
国庫補助事業を「給食」と、補助金をもらわない単独事業を「レストラン」と考えてください。貧しい時代には、給食は、みんなに栄養のある食事を提供しました。効率的でした。しかし、食生活が豊かになると、給食をいやがる子供が出てきます。「私は肉が嫌だ」「僕はこんなに食べられないよ」と。また「もっと美味しいのを出して」と、要求は上がります。
レストランだと、メニューの中から自分で選びます。満足度が上がります。もし選んだ料理がまずくっても、自分で選んだんですから、不満は出せません。
(3)住民生活はどう変わりますか。三位一体改革の効果が、わかりにくいのですが。
直ちには、変わりません。住民税が上がったりとか、教育が変わったりとかは、しません。分権は、地方自治体と各省の仕事のやり方を、変えようとするものです。
分権が進んだときに、頑張る自治体は、より安い税金でよりよいサービスをするでしょう。出来の悪い自治体は、高い税金で粗悪なサービスを提供するでしょう。それを監視する、しっかりした市長を選ぶのが、市民の務めです。
(4)日本の政治を変える
三位一体改革は(1)に書いたように、分権改革=行政改革ですが、それを超えて日本の政治改革なのです。

三位一体改革の基本解説2

【第2部:国庫補助金の廃止】
1 国庫補助負担金をなぜ廃止するの
(国庫補助金とは)
国庫補助金は、地方団体が仕事する際に、国(各省)が援助してくれるお金です。例えば、公立小学校の先生の給与の約半分は、文部科学省が県に支援してくれます。公立小学校の先生の給料は、県が払っているので、県は残りを自分の税金で賄います。県や市町村が、道路を作るとき、介護保健サービスをする時もです。大抵は、費用の半分を国が出してくれます。
このうち、法律で「国が負担する」と書いてあるのが国庫負担金です。国庫負担金は、国にも責任があるので「割り勘にします」というものです。一方、国庫補助金(狭義)は、国が地方団体への「呼び水」として出すものです。たいてい、二つまとめて「国庫補助金」と呼びます。
国が補助金を出さない事業もたくさんあります。公立高校の費用、多くの道路建設事業、国の基準を超えて小学校の先生を雇う場合、役場の事務費などです。国庫補助金をもらう事業を「補助事業」と、もらわずに行う事業を「単独事業」と言います。
(効果)
国庫補助金があったので、日本中に40人学級の義務教育が行き渡りました。介護保険もでき、道路も立派になりました。明治維新以来140年、戦後半世紀で、世界トップ水準の行政サービスを、全国同じ水準で整備できたのも、国庫補助金のおかげです。
国庫補助金制度の利点は、次のようなものです。
①地方団体は、お金が半分あればできる。
②日本中に、国が考えている同じサービスを行き渡らせることができる。
③地方団体は、何をどうつくるか悩まなくても良い。
(弊害)
しかし、「全国で同じものを」という目標をほぼ達成したことで、国庫補助制度の弊害がでてきました。それは、上に書いた利点の裏返しです。
①無駄な事業も行われる。
例えば、ある村が道路を作ろうとします。交通量も多くないので細い道路なら、6千万円でできるとしましょう。しかし、国庫補助事業なら、幅の広い道路が1億円でできるとします。普通なら、6千万円の道路を作るでしょう。でも、補助事業の方は、自前の負担は5千万円で済みます。「じゃあ、立派な道路を作った方が得だ」となってしまいます。
②同じサービスということは、「画一的」ということです。
上に述べたように、その町にあった仕事ができないのです。学校でも、難しいクラスは先生を増やすといったことも、できません。
③地方は自立しない。
国の言うことを聞いていると、地方は自分で考えません。何かあると、「国に頼んでみましょう」、「補助金がつかないので、できません」となります。
④時間と金のムダ。
国庫補助事業は、一つ一つ国(各省)に、お伺いを立て、許可を得て、仕事をします。また終了後は、国の検査があります。そのために、補助金を申請する地方団体も、許可をする省も、膨大な人と手間をかけています。
⑤国にはもっと重要な仕事がある。
国の各省には、もっと他に、しなければならない仕事があります。国際社会でどう付き合いをするのか、どのように貢献をするのか。学力の低下をどうするか、年金は破綻しないかとか。国のあり方を考えなければなりません。××村の道路や、○○町の教員の配置は、県や市町村に任せればいいのです。
(解決策)
国庫補助金を廃止して、それに見合うだけのお金を地方団体に渡して、自由にやってもらえばいいのです。すると、地方団体は住民の意見を聞いて、必要だと思うところにお金を使うでしょう。立派な道路を作る代わりに、細い道路で辛抱する。またそのお金を、教育に使うとか。

三位一体改革の基本解説

これは、平成14年から18年までに行われた、「三位一体改革」の解説のページです。詳しい経緯は、進む三位一体改革ーその評価と課題」「続・進む三位一体改革」として、論文にまとめてあります。
三位一体改革までの地方財政改革(平成14年春以前)については、拙著
「地方財政改革論議」をご覧ください。
また、「三位一体改革についての座談会」神野直彦東大教授や柏木孝大阪市財政局長らとの座談会(月刊『
地方財務』(ぎょうせい)2003年7・8月合併号や、「第11回地方財政学会の基調講演と概要」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2003年9月号もあります。 

三位一体改革の経緯(簡略版)
地方財政改革の経緯
三位一体改革の目標と実績
地方案の実現度
三位一体改革(補助金改革・税源移譲)金額内訳
三位一体改革・交付税改革1 三位一体改革って何(概要)
①国庫補助負担金の廃止削減(→詳しくは基本解説2
②国から地方への税源移譲(→詳しくは基本解説4
③地方交付税の見直し(主に総額削減)
の3つの改革を一緒に行うことから、「三位一体の改革」と呼ばれています。
平成14年6月「骨太の方針2002」でこの方針が決められ、名前が付けられました(キリスト教の教義とは、関係ありません。念のため)。

2 何のためにやるの(目的)
2つの目的があります。
1つは、「地方分権」のためです。①と②がこれに当たります。
もう1つは、「財政再建」のためです。③がこれに当たります。
この2つは、まったく違う目的です(①と②はセットですが)。
それを政治的に、「三位一体改革」と名付けたのです。目的の違う2つを一緒にやろうとしているので、わかりにくいです。

3 なぜ一緒にやるの(意図)
3つの改革がそれぞれに難しく、進みにくいので、「この際一緒にやってしまおう」という、政治的意図からです。
①は、各省とそれを応援する国会議員が反対します。また、財務省も積極的ではありません。権限が縮小する、仕事がなくなる(失業する)からです。
②は、財務省が反対します。国税が減るのですから。
③は、地方団体が反対します。総務省も、「理屈のない削減」には反対です。
それぞれ反対が強く、「三すくみ」と言う人もいます。そこで、一緒にやることで「三方一両損」を狙っている、ともいえます。

4 どうしてなかなか進まないの(困難さ)
3に書いたように、それぞれに(特に①②に)抵抗が強いからです。国庫補助金は、官僚の重要な権力の源泉、中央集権の手段であるといわれています。また、補助金がなくなると、多くの官僚が「失業」します。関係する国会議員も、「口利き」「補助金の地元への誘導」がなくなり、「寂しくなる」といわれています。
補助金を廃止し中央集権をやめることは、これまでの「日本の政治構造」を転換することなのです。
そして、官僚と国会議員は、現在の日本の「政治決定権」を握っています。その人たちにこのような改革を求めることが、無理な話ともいえます。「補助金廃止・税源移譲」は、本来、政権交代がなければできないほどのことなのです。

5 なぜ少しずつ進んでいるの(進展している理由)
(1)時代の要請
1つには、時代の要請があります。中央集権システムは、日本が発展途上にあるときには、効率的でした。しかし先進国になり、社会が成熟したときには、相応しくないシステムです。国民の多くが、地方分権が必要であると考えています。マスコミや論壇の主張も、分権を後押ししてくれます。

(2)小泉内閣
小泉総理は、「自民党をぶっこわせ」をスローガンにしておられます。そして、三位一体改革は、内閣の重要テーマになりました。16年秋に、これがもっとも大きな政治争点になり、連日新聞をにぎわしたことは、みなさん覚えておられるでしょう。
また、総理と麻生総務大臣が、補助金配分に深く関与した政治家なら、補助金廃止には手をつけられなかったと思います。さらに、麻生大臣という実力者が、担当大臣であることも大きいでしょう。

(3)仕掛けと場
しかし、総理のかけ声だけでは改革は、進みません。官僚がサボタージュするからです。進めるためには、それなりの「仕掛け」が必要です。
①諮問会議
まず、経済財政諮問会議という「場」が、重要です。ここが、改革の司令塔になります。そしてこの会議は、会議概要が公表されます。政治家は責任ある発言をしなければなりませんし、うやむやにすることもできません。
②目標の閣議決定
次に、三位一体改革は、「目標を決めること」によって、進んでいます。それも、「尺取り虫」のようにして、進んでいます。
方針を決めたのが、平成14年6月「骨太の方針2002」です。しかし、それではほとんど進まなかったので、翌年「骨太の方針2003」では、補助金廃止目標金額4兆円と期間(平成18年度まで)を決めました。
それでも16年度予算では、総理の指示がないと、1兆円の補助金改革も困難でした。そして、税源移譲は4千億円だけでした。そこで、「骨太の方針2004」では、税源移譲目標金額3兆円を決めました。
③地方団体に案を作ってもらう
さらに、ここでの重要な仕掛けは、「地方団体に補助金廃止案を考えてもらうこと」でした。
こうして、1つ仕掛けをしては少し進み、そして進まないことが見え、また次の仕掛けをして・・、と進めてきたのです

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