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三位一体改革6

今年度の三位一体改革に関する国会での議論
その主な質問と答を、紹介します。もっとも、答には私の解説と主張も含まれていますので、公式見解ではありません。
1 三位一体改革といいながら、地方財源が大きく減っているではないか。
(答)
三位一体改革には、2つのものが含まれています。
①その1は、国庫補助金廃止とその一般財源化です。
②その2は、交付税の縮小です。
このうち、①では地方収入は減りませんが、②で地方収入が減っているのです。
「三位一体」改革と呼ばれていますが、私は「2+1」と解説しています。「国庫補助金廃止」と「一般財源化」はセットです。これが私の言う「2」の部分で、狭義の三位一体改革、①です。これは質的改革です。補助金廃止のうち地方が引き続き行うものは、税源移譲をします。16年度は、過渡的方法として、所得譲与税と税源移譲予定特例交付金です。
交付税の縮小は、この①とは別物です。量的改革です。
①は地方の自由度を高めるためのものですが、②は財政健全化が主な目的です。拙著「地方財政改革論議」でも、地方財政には2つの課題があるとして、まず②を述べ、次に①を述べてあります。
①の部分は、それに見合う地方財源総額を確保してあります。また、個別団体についても、地方交付税によって財源保障と財源調整をしています。所得譲与税や特例交付金が必要額だけ来なくても、交付税で埋めます。だから、これによって財源が減ったということはありません。しかし、②が大きかったので、「三位一体改革で収入が減る」と誤解があったのです。
もし、「税源移譲で収入が純増する」と思っておられたら、誤解です。私は、「国にそれだけの力がない」と繰り返し言っています。「地方税財源の充実強化」も同じです。税源移譲で地方税が増え、地方財源の自由度は質的には高まります。しかし同額だけ国庫補助金が減り、合計では量的には増えません。それを増やそうとするなら、「増税」が必要です。(3月21日)
2 地方財源の削減が大きく、また突然だったので、地方団体は予算編成に苦慮している。
(答)
交付税総額は、平成15年度も7.5%減っています。16年度(6.5%減)の方が、減り方は少ないのです。それなのに悲鳴が上がるのは、臨時財政対策債の減が大きいからです。交付税総額は、この4年間減少しています。しかし、臨時財政対策債が減るのは今回が初めてで、「交付税総額と臨時財政対策債合計」が減るのは初めてなのです。
これまで地方財政計画総額が減り続けているのに、「交付税と臨財債の合計」が減らなかったのは、簡単には、「税収が減り続けたから」です。今年度は、歳出が減って、税収も減らず、財源不足額が縮小したのです。三位一体改革その参照
「交付税が減るのは予想していた。しかし、臨時財政対策債が減るとは思っていなかった」とおっしゃる首長さんが多いです。総務省も、昨年の6月の「骨太の方針」や11月の「麻生プラン」で、「交付税が減りますよ」とPRしていました。しかし、臨財債が減ることは、十分理解してもらえてなかったようです。
予算編成に苦慮しておられる地方団体のために、「地域再生事業債」を用意しました。この地方債を建設事業に充て(充当率を上げ)、一般財源を「追い出すこと」で、予算を組みやすくしようとするものです。
また、「説明不足」との批判に対しては、新年度早々、ブロック会議などに出向いて、総務省から説明をすることとしました。
3 税源移譲は、ほとんどないではないか。
(答)
今年度、国庫補助金見直しは1兆円を達成しましたが、その内訳は
①一般財源化(所得譲与税化):0.2兆円
②暫定的一般財源化(税源移譲予定交付金化):0.2兆円
③公共事業等の削減(事業量の減):0.5兆円、です。
一般財源化等は①+②で、0.4兆円です。
16年度の一般財源化等は0.6兆円ありますが、その内訳は
④所得譲与税化:0.4兆円(①と前年度交付金化したものの合計)
⑤税源移譲予定交付金化:0.2兆円、です。
この批判には、2つのものが含まれています。
その1は、「1兆円の補助金削減に対し一般財源化が0.4兆円しかない」ことです。これはそのとおりで、残りは補助金の廃止だからです。
批判の2は、「税源移譲がないではないか」です。今回の一般財源化④と⑤は一般財源ですが、確かに地方税になったものはありません。ただし、④所得譲与税は、国が徴収する地方税です。ゆえに、国の一般会計にも計上されません。地方の財源としての性格を持っています。
政府は、平成18年度までに、地方税に本格的に税源移譲することを決めています。後3年見ていてください。

大統領予備選 ~その1~

2004年はアメリカ大統領選挙の年。共和党の大統領候補者はブッシュ現大統領で決まりですが、民主党は1月から各州で自らの大統領候補者選びの作業(予備選)を進めています(7月末に開催される民主党の全国大会で正式な大統領候補が決定されます。)。
民主党の大統領候補者選びには、プライマリー(予備選挙)とコーカス(党員集会)という2つの方法があります。
まずプライマリーですが、これは政党登録者による「選挙」であり、通常朝から夕方まで各州の投票所で投票が行われます(第一の段階としては郡よりも小さな地区レベルで行われます。)。
他方、「コーカス」は政党登録者による「集会」です。同集会については、①集会参加者が自分の支持する候補者ごとのグループに分かれる、②分かれたグループの人数に基づき、さらに上位の予備選へ各グループが派遣できる代議員数を決定する(各地区の予備選の後、各郡における予備選が行われ、最後に州の予備選が行われます)といった形で進められるということ以上の情報を持ち合わせていないのですが。
寒い冬の平日夕方(6時半ごろから)に党員が集会場に集まり、わいわいがやがやいいながら自分の党の大統領候補を決めていくというのはなかなかおもしろい制度じゃないかと思ったりします。
ちなみに、今年のアイオワ州(地区レベル)のコーカスへの参加者数は約122,000人。1992年の予備選では約30,000人、2000年の予備選では61,000人だったといわれていることから、今年の大統領選への興味は高いといえるのではないでしょうか。
1月19日のアイオワ州での予備選(地区レベルのコーカス)により開始された民主党の大統領候補者選びは、10以上の州で一斉に予備選が開催された3月2日の「スーパーチューズデー」の結果、ケリー上院議員が民主党の大統領候補者として指名を受けることが確実になり、ほぼ終結しました。
昨年末の段階における各種世論調査では三番手以降と目されていたケリー上院議員ですが、最初の予備選の地オハイオ州でトップとなったことにより「モーメンタム」をつけ、その後の予備選でも勝ちつづけました。
インターネットを駆使した選挙戦術(資金集めを含む)、イラク戦争反対、ブッシュ減税撤廃の主張等により昨年末の世論調査ではトップを走っていたディーン前バーモント州知事、労働組合に強い支持基盤を持ちディーン氏の一番のライバルと目されていたゲッパード下院議員は、早々と有力候補のリストから消えていきました。
米国では世論調査機関等が発達しており、選挙の事前予想が積極的に行われておりますが、まあどこの地でも選挙の予想というものは当てにならないということなのでしょう。
ケリー上院議員が民主党の大統領候補者に事実上決まったことに伴い、今年秋の大統領本選に係る世論調査(ケリー対ブッシュ)が盛んに行われるようになってきました。
米紙USAトゥデー、ギャラップ社などが2月に行った世論調査結果によると、ブッシュ大統領とケリー上院議員の間で現在大統領選が行われた場合、ケリー氏に投票すると答えた人が55%でブッシュ大統領の43%を12ポイント上回っており、AP通信が4日発表した世論調査結果によると、米大統領選でケリー上院議員がブッシュ大統領と争った場合、大統領の支持率が46%、ケリー氏は45%となっています。

法律ができるまで2

審議の順番
この後、法案の審議を待ちます。また、法案が国会に提出されたことを受けて、野党議員にも法案の説明に回ります。民主党では、ネクストキャビネットの部門別会議(自民党での部会に当たるもの)に呼ばれ説明します。
国会は、2月9日に、まず15年度国の補正予算とイラク派遣承認が、参議院を通過しました。10日から衆議院予算委員会で、16年度予算案の審議が始まりました。最初(今年は3日間)は全大臣出席です。すなわち、この期間は本会議や他の委員会が開けないのです。16日から予算委員会は、一般質疑(要求された大臣のみ出席)となりました。
総務課長は、今、本会議や委員会が早く開けるよう、そして法案を早く審議していただくよう、与野党の関係の議員(国対・総務委員会)に、お願いして回っています。
本会議日程が決まる(2月17日)
2月17日の衆議院議院運営委員会で、地方交付税法改正案・地方税法改正案・所得譲与税法案が、19日の衆議院本会議にかかることが決まりました。17日には、国税関係の法案が衆議院本会議にかかりました。例年、その次に地方財政関係法案が、本会議にかかります。優先順位が高いのです。総務大臣が、3本一括で趣旨説明をし、質疑が行われます。地方財政計画とこの3本は、密接な関連があるので、一括して議論されることになりました。どの法案を一括して審議するかも、日程上は重要です。質疑者は野党(民主党)2人(各々15分)・与党(公明党)1人(5分)、ということも決まりました。
一方、衆議院総務委員会の理事会・委員会が開かれ、19日に委員会で総務大臣の所信表明が行われることも決まりました。
本会議での趣旨説明と質疑(2月19日)
2月19日の衆議院本会議で、総務大臣が地方財政計画・地方交付税法改正案・地方税法改正案・所得譲与税法案の趣旨説明をし、質疑が行われました。質問の中心は、三位一体改革の評価とこれからの進め方についてでした。新聞にも取り上げられていましたが、追って議事録も作成されます。議事録は、衆議院会議録「本会議2月19日」へ。本会議を開く間、衆議院予算委員会は休憩です。その後、これら4本は、総務委員会に付託されました。20日には、成田財特法も(これは本会議での質疑が無く)、衆議院総務委員会に付託されました。
また、本会議後、衆議院総務委員会(この日は木曜日で定例日)が開かれ、総務大臣の所信表明が行われました。この時間帯に、予算委員会で総務大臣への出席要求がなく、同時に委員会を開くことができたのです。国会での「日程」の重要さがわかると思います(国会というところその3国会というところ4参照)。
委員会質疑(2月24日・26日・3月2日)
まず24日、衆議院総務委員会で、大臣所信に対する質疑が行われました。朝9時から休憩を挟んで、5時間20分間。8人の委員の質問を、麻生大臣がほぼ一人で答弁されました。所信質疑終了後に、交付税法等の提案理由説明を大臣が読みました。議事録は、衆議院会議録「総務委員会2月24日」へ。
今日は、同時に予算委員会も開かれていて、総務大臣は、昼の休憩時間と夕方二度、予算委員会にも出席し答弁しました。委員会室を移動するため、国会の中を走るのです。昼には、アナン国連事務総長の国会演説に出席されたので、満足に昼ご飯を食べる時間もありません。朝は8時から国民保護法制本部、8時30分から閣議が開かれました。そこで、大臣の国会質問勉強会は、7時からでした。
このようなきつい審議状況を、地方団体の方も、案外ご存じありません。国の役人でも、関係者以外は知りません。大臣は大変です。5時間をずっと座り続け、交付税から郵政民営化まで、あらゆる質問に答えるのです。もちろんそれを支える総務課(特に国会担当者)も、法案提出課職員も大変です。各議員からの質問通告聴取、答弁資料作成担当課の振り分け、答弁資料の作成。夜に質問が判明し、それも100問にもなると・・。
これを受けて、26日は、衆議院総務委員会で、交付税法等の審議(その1)が行われました。朝9時から6時間です。
3月1日と2日午前は、衆議院予算委員会の分科会(各省ごとの審査)が行われました。そして午後は、衆議院総務委員会で、交付税法等の審議(その2)が4時間行われました。これで、委員会での審議は終わり、予算が予算委員会で採決されるのを待ちます。
27日、義務教育費国庫負担法改正が、衆議院本会議にかかりました。三位一体改革関連ですから、文部科学大臣だけでなく、総務大臣の答弁もありました。
採決(2004年3月5日)
今日は、予算が予算委員会で採決され、交付税法等も総務委員会で採決されました。
委員会では、各会派が法案に対する討論(賛成か反対か)を行い、各法案ごとに採決(起立採決)が行われました。交付税法等は「国の予算案と一体」という理由で野党は反対でした。与党の賛成多数で可決されました。
地方税法には「付帯決議」が、地方税財政に関しては「決議」がつきました。これは、委員会(立法府)から政府への「注文」の意味を持ってます。例えば、「税源移譲をさらに進めよ」とかです。両決議は委員3人から提案され、共産党を除く会派が賛成でした。委員会議事録は、衆議院会議録「総務委員会3月5日」へ。決議も載っています。
その後、衆議院本会議で、予算案・交付税法等は可決されました。本会議では、委員長の報告があり、討論、採決がされました。予算案は、記名投票でした。本会議の議事録は、衆議院会議録「本会議3月5日」へ。
予算可決後、総理は院内の各会派の部屋に、「お礼の挨拶回り」をされます。総務大臣も同様に、法案可決の「お礼の挨拶回り」をします。

三位一体改革その5

将来予測
2004年度の地方財政計画・地方交付税は抑制型でした。しかし、まだまだ日本の国家財政と地方財政は、大幅な赤字です。増税をしない限り、歳出削減は続きます。
関係者の心配は、「今年は、基金を取り崩したりして予算が組めたが、これから先どうなるのだろう」「三位一体はまだ2年間続くが、来年・再来年はどうなるのか」ということだろうと思います。
量的削減
「交付税は、この先いくら減るか?」という質問をよく受けます。それを決めるのは、内閣であり国会です。しかし、借金をしないようにするならば、交付税と臨財債は半分にまで減らす必要があります。
16年度は、交付税の実力(法定5税分)は11兆円です。一方、交付税総額は17兆円、これに地方特例交付金1兆円、臨時財政対策債4兆円を足すと、22兆円を配っています。差額は、国と地方の借金です。借金をしないとするなら、交付税などの配分額を半分にするか、増税するかしかないのです。
この点については、拙著「新地方自治入門」第5章をご覧ください。
質的削減
では、何でもかんでも削減するか、というと、そうではないでしょう。私は、次のように考えます。
①国家が守るもの
赤字国債を出してでも、国家が地方交付税や国庫負担金で財源保障するもの、しなければならないものがあります。それは、基礎的教育・保育・生活保護・介護・医療などの福祉・衛生・消防・警察です。
これらの「基本的部分」は、最後まで国家が責任を持つでしょう。もっとも、自治体が自らの負担でサービスの上乗せをすることは自由です。
②地方団体が「自由に」
逆に、国家が責任を持たない可能性のあるものは、次のようなものでしょう。公共事業・地域振興・産業振興・総務管理費・議会費などです。これらは、一定部分は国が財源保障をするとしても、多くは「各自治体が自らの財源でやって下さい」ということになるでしょう。
負担と選択
地方自治・分権とは、地域が自らの負担で自らのサービスを考えることです。「お金が足らないのは国のせいだ」と言っている限りは、自治とは言わないのでしょう。
私の説について、「冷たい」という意見が寄せられています。そうでしょうか?これまで通りに交付税を配分しようとするなら、増税か借金しかありません。「歳出カットはいや」、「交付税を減らすな」「臨財債をこれまで通りに」とおっしゃるなら、あわせて、
①増税しよう、か
②子や孫に大きな借金を残そう
のいずれかも合わせて主張して下さい。
景気回復では、この収支不足を埋められないことは、拙著に書いてあります。(2月12日)

三位一体改革その4

【16年度地方団体の予算編成】
「交付税が大幅に減って予算が組めない」という悲鳴が、各地で上がっています。事情は次のようだと思います。(2004年2月8日)
1 地方財政計画
(1)交付税の減
16年度の地方財政計画では、
地方交付税総額:6.5%、1.2兆円減
臨時財政対策債:29%、1.7兆円減
臨時財政対策債は交付税の振替なので(交付税が足らないので発行を許可する、自由に使える赤字地方債。後年度各団体には、その償還額を交付税配分額に上乗せ)、この合計で12%、2.9兆円の減です。
これらが、国から配分される「一般財源」(地方団体が自由に使える金)です。この他に、地方譲与税・地方特例交付金も、同様に国から配分される一般財源です。
(2)一般財源
地方団体が自由に使える財源の第一は、もちろん地方税です。しかし、多くの団体では税収だけでは足らないので、これら地方交付税などを足して予算を組みます。(東京都や豊田市などは交付税の配分を受けていませんから、交付税が減っても予算編成に影響はありません。)
当然この他に、国庫補助金や使用料など「特定財源」(使い道が決められている財源)もありますが、財政課が予算を組む際の一番の要素は、一般財源総額です。
地方財政計画では、一般財源総額は3.7%減です。これで見ると、そんなに極端な減少ではありません。
ただし、今回は補助金の一般財源化が行われ、従来なら国庫補助金(特定財源)で配分されていた金が、譲与税などに振り替えられました。その分を考慮しなければなりません。その分だけ、一般財源が増えないと困るのです。
(3)歳出
地方財政計画では、歳出総額は1.8%減です。これもそんなに大きな減少ではありません。
2 現場と地方財計画との差
では、地方財政計画ではそんなに無理な数字ではないのに、各団体は、なぜ悲鳴を上げるのでしょうか。
(1)これまでとこれから
(臨財債の減少)
交付税総額は、平成15年度も7.5%減っています。16年度(6.5%減)の方が、減り方は少ないのです。それなのに悲鳴が上がるのは、臨時財政対策債の減が大きいからです。交付税総額は、この4年間減少しています。しかし、臨時財政対策債が減るのは今回が初めてで、「交付税総額と臨時財政対策債合計」が減るのは初めてなのです。
「交付税が減るのは予想していた。しかし、臨時財政対策債が減るとは思っていなかった」とおっしゃる首長さんが多いです。総務省も、昨年の6月の「骨太の方針」や11月の「麻生プラン」で、「交付税が減りますよ」とPRしていました。しかし、臨財債が減ることは、十分理解してもらえてなかったようです
(減ることは良いこと)
現在の仕組みでは、交付税総額と臨財債総額はリンクしています。そして、地方財政全体の収入不足額に連動して増減します。地方財政計画の収支不足額が減れば、交付税も臨財債も減るのです。去年まではこの仕組みへの過渡的手段をとっていたので、交付税が減っても臨財債が増えたのです。また、15年度までは、地方税総額も減ったので、財源不足額が増えたのです。
臨財債が減ったことは、それだけ歳出が減って、(16年度は税収も減らず)、財源不足額が縮小したのです。これは喜ぶべきことです。
(これまで通りには行かない)
しかし、いくつかの団体では、「これまでも臨財債は増えたから・・」という思いこみがあったのかもしれません。また、これまでも行政改革・歳出削減を続けてきていて、「かなり雑巾は絞った、これ以上絞るのは難しい」という思いもあるようです。
将来予測は、三位一体改革その5
(2)全体と個別
地方財政計画全体では、交付税の減は6.5%減、一般財源総額では3.7%減です。びっくりするような数字ではありません。しかし、この数字は、地方団体全体の数字であって、この中には3200もの団体が含まれています。
団体によっては、収入のうち税収は1割・交付税が4割という団体もあります。そのような団体では、交付税の減が大きく影響します。
全体と個別では、事情が異なるのです。
(3)計画と実際
地方財政計画は、あくまで計画です。実際の現場=各地方団体の予算とは違います。国の予算は、決められたとおり、その範囲内で執行されます。でも、地方財政計画は、国が期待する「地方団体の財政の合計」です。はじめから、実際とは違います。近年では、総額は実際の方が1割以上大きいです。各団体が自前で財源を見出して、仕事をしているということです。
また、投資的経費の、計画と実際との乖離も指摘されています。計画では、投資的事業を期待しているのですが、実際には(いくつかの団体では)、その金額は他の経費(たぶん、独自の福祉経費など)に使われています。地財計画では投資的経費を大幅に削減したのですが、現場では他の経費に使われていて、削減は難しい。こういう事情があるようです。
3 「赤字予算」
「収入額が不足する予算案を組む団体がある」との報道がありました。真偽のほどは不明ですが。
①法律違反
まず地方自治法は、第208条第2項で「各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもって、これに充てなければならない」と定めています。
②政治的責任
それ以前に(法律で縛る以前に)、歳入が不足して執行できない予算案を市民や議会に提出することは、無責任ですよね。まずは、やめることができる事業をすべてやめて、自分たちの給料を無給にして、と努力をすべきでしょう。それでもだめなら、その時はそのような制度にしている国の責任もでてくるでしょう。
③国との比較
ここで、地方団体の財政制度と国との違いが、見えてきます。
地方団体の予算の「赤字」には、次のような場合が考えられます。一つは、通常の歳入では不足し、「赤字地方債」を発行する場合です。現在、地方財政は全体で収入が不足し、「臨時財政対策債」を発行しています。これは、国が発行を認めた「赤字地方債」です。でもこの場合は、「赤字予算」とはいいません。
もう一つは、各団体で(臨時財政対策債を発行しても)収支が不足する場合です(このほか、予算は赤字でなくても、決算が赤字の場合があります)。
ひるがえって、国の場合は、毎年大幅な財源不足が発生しています。それを埋めるため、大量の赤字国債を発行しています。16年度も、30兆円(82兆円のうち37%)にのぼっています。
国の場合は、自ら法律を制定して赤字債を発行しています。地方団体の場合は、法律に基づき、国の許可がないと、赤字債は(地方債そのものが)発行できないのです。地方団体に比べ、国はより甚だしい状況になっています。