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慶應義塾大学、地方自治論第4回目

2017年4月28日   岡本全勝

今日は、慶応大学で地方自治論の講義。早いもので、もう4回目です。前回の出席カードに、たくさんの質問を書いてもらったので、それへの回答から始めました。
・ドイツの自治制度が、第2次大戦後の占領国の違いによって、4種類の型になったことについて。
より詳しく知りたい人や、外国の自治制度に関心ある学生がいたので、自治体国際化協会の資料(抜粋)を配りました。日本の制度が唯一のものではないこと、また、首長の直接公選制を導入したことの長所と短所を勉強してもらうのに、ちょうど良い資料でした。
・「自治体が定めた条例を、誰が執行するのか。裁判所が自治体にないので、それは誰がするのか」。これは、国と自治体との役割分担について、きわめて良い質問です。
国が定めた法律に基づく事務でも、通常の執行は国だけでなく自治体も行います。例えば、義務教育は自治体が行います。他方で条例で定めた事務はその自治体が行い、国が行うことはないようです。
法令違反があった場合はどうするか。多くの取り締まりは、自治体の警察が行います。麻薬取り締まりのような、国が行う場合もあります。そして、刑事訴追は、国の機関である検察が行い、裁判も国の裁判所が独占しています。自治体には検察はなく、裁判所もありません。
そこで、条例で罰則を定める場合は、自治体は検察に協議することになっています。
・「国政においても、三権分立ではないのですね」。
そうです。分かれてはいますが、独立しているのではなく、相互に「牽制」する仕組みが組み込まれています。さらに、国会を国権の最高機関と定めているので、三権が平等でもありません。「三権分立」と聞くと、それぞれが独立して、同等かと思ってしまいますが、そうではありません。

授業の本論は、「統治としての地方自治」を終えて、「自治の仕組み」に入りました。まず、自治関連法令にどのようなものがあるかを解説しました。あわせて、「自治六法」の実物を見てもらい、法律とはどんなものかを実感してもらいました。
自治体と関連法人にはどのようなものがあるか、その種類。そして、地方自治体とか市町村と言っても、大きなものから小さなものまで、かなり多様だということを見てもらいました。たとえて言うと、一つ一つの花びらが不揃いな「あじさいの花」です。

仮設住宅解消への努力

2017年4月27日   岡本全勝

大震災被災地では、住まいの復興が進むにつれて、仮設住宅が終了しつつあります。仙台市などは、去年の春に終了しました。次の住まいに移ることに悩んでおられる方もおられるので、自治体では各戸に相談に行って、公営住宅の紹介や、社会福祉でのお世話をしています。そのような自治体職員の働きがあって、仮設住宅を終わらせることができています。
福島県でも、その対応を進めています。4月1日の朝日新聞、長谷文記者が書いた、福島県庁職員の家庭訪問の実態「復興へ、はじめの一歩」を、このホームページでも紹介しました(4月1日の記事)。
4月24日では、現時点で対象となる1万2千世帯のうち、未確定は119世帯です。約1%まで減っています。元の住所に戻らず、避難先で定住を決めた方も大勢おられます。子育てや働く場所、病院などの事情で、そのような選択をされる方も多いのです。
その事情について、4月25日の朝日新聞は「原発事故で自主避難、正しかったか葛藤」という記事を載せていました。

「約1割」と書きましたが、「約1%」の間違いでした。訂正します。4月28日追記。

慶應大学、公共政策論第3回目

2017年4月26日   岡本全勝

今日は、慶応大学で公共政策論の第3回目の授業でした。
日経新聞からいただいた「就活ブック」、朝日新聞からいただいた「新聞社と記者の紹介」パンフレットを配りました。それぞれ良くできたパンフレットです。学生諸君は見たことがないでしょうから、役に立つと思います。
地方自治論履修者と合わせて140部。重くて、宅急便で送ってもらいました。教員控室から教室まで運ぶには、学生さんに手伝ってもらいました。

今日は、先週に引き続いて、大震災からの復興過程を、写真を見ながら解説しました。国の役割、市町村役場の役割、住民の役割などを中心にお話ししました。
写真があると興味を持ってみてもらえるので、効果がありますね。パワーポイントの操作は、今日も院生のI君にお願いしました。ありがとう。

大型連休中に本を読んでもらうべく、小レポートを課しました。 現代日本社会の問題に関する書物を1冊読み、その概要をまとめることと、 それについて自分の意見を書くことです。
あわせて、本を要領よく読む方法を伝授しました。1ページ目から丁寧に読む方法もありますが、忙しいときに全部を読まずにポイントをつかむこつです。出席カードの感想には、何人かの学生が「勉強になりました」と書いてくれました。社会人になったとき、いえ学生時代でも、要領よく仕事を進めることは重要なことです。
もう一つ、生きていく際に重要なことは、友人を作ることです。授業を休んだ際に資料をもらってもらうことや、ノートを貸してもらうこと。勤め先で悩んだ際に、相談に乗ってもらうことです。一人で悩んではいけません。

事故を起こした責任と償い

2017年4月24日   岡本全勝

4月24日の日経新聞「発信・被災地から」は「住民を裏切った。東電幹部 復興支援に奔走福島に残り償いの日々」として、東京電力福島復興本社代表の石崎芳行さんを取り上げていました。
・・・東電の福島のトップとして現場を回り、仕事に没頭するのは、重い罪と責任を背負う苦悩を打ち消すためかもしれない。
仮設住宅での生活支援や帰還に向けた草刈り、イベントの手伝いなど、復興本社の業務は幅広い。思うように進まないこともある。特に避難者への賠償問題は互いの利害が絡み合う。「避難にはいろんなケースがあり、一律の基準では償いきれない部分があると東京(の親会社)に伝えることはあるが、賠償のルールを曲げるわけにはいかない」と組織人として複雑な思いをのぞかせる。
自分が直接関与していない事故で、頭を下げ続けることに抵抗を感じる社員も少数いる。東京の役員の発言に、事故の風化を感じることもあるが、「加害者であることは変わらない。それでも我々を復興の仲間にしてほしい」と訴える。少しずつ笑顔で接する住民が増えてきたことが救いだ。小さなことを積み重ね、まず個人として認められる。「その先にいつか会社が許される日がくるかもしれない」と願う・・・

会社としての責任、社員としての償い、難しいものがあります。本文をお読みください。記事にもまた写真にも出ているように、石崎さんは、つらい立場と仕事であるにもかかわらず、いつも穏やかな表情をしておられます。頭が下がります。

ところで、私は大震災の仕事に就いてから、組織としての事故を起こした責任とその償いを、考えてきました。
地震と津波は天災なので、神様を恨むしかありません。しかし、原発事故は、事故を起こした東電と、それを防ぐことのできなかった国(経産省、原子力安全・保安院)がいます。さらに事故が起きた後も、適切な事故収束作業がされたのか、適切な避難指示がなされたのかも問われています。
東京電力は法人として存続しているので、事故を起こした責任と償いを続けています。賠償を支払うだけでなく、石崎さんを先頭にして職員が現地で、被災者支援や復興のために汗をかいています(活動事例)。

他方で、原子力安全・保安院は廃止されました。原子力規制業務は、環境省に原子力規制委員会・原子力規制庁がつくられ、そこに移管されました(別途、内閣府に原子力防災担当(統括官)が平成26年につくられています)。
国においては、原子力保安院が廃止されたことで、事故を起こした責任と償いの「主体」が不明確になったのではないでしょうか。原子力規制庁は、今後起こる事故を防ぐための組織であり、福島原発事故の後始末は所管ではないようです。もし、原子力保安院が存続していたら、被災地での避難者支援や復興には、何らかの形で「責任」をとり続けたと思います。
原子力災害対策本部現地本部の、後藤収・副本部長をはじめとする経産省の職員は、被災地で復興のために汗を流しています(原子力災害対策本部事務局はホームページがないようなので、リンクを張って紹介することができません)。私がここで指摘しているのは、責任ある組織の存続と償いです。

私はこれを、「お取りつぶしのパラドックス」と呼んでいます。比較するのは適当ではないでしょうが、日本陸軍と海軍も廃止されたことで、組織として「責任を取る」「償いをする」ことがなくなりました。国家としては、ポツダム宣言の受諾と占領による政治改革、東京裁判とその刑の執行、関係国への賠償などはあります。
個別の組織が存続していたら、戦争を遂行した組織としての「残されたものとしての責任」を果たすことがあったと思います。それは、記録を残すこと、原因の究明、再発防止策、そして「償い」です。陸海軍は廃止されることで、これらが途絶えてしまったのではないでしょうか。

組織としての「強さ」は、事故を起こさないこと(どんなに使命を果たすか)とともに、事故を起こした後の振る舞いによって示されると思うのです。それは、人も同じです。

慶應義塾大学、地方自治論第3回目

2017年4月21日   岡本全勝

今日は、大学で地方自治論第3回目の講義。
前回の授業で、日本国憲法は、国にあっては議院内閣制をとり、地方公共団体にあっては大統領制をとっている。諸外国の例も引きながら、地方公共団体でも、議院内閣制をとることができるように憲法を改正するべきだと、私の主張を述べました。
昨日の衆議院憲法審査会で、斎藤誠・東大教授が同じ意見を述べておられます。今日はその新聞記事を元に、おさらいをしました。国会で議論されている、新聞記事を元に解説をする。学生には、興味を持ってもらえたと思います。

今日の授業は、統治の分割についてです。学校では「三権分立」を習いますが、これは日本国憲法が定めている一部です。
日本国憲法は、まず国と地方公共団体に、権力を「垂直的」に分権しています。そして、国にあっては立法・司法・行政に「水平的」に分権し、地方公共団体にあっては立法と・行政に「水平的」に分権しています。

小レポートを課しました。大型連休中に勉強してもらうためです。提出は連休明けにしてあります。
課題は、ゆかりの自治体の首長の施政方針演説などの中から、政策を一つ取り上げ、その概要とそれについて意見を述べることです。
インターネットで、自治体首長の主張を、簡単に見ることができるようになりました。しかし、学生にとっては、それを調べるのは、初めてのことでしょう。そして、首長の施政方針を読むことも。「東京都知事の場合」。
あわせて、レポートでは、その政策について、自分の頭で考えてもらうことを求めています。

本の読み方指南で、「書評が役に立つ」とお話ししました。例えば『東大教授が新入生にすすめる本』(2016年、東京大学出版会)は、学生にはちょうど良い読書案内でしょう。
授業で紹介した出版社のPR誌は、東大出版会『UP』、岩波書店『図書』です。年間千円ですし、大きな本屋ではただでもらえます。

今日も85人が、出席しました。出席カードには、様々な反応が書かれています。学生の関心や理解度も分かりますし、適確な質問もあって、手応えを感じます。その反応を踏まえて、来週も突っ込んだお話をしましょう。