カテゴリー別アーカイブ: 歴史遺産

法律ができるまで

各省が法律案を作成して、国会に提出し、審議されて成立する過程の解説です。その例として、2004年度地方交付税法改正法案を、このページで解説します。内閣法制局のページに「法律ができるまで」が解説されています。また、国会というところ」をあわせて見てください。
地財対策決定(2003年12月18日)
2004年度地方財政対策決定。総務大臣と財務大臣の折衝で、地方交付税の総額の特例などが決まりました。交付税課で、地方交付税法の改正法案(原案)の作成を開始。内容は、総額の特例、算定方法の改正のほか、今年にあっては、特例交付金の改正(税源移譲予定交付金の創設)などがあります。改正の概要を検討するのと並行して、内閣法制局への説明を始めます。
年末
省内では、総務省から提出する法案の本数を整理。各局の案を、官房総務課が取りまとめ。例えば、「地方税法改正法案」が提出予定、合併特例法の改正などが検討されています。
国会開会(2004年1月19日)
第159回通常国会が始まりました。会期は、150日間です。官房長官が、「政府から提出予定の法律案は125件、提出予定条約は19件。このほか、提出につき検討中の法律案17件、条約10件」と発表されました。このうち、総務省は、提出予定法律案が14件、検討中が3件です。
(本数の確定)
ここに至るまで、今月の始めに、省としての提出案件をまとめ、内閣法制局や内閣官房(総務官室)と調整して、この本数を固めました。
その後、与党の議院運営委員会・国会対策委員会のメンバーに、提出全法案の本数とその概要を説明しました。これは、「総務省からこのような法案を考えています」という、全体像の説明です。これが、総務課長の仕事始めです。内閣(各省)は法案を提出することはできますが、審議をするのは国会です。野党の理解を得て政府案を「通す」のは、与党です。
法案を固める
(内容確定・法制局審査・各省協議)
法案は、省内での原案確定・内閣法制局の審査を経て、案が固まります。地方財政関係は、地方税法等の改正・所得譲与税法の新設・交付税法等の改正(地方特例交付金法の改正を含む)・新東京国際空港周辺整備財政特例法の延長の4件です。法制局の審査の過程で、「税源移譲予定交付金」は名称が「税源移譲予定特例交付金」となりました。省としての案が固まると、各省協議をします。各省協議とは、法案に関係ある他の省に異議がないか確認するためのものです。
(決裁)
できあがった法案は、省内では大臣まで決裁を得ます。交付税法の場合は、地方財政審議会の同意も必要です。他省と「共管」の法律は、その省での決裁ももらいます。交付税特別会計法は、財務省と共管です。内閣法制局の正式な決裁も、もらいます。こうして、政府原案が固まります。
法案は、「改正文」本体(「××」を「△△」に改め・・という文章です)ですが、説明先によっては、あわせて「要綱」「新旧対照表」、さらに「提案理由」「参照条文」をつけます。これを「3点セット」とか「4点セット」と俗称します。閣議に提出する「正本」は、和紙にタイプで打ち、こよりで綴じます。
これらの作業は、交付税課では、課長補佐が責任者になり、「見習いさん」と呼ばれる入省3~5年目の職員が担当します。期間が短く・量が膨大で・一言一句の間違いも許されない(法制局審査は厳しいことで有名です)・大変な作業です。何回かの徹夜を伴います。
与党法案等審査手続(2月3日)
次に、与党の了解を得る手続があります。法案4本と地方財政計画の合計5つについて、2月3日に、自民党にあっては、政務調査会の総務部会・政調審議会(政審)・総務会の了承を得ました。また同日、公明党にあっては、政務調査会の総務部会・政調全体会議の了承も得ました。
部会には、副大臣・政務官らが出席し、担当局長が説明します。関係課長も出席します。(自)政審・総務会、(公)政調全体会議では、各々部会長・専任部会長が説明します。もっとも、これらの関係者には、関係局が事前に概要を説明しておくことが多いようです。
与党の了承を得たものが、閣議に提出されることになっている、とのことです。
閣議決定・国会提出(2004年2月6日)
地方交付税法案など4本と地方財政計画が閣議決定され、国会に提出されました。国会に提出といっても、国会が一つではないので、内閣から衆議院と参議院にそれぞれ提出されます。
閣議案件は、通常前日に事務次官等会議にかけられます。これは、各省が異論ないことの確認行為の意味を持っています。逆に言うと、異論のある省はこの場で発言するのです。もっとも、「次官会議で反対するぞ」ということが「抑止力」になっているので、そうならないように事前に調整されているようです。急を要する案件などは、閣議の後にかけられるようです。
閣議は、通常、毎週火曜と金曜日です。急を要する場合は、この日以外にも開かれますし、「持ち回り閣議」といって、各大臣の署名(花押)をもらいに回る場合もあります。次官会議は、月曜と木曜日です。

授業風景

2004年1月22日の最終授業です。学生・院生の発表風景です。
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記念撮影。将来の東大教授・××大教授と幹部公務員・外交官などに囲まれて。でも、授業を大幅に延長してから撮ったので、写っていない人が数人います。ごめん。
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最終講義

今日、東大で最後の授業をしました。国会議員への法案説明がちょうど谷間になったので、行くことができました。講義が終わったら、学生たちから花束をもらいました。うれしいですねえ。写真は、授業風景のページをご覧ください。今学期(3月末)で、東大の客員教授は終了です。まだ、成績付けが残っていますが。新しい職場では、毎週平日に出講することは不可能です。
大変でもあり、また楽しい2年間でした。学生たちには、私の思いが伝わったでしょうか。時に職場を離れ研究者に囲まれて、自分の仕事を振り返るということは、勉強になります。本が書けたのも、教授をさせていただいたからです。霞ヶ関に座っているだけでは、「世の中」が見えません。また、機会をいただければ、務めたいと思います。

地方財政の仕組み・マクロ

1 地方財政対策
(1)地方財政対策の流れ
平成15年12月18日に、16年度の地方財政対策が決まりました。これは、地方財政全体の歳入歳出の概要を決め、財源不足がある場合には、その対策を決めることです。例年、国の予算の財務省原案が決まる2日前くらいに決まります。今年もそうでした。

例年と違うのは、今年は
①総理指示による、国庫補助負担金1兆円削減を決める必要があったこと
②それによる税源移譲を決める必要があったこと
です。①が12日に政府与党で決定され、②も17日に党税調で決まりました。

その他の国庫補助金額が財務省の査定で決まり、経済成長率と税制改正が決まると税収見積もりができます。そして、地方公務員数の見込み(来年度は1万人減)と国の補助金をもらわずに地方団体が行う事業(単独公共事業は9.5%減、事務費・施策経費も削減)を総務大臣が決めると、地方財政の歳入歳出の大枠がわかります。

16年度は、歳出規模は84.7兆円(1.5兆円減)で、それに対し収入が14兆円不足すると見込まれました。これを、国からの交付税財源の加算と地方債の増発で埋めることとしました。埋める方法は去年と同じです。この結果、地方交付税の総額は16.9兆円、1.2兆円の減となりました。

(2)地財対策の方法
工事中

2 地方財政計画
(1)地財計画(未定稿)
この後、国の予算の詳細が決まると、地方財政の見込みも数字を精査し、「地方財政計画」として、内閣から国会に提出します。これにあわせ、地方交付税の総額特例や単位費用の改定を決め、地方交付税法の改正法案として2月に国会に提出します。

(2)国の予算と地財計画
ほとんどの行政サービスは、地方自治体が行っています。国の予算の多くは一般会計で実施されるのではなく、地方財政計画を通して実施されます。また、国の予算をもらわずに地方自治体が実施するサービスもたくさんあります。国民には、国の一般会計より地方財政計画の方が、そして各市町村の予算の方が影響が大きいのです(拙著第4章)。
具体的には各市町村が、この数字を基礎に予算を作るのです。国の一般会計予算は「国の都合」であって、それがそのまま地方自治体や国民生活に影響するわけではありません。交付税の金額も国の一般会計の数字ではなく、実際に配られる金額(地財計画計上額)が意味があります。

3 自治財政局の仕事と地方財政の1年
各省と交渉して補助金の一般財源化を決めるのは、総務省自治財政局調整課の仕事です。地財対策を決め地財計画を作るのは財政課の仕事、そしてそれを交付税法に仕上げ、算定するのが交付税課の仕事です。

各地方自治体は、予算をつくり、3月議会に提案します。そして4月から、新年度が始まります。17年3月に、16年度予算が終わります。
出納整理期間が5月に終わり、地方団体が決算を作ります。それを議会に提出するとともに、総務省に報告します。全地方団体の決算を集計し分析して、「地方財政白書」をつくり、18年3月には国会に報告します。この作業は、自治財政局財務調査課の仕事です。
こうして、15年秋から始まった「16年度予算」の作業は、18年3月に終わります。

地方財政の仕組みと現状

1 地方財政の仕組みと現状
日本の地方財政は難しいといわれます。地方財政には、2つのものがあるからです。

1つは、各市町村の財政です。これは約3,300あります。それぞれが、大きさも内容も違います。だから、簡単には言えないのです。
これらが集まって、もう1つの地方財政=日本全体の地方財政を作っています。そして、単に3,300の各団体の財政が集合しているだけでなく、国家財政との間で「調整」をしています。

この地方交付税の仕組みが、わかりにくいとおっしゃる方が多いです。一度、拙著「地方交付税-仕組みと機能」をご覧下さい。
3,300の自治体がどのような仕事をしているか、日本全国、税収の多いところから少ないところまで、同じように教育・消防・救急・清掃・福祉などを実施できる仕組みを解説しています。

このHPでの解説は、次のように執筆中です。
1 地方財政の仕組み・マクロ
2 地方財政の仕組み・ミクロ
次のリンク先(自治財政局のページ)をご覧下さい。
1 地方財政の仕組み(自治財政局のページ)
2 地方財政の状況(自治財政局のページ)
3 地方交付税の仕組み(自治財政局のページ)
4 15年度地方交付税制度の改正
2 関係機関等
次をご覧下さい
1 地方行財政刊行物案内
2 地方行政研究機関など
3 日本地方財政学会
私が所属している地方財政学会です。
平成15年度の総会では、基調講演をしました。