産経新聞のオピニオン欄「iRONNA(いろんな)」に、大江紀洋さんが、「原発賠償は終わりにしよう」を書いておられます。
・・・「賠償金でパチンコ、高級車」。よく耳にするこんな話だけでは本質は捉えられない。移住しようとしても帰還しようとしても、賠償金の格差が人々を曇らせてきた。損害賠償では未来は作れない・・・
・・・もちろん、避難者の生活再建はいまだ十分ではない。しかし、とくに「避難生活に伴う精神的苦痛に対し1人あたり月額10万円を支払う」という精神的損害賠償のあり方は、自立に進もうとする人を足踏みさせてしまうように見える。例えば、除染やインフラ整備が終わった楢葉町で、昨年前半には行うはずだった避難指示解除がいまだ実行されていない大きな理由の一つがこの賠償金である。避難指示解除から相当期間(この場合1年とされている)が過ぎると賠償金が打ち切られるからだ。
ある程度の期間分を算定して一括で前払いする、弱者への対応は別途用意するなど、細やかな制度設計は必要だろうが、震災後5年というこのタイミングで、避難区分などによらず、全域における「打ち切り」という方向性を打ち出していくことが、福島の未来のために必要ではないだろうか・・・
・・・現状、支払われている賠償金は不十分なのだろうか? 実は、これまで合意に達して支払われた賠償金の平均額はきちんと開示されている。最新の資料は、2014年12月末時点でのもので、原子力損害賠償紛争審査会の配布資料として公開されている。これによれば、4人世帯の場合、詳細は表のとおりだが、個人賠償(精神的損害賠償、避難費用、就労不能損害等の計)は4人合計で約4000万円、宅地・建物で約4000万円、家財で約500万円、田畑・山林で約500~1000万円、住宅確保損害で約2000万円が支払われている。 これらの各項目ごとの平均額は、それぞれ母集団が異なる(全てを請求しているとは限らないし、持家や田畑は所有している人といない人がいる)ため、足し上げることには注意を要するが、単純合計すれば、帰還困難区域で1億5318万円、居住制限区域で1億503万円、避難指示解除準備区域で1億351万円となる。賠償金がどの程度であれば適切かという判断は非常に難しいが、政治のリーダーシップでそろそろ区切りを示していくことが欠かせないのではないだろうか・・・
難しい問題です。原文をお読みください。
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心の復興事業
東日本大震災から4年以上が経過し、仮設住宅での避難生活が長期化する人や、災害公営住宅に移転した人の、心のケアやコミュニティづくりが重要な課題となっています。このため、被災者の人と人とのつながりをつくり、生きがいを持って前向きに暮らしていくための取組を、支援することにしました。「心の復興事業」と名づけています。その第1次採択が決まりました。
人とのつながりをつくること、生きがいを見いだすことを、他人が働きかけることは、なかなか難しいことです。本人にその気がないと、できません。しかしすでに、各地で町内会やNPOによって、その機会をつくる取り組みが試みられています。畑作業や手仕事をしてもらうなど、住宅に引きこもらず、体を動かすこと、皆と一緒に活動することです。これは、行政がこれまで取り組んだことのない分野です。中央省庁には「人とのつながり支援・生きがい作り担当省」はありません。
復興庁では、「インフラ復旧と住宅再建」「産業となりわいの復興」「被災者の健康とコミュニティ再建」の3つを、復興の柱にしています。この3つは、モノの復旧、機能の復旧、つながりの復旧と、言い換えてもよいでしょう。しかし、インフラ整備、産業振興、医療福祉などの担当省はあるのですが、人とのつながり支援やコミュニティ再建を担当する部局はありません。また、住宅建設や産業振興、医療提供は、資金を出せば「整備や提供」を担ってくれる企業・団体・専門家があります。しかし、人とのつながりやコミュニティ再建は、それを提供する企業などはないのです。というより、お金で提供できることではありません。モノと機能の復旧に対し、つながりの復旧は、行政にとって難しいのです。行政・政府が試みる新しい挑戦です。
このページで何度か繰り返していますが、私は、これを「サービス提供国家から安心保障国家への転換」と位置づけています。参照「被災地から見える「町とは何か」 ~NPOなどと連携した地域経営へ」
新しい東北・フェイスブック開設
復興庁では、「新しい東北」官民連携推進協議会のフェイスブック・ページを開設しました。職員から「次官のホームページで紹介してください」と、指示がありました。私は忙しいので、彼が書いてくれた紹介文を転載します(一部、私が加筆してあります)。
「新しい東北」官民連携推進協議会は、復興に取組んでいる団体や取組を支援している団体、合計800団体に参加してもらっています。会員団体のプロジェクト、ヒト・モノ・カネの支援制度、シンポジウム・勉強会等のイベントなど、様々な情報をインターネットで共有しています(この他、集まって顔を合わせて交流してもらうイベントも開催しています)。
被災地では、賑わいのあるまちづくりに向けた取組が進んでいます。コミュニティの形成や産業・生業の再生に向け、様々な主体(自治体、民間企業、NPO、大学など)が、それぞれのノウハウ・強みを活かしつつ、「新たな挑戦」を進めています。復興庁ができることは、様々な団体の間で、お互いの強みを活かし合った連携がより生まれやすくなるよう、情報を共有できる場所を提供することです。これまではホームページを作って運営してきたのですが、フェイスブックを使っている人も非常に多いため、これも始めることにしました。ぜひ、「いいね!」を押してフォローしてください。フォローしていただくことで、最新の情報を常に得られるようになります。
これでよいかな、小川補佐。
福島特措法改正案成立
「福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案」が、4月24日、参議院本会議で可決され、成立しました。今回の改正は、福島県の要請を受けて、避難元町村内で復興拠点を作る制度を創設するものです。大熊町では大河原地区を予定しています。法律ができ、また予算も通ったので、計画と建設を急ぎます。
新しい町をつくる陸前高田市
今日4月20日の朝日新聞に、陸前高田市の復興が特集されていました「陸前高田、復活への1200億円」。
陸前高田市は、町の中心がすべて津波で流された、最も大きな市です。2,500棟が並んでいた市街地が、すべて流されました。私は、発災直後4月2日に、当時の菅総理のお供をして、ヘリコプターで視察しました。そのときの衝撃的な風景は、今も目に焼き付いています。とにかく、空が広いのです。なぜだろうと考えました。建物がないだけでなく、電線と電柱がないので、空が広いと感じたのです。あれから4年が経ちました。先日視察したことを書きましたが、計画ができて、事業が急ピッチで進んでいます。
さて、記事を読んでいただくとして。かさ上げの面積は127ヘクタール、東京ディズニーランド2.5個分です。盛り土は1,242万立方メートル、東京ドーム9杯分です。総事業費1,200億円。新しい町には、6千人が暮らす予定です。一人当たりに換算してみてください。記事には、人口減少と高齢化が予想される町に、巨額の予算をつぎ込むことについての議論が載っています。
陸前高田市以上に、より僻地の集落について、「高台移転や土地のかさ上げなどの復興をするより、各世帯にお金を渡して都会に出てきてもらった方が、効果的ではないか」という意見もあります。これは、経済合理性と、ふるさとへの思いとの比較です。しかしこれは、同じ物差しに乗っていないので、比較にならないのです。
そして、裏の畑を耕し、ご近所の婆ちゃんとお茶を飲み、世間話をして暮らしている高齢者にとって、都会のアパートに出てくることは、生きがいとつながりを失うことになります。することがなく、知った人もいない場所での生活が、高齢者にとってどのような意味をもつか。人は、環境と他人とのつながりの中で生きています。そして、自らの生きがいと一緒に生きています。移植可能な植物ではありません。極端な言い方ですが、これまでの暮らしから「引き抜かれる」と、私ならボケが始まるでしょう。私の両親を奈良から東京に呼び寄せても、同じことが起こります。「お金を渡して出てきてもらったらどうか」と聞かれる度に、私はこのように答えていました。あなたは、どう考えますか。
もちろん、1,200億円もの巨額の予算をつぎ込むことができるのは、国民の負担で支援できているからです。陸前高田市の発災以前の財政規模は100億円、市税収入は10億円程度でした。市だけの負担では、とてもこれだけの事業はできません。